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食卓にサメ肉襲来? すしにもなったピーチシャーク普及に向け渡辺広明氏が〝JAWSな戦略〟を提案

東スポWEB 2025年1月23日 17時2分

食卓にサメ肉襲来なるか!? ちまたではあまりおいしくないとされているサメ肉の価値向上に挑んでいる企業がある。漁獲から6日以内のサメにこだわり、サメ肉専用工場を設立。取材した流通ウォッチャーの渡辺広明氏は特殊な背景に驚きつつもサメ肉普及へ独自の提言を行った。

フカヒレの生産と販売で日本一を誇る株式会社中華・高橋(東京都江東区)は1953(昭和28)年に創業。主に中国料理食材の卸として成長し、97年に宮城県気仙沼にフカヒレ専門工場を設立し、高級食材として知られるフカヒレを全国の中華料理店に届けてきた。

「日本は世界有数のフカヒレ生産国で加工技術にも歴史があります。江戸時代にはフカヒレ、干しアワビ、煎りナマコが俵物三品として長崎から中国に向けて輸出されました。原料となるサメは主にヨシキリザメ、モウカザメで、8割程度が気仙沼で水揚げされます。これは強調しておきたいのですが、国際自然保護連合(IUCN)で準絶滅危惧種には指定されているものの、いずれも下位に分類されており、漁業の規制対象となっているサメではありません」(営業本部・鈴木智一本部長)

鈴木本部長が神経質になるのにはワケがある。一部の環境保護団体が、生きたサメからフカヒレの原料となるヒレだけを切り取り、残った体を捨てるフィニング(Shark finning)が残酷だとして、2000年代半ばから執拗にフカヒレ漁に反対、不買運動などをしているからだ。そもそもフィニングは北太平洋漁業資源保存条約で禁じられており、そうした漁が行われていないにもかかわらずだ。

「そもそも日本ではサメはほとんど捨てることなく使っています。サメ肉ははんぺんやかまぼこの原料として、サメ皮はわさびおろし器や皮革製品として、軟骨に含まれるコンドロイチンは目薬やサプリメントの原料に、中骨は犬のおやつにも使われます。ヒレ以外もきちんと活用していることをどうアピールしていくべきか。サメ肉のおいしさを前面に出していこうとして06年に生まれたのがシャークナゲットです」

気仙沼の小学校や陸上自衛隊仙台駐屯地で採用されたというが、残念ながら私たちの日常ではなかなか見ることがない。本当にサメ肉はおいしいのだろうか? 伝統的にサメを食してきたのが中国地方の山間部で、「ワニ」と呼ばれているけど「サメ」だったという意外性はマンガ「美味しんぼ」でも取り上げられている。

「海がない栃木県でもモウカザメが『モロ』という呼び名で食べられていますよ。サメは体の中に尿素を蓄えていて日がたつとアンモニアに変わります。ニオイも出ますが、その分日持ちするから内陸部ではたんぱく源として重宝されたようです」

シャークナゲットに続けとばかりに鮮度の良いヨシキリザメの肉を「ピーチシャーク」として商標登録した。鮮度が良ければニオイはまったくなく、回転ずしのネタとして採用されたこともあるという。

さらに高たんぱく、低脂質、低カロリーとダイエットやアスリートにもぴったりな食材なのだ。

エー・ピーカンパニーが展開する居酒屋「四十八漁場」では「ピーチシャークナゲット」という名でグランドメニューに採用されたという。

渡辺氏は一連の取り組みを「日本人が無駄なくサメを活用してきたことを正しくアピールするのは当然のこと」と評価し、サメ肉の認知を広めるには価格競争力をつけることが必要だと指摘する。

「チキンナゲットに比べてシャークナゲットは3割ほど高い。まさに僕がそうだけど、消費者は食べたことがないものに高いお金を払って味を見るというアクションは取らないわけです。まずはサメ肉のおいしさを知ってもらうために期間限定でもいいからシャークナゲットをコンビニやスーパーなど身近な店舗で取り扱ってもらうというのが“JAWSな戦略”なのでは?」(渡辺氏)

不意打ちのオヤジギャグに一瞬フリーズした鈴木本部長だったが、「面白いですね」とサメのように口を開けて大笑い。最後は「サメ肉を魚そのものとして販売しているのはまだ気仙沼で水揚げされる一部。今後は外食チェーンやスーパーの総菜、コンビニなどにも、気仙沼で取れた鮮度の良いサメ肉の導入をアプローチしていきたい」と意気込んだ。

☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。

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