【宮崎祐樹連載 オリのゴリBsを知り過ぎた男(54)】オリックスのOBであり、現在はドジャースで活躍する山本由伸投手。入団当初は僕にとっては12歳も年下のかわいい後輩でしたが、現在は尊敬すべき野球界を代表する投手に成長しました。たまたま現役時代のご縁に恵まれ、時間を共有させてもらいました。それも今となってはいい思い出です。
新人時代から将来のメジャー移籍を見据えて仲良くした…なんてことはありません。未来を見ることはできないので当然です。僕がプロ入り前に所属していたセガサミー野球部に、由伸の同級生が入部して間もなく退部したアクシデントから会話が生まれ、つながったご縁です。
由伸がオリックスに加入する頃、僕はもう30歳になるタイミングでした。現役の晩年です。由伸の1年目だった2017年、僕は52試合の出場で打率2割7分(137打数37安打)、2本塁打、13打点という成績でした。でも、18年は33試合と出場機会を減らし、最後の19年はなかなかつらい経験をしました。
二軍の試合にも呼んでもらえず三軍での生活。対戦相手は大学、社会人という中で当然結果を残しますが、一軍に呼ばれることもほとんどありません。そんな時期に由伸はどんどん成績を上げていきました。
2年目の18年は54試合に登板して4勝、32ホールド、防御率2・89と堂々の成績。オールスターにも選出され、10代でのシーズン30ホールドポイント超えはNPB史上初の快挙となりました。
19年はそれまでオリックスを支えてきた金子千尋さん、西勇輝さんが他球団へ移籍。これも時代の流れなのでしょうか。由伸はこのシーズンから開幕ローテに入って8勝6敗、防御率1・95で初タイトルとなる最優秀防御率を獲得。オフには引退した岸田護さんの背番号18を受け継ぐことになりました。
その19年、僕はその横でひっそりとユニホームを脱ぐ決断をしました。引退し、保険営業マンとなった僕は野球のプロから頭をしっかりと切り替え、アスリートにライフプランを提案し、人生設計をサポートする立場。由伸も僕の話を快く聞いてくれました。
今だから言える話ですが、由伸はもともとメジャー移籍の希望を持っていました。当時は日本でプレーしていましたから、ドルで年俸を受け取る米球界から日本に復帰した時のため、日本で活用できる資金を先に用意しておくよう提案させてもらいました。
最悪のケースを想定し、もし不測の事態があった場合に、その補償として考えればという話などもさせてもらいました。あくまで、人のためになるにはどんな知識や情報を持っていればいいのかという提案を真剣に話しました。
20代で大金を得るアスリートが早めにお金の知識を身につけておくことは大事だと思います。もちろん、プレーが優先ですが、その周りの大人や支える人たちもお金に関するリテラシーを持っておいた方がいいと思います。