米旅客機と陸軍ヘリコプターが首都ワシントン近郊の空港付近で衝突した事故を受け、フィギュアスケート女子の五輪メダリスト、ナンシー・ケリガン氏(55)が報道陣の前で涙ながらに悲痛な胸中を明かした。旅客機には多数のフィギュア関係者が搭乗していた。
事故では29日、着陸しようとしていたアメリカン航空5342便と陸軍ヘリのブラックホークが衝突し、ポトマック川に墜落した。同便はカンザス州ウィチタ発で乗客60人と乗員4人が搭乗しており、ヘリには3人が乗っていた。ウィチタでは26日までフィギュアの全米選手権が開催され、米メディアの報道によると同地でその後に強化合宿も行われていた。
計67人の安否はすべて確認されていないが、米トランプ大統領は30日の記者会見で「ノー・サバイバー」と話し、生存者がいないとの認識を示した。
米フィギュアスケート連盟はXで「残念ながら数人のスケート関係者が搭乗していたことを確認した」と伝え、家族を思いやった。報道では14人とされ、6人が「スケーティング・クラブ・オブ・ボストン」在籍者。同クラブの搭乗者には2人の10代選手のほか、かつてロシア代表で世界選手権のペアを制した現コーチのワジム・ナウモフさん(55)とエフゲニア・シシコワさん(58)夫妻もいた。フィギュア関係者はウィチタからの帰路で悲劇に見舞われた。
ケリガン氏は同クラブの出身者。五輪金メダリストのテンリ―・オルブライト氏(89)らとともに30日、クラブを訪れた。ニュース映像に映ったケリガン氏は沈痛な面持ちで、泣きじゃくりながら取材に応じた。
事故の一報にいてもたってもいられない様子のケリガン氏。仲間とともにクラブで時間を共有するために駆けつけたといい、「搭乗していたすべての人々に哀悼の意を表する」と語った。クラブでは「子供たちは一生懸命で、親も一生懸命」な光景に接するのか常だったと振り返った。
ケリガン氏は1992年アルベールビル、94年リレハンメルの両五輪の銅、銀メダリスト。リレハンメル五輪前に同僚選手の関係者に襲撃される事件も話題になった。