就任3年目の今季は「育成と勝利」の両立を目指す。広島・新井貴浩監督(47)がチームとともに31日、キャンプ地の日南に到着。選手とスタッフが集まった全体ミーティングで「去年の悔しさは忘れていないし、みんなも忘れていないだろうから。また明日から、頑張ろうと」と力強く述べ、あらためてチームを鼓舞した。
昨年は8月まで首位を走っていたものの、その後の急失速で4位に終わった。シーズン終了後の秋季練習ではBクラスに甘んじた反省点を踏まえ、それまでの指導方針を大幅に軌道修正。選手の意志を尊重する指導法から練習量を最重視し、精神面にも負荷を与える〝昭和様式〟へとシフトした。まるで新井監督の現役時代をほうふつとさせるかなり厳格なチーム方針だが、全ては昨年の雪辱を果たすためだ。
そして、この流れは当然ながら将来の主力育成にも密接に結びついている。今春キャンプの一軍メンバー46人中、30代は野手が秋山、菊池らベテラン勢4人と投手も大瀬良のみ。指揮官が「若返り&世代交代」を公言し、次代の主力育成を遂行しなければならない背景には、現代の球界事情に対応した組織作りを行わなければならない側面も多分にある。当然ながら昨今、有力選手たちがポスティングシステムでのMLB挑戦や、FAによる他球団への移籍を頻発化させている現状も無関係な話ではない。
ただしFA制度での主力流失は、今に始まったことではない。それでも球団側はあくまで外部補強に頼らず自前の選手を次の中心選手に育て上げ、特に2010年代はリーグ3連覇の黄金期も作り上げてきた。
一方、20年以降は鈴木誠(カブス)がポスティングシステムで、西川と九里(ともにオリックス)がFAでそれぞれ移籍し、退団。中でも鈴木誠と西川の野手2人は「働き盛り」と評せる現30歳の円熟期を迎えたが、その代役を果たすべき同年代の選手が今のチームには不在だ。実際に在籍しているリーグ3連覇の功労者たちも多くは、30代後半に差し掛かっている現状がある。
球団関係者は「今のウチは世代別の選手層の厚みで〝50代の高齢者予備軍〟と〝20代以下の若年層〟が厚く、その間がポッカリとあいている『現代の日本社会の縮図』みたいになっている。戦力として最も機能しなければならない20代後半から30代までの野手層が他球団より薄い」と組織的な課題を指摘。世代交代は遅かれ速かれ、必要不可欠な状況だ。
特化すべき鈴木誠や西川の穴を埋める日本人の中心打者育成は、もう「待ったなし」。過去2年の現場指揮を通じ、この課題を何よりも痛感した元主砲・新井監督は「質より量」のアプローチで〝第2の自分〟づくりにも奔走する。