【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(49)】入社式の祝辞で糸井嘉男さんが登壇する会社ってすごくないですか? これは僕が監督を務めさせてもらっている社会人軟式野球チーム「Baseball Team NINE」を運営する会社でのことなんですが、考えてみるととんでもないなと思ってしまいます。
普通の会社なら入社してくるスタッフたちが全員、野球に興味があるとは限りません。ただ、我々のチームを運営する母体の3社すべての社長が野球を大好きであり、スタッフたちは野球部に入ってくるという前提があるからこそ意味が深まります。
僕にとって糸井さんは野球界の先輩でありチームメートです。お仕事としてトークショーで共演させていただく機会もあり、入社式の件ではこちらから声をかけさせていただきました。僕もNPBで実際にプレーしていた立場として、若い選手たちにこういう機会をつくることができてうれしいですし、チームを運営する各社長にも僕の提案を受け入れていただいて感謝です。
糸井さんはテレビでのトークやネット上のウワサで「宇宙人キャラ」が定着していますよね。でも、入社式という晴れ舞台でフザける人なんてまずいません。糸井さんも例外なく至って真面目に役目を果たされました。
ボケもなく、ちゃんと締まった話をしてくれました。糸井さんの営業妨害をしてはいけないですけど、あの人は実は演じてますよね。本当はちゃんとしてますから。入社式でもスピーチしただけでなく、その後も我々のチームに関心を持ってくれて、障がい者の方々との交流も積極的に取り組んでいただいています。
僕の亜細亜大学時代の先輩でソフトバンク、巨人で活躍した松田宣浩さんがいますが、糸井さんとは少し違うんですよね。松田さんは「熱男~!」と絶叫するキャラで鷹ファンを盛り上げていました。でも、本当は寡黙でシャイなタイプ。チーム内の立場を鑑みて元気印を演じていた延長線上に、あのキャラがあると思うんです。
しかし、糸井さんは違う。トークショーでも感じますけど、本当にボキャブラリーも豊富ですし、聴衆を楽しませようという意図が随所に見えるんです。ここでこのフレーズを挟むとお客さんが喜んでくれるかな、という空気を完全に読み切っていますもんね。
野球に関しては事実、キャラとは正反対でめちゃくちゃ綿密だと思いますよ。口では「データとか見てへんで」なんて言ってますけど、めちゃくちゃちゃんと見てますもんね。
阪神で代打の切り札として活躍されていた川藤幸三さんが「ワシはなーんも考えとらん。来た球を打っとるだけじゃ」と豪快に言い放っていたそうですが、本当は研究熱心だったとも聞いたことがあります。そりゃそうですよ。NPBはそんな甘い世界じゃないですから。
糸井さんは大学時代は投手でしたが、打者に転向されています。日本ハム関係者で当時を知る人は、二軍施設があった鎌ヶ谷で死ぬほどバットを振っていたと証言しています。人が見ていないところ、人がいないところでめっちゃくちゃ努力してるんですよ。ご本人のキャラを崩してはいけないのでこれくらいにしておきますが、糸井さんは演じてると僕は思っています。