冬は食べる機会も多く、寒さの影響で閉じこもりがち。その結果、摂取カロリーが消費カロリーを超え、脂肪を蓄えてしまうことに。なぜ人間は太るのか、そして遺伝的な要素はあるのか、糖尿病専門医・内分泌専門医の会田梓先生に教えてもらおう。
――なぜ脂肪はついてしまう?
会田医師(以下、会田)生物は飢餓状態に備えて、エネルギーをため込む性質がベースとしてあります。人は、常日頃、息をしたり、心臓を動かしたりと、生きているだけでエネルギーを使います。エネルギーが枯渇しないよう、摂取した栄養素は肝臓や筋肉などに保存され、必要なときにエネルギー源として使われる。しかし、カロリー過多になると、保存した量が消費量を上回ります。余ったエネルギーがため込まれ続けた結果が、脂肪というわけです。
――皮下脂肪と内臓脂肪の違いが知りたいです
会田 内臓脂肪は臓器の周りについている脂肪です。CTなどの撮影をすることで見え、体の外からは分かりにくい。心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気につながります。痩せているのに、内臓脂肪が多い人もいて、要注意です。皮下脂肪は皮膚の下につくような脂肪で、指でつまめる場所にある脂肪です。ヒザや腰といった部分に負荷がかかり、整形外科領域の疾患にもつながりやすい。内臓脂肪は男性に、皮下脂肪は女性につきやすいとされますね。
――男女差があるのですね! それはなぜですか
会田 大きく関係しているのがホルモンの影響です。内臓脂肪のつきやすさには男性ホルモンの代表といわれるテストステロンが関係しています。そして女性は閉経後にエストロゲンが減少することで、内臓脂肪がつきやすくなる。
――太りやすい、太りにくいは遺伝的な要因がありますか
会田 ありますが、遺伝的な要因より環境的な要因の方が大きいです。成長する過程での食生活や運動習慣といった環境因子の影響が強い。さらにいうと、年齢や身長、活動量により、代謝するカロリーの目安があります。それを超えて食べているのに痩せていく、痩せ形がキープされる人は背景に病気があるケースもあります。
――痩せている=健康だと思い込んではいけないのですね
会田 例えば、腸管になにかしらの異常があり栄養を吸収できていないや、甲状腺の機能障害、悪性腫瘍(がん)なども考えられます。確かに肥満はあらゆる病気に関連してきます。しかし、痩せている=健康だとも言い切れないわけです。
☆あいだ・あずさ 銀座内科院長。北里大学医学部医学科を卒業後、日本赤十字医療センター、東京大学医学部付属病院、聖路加国際病院、伊藤病院などを経て、現職。糖尿病専門医、内分泌代謝科専門医。生活習慣病や、メタボリックシンドローム・肥満症、甲状腺疾患・更年期障害などホルモン異常を専門とする。