東京・千代田区長選(2日投開票)は、現職で都民ファーストの会副代表の樋口高顕区長が、1万703票を得て、再選を果たした。選挙中に異例となる文春砲にさらされ、SNSでバズった〝減税メガネ〟こと公認会計士の佐藤沙織里氏の猛追(6474票)を許したが、薄氷の勝利を収めた。
小池百合子都知事の愛弟子である樋口氏は無所属ながらも事実上、小池氏、都民ファ、自民党の支援を受け、圧勝が予想されたが、選挙戦では表に出ない〝ステルス戦法〟を取った。
同区長選には昨年、区議や職員が逮捕された官製談合事件での対応を疑問視する前区議の浜森香織氏が名乗りを上げた。浜森氏の選挙アドバイザーは小池氏を学歴詐称で刑事告発した元都民ファ事務総長の小島敏郎氏が務め、援護射撃した。
批判の矢面に立つ可能性があった樋口氏は、告示翌日の東京青年会議所が主催したネット討論会にこそ姿を見せたが、その後のユーチューブチャンネル「ReHacQ」や「ABEMA Prime」での討論会は公務やスケジュールを理由に欠席。
また、選挙中には週刊文春が「小池百合子側近が隠蔽する談合疑惑と担当者の自死」とのタイトルで、官製談合事件で逮捕された元職員の告発を掲載した。結局、小池氏が応援演説に立ったのは最終日のみ。警察による厳重ガードでの物々しい街宣となり、事前告知もなかったことで、まばらな聴衆となった。
再選後、樋口氏は「根拠のない情報ですとか、大きな声というものは高く注目される。適切に対処していく必要はある」と話したが、根拠のない情報の中身には具体的に言及はしなかった。また、2つの討論会を欠席したことは「7日間は短い期間。時間を有効活用するため」と釈明した。
千代田区長選は6月の都議選の前哨戦ともいわれた。樋口氏が勝利を収め、都民ファ陣営は安泰かと思いきや、決してそうではない。都議選で全選挙区の候補者擁立に動いている石丸伸二氏の地域政党「再生の道」が手ぐすね引いて待っているからだ。
樋口氏が討論会を欠席したことを受け、石丸氏はXに「現職だけは公開討論会を欠席してはならないと思います。有権者に十分な判断材料を提供すべき(中略)逃げた方が有利、という思い上がりを正す必要があると感じます」と痛烈に批判している。既に人気絶頂期からピークアウトしている小池氏および都民ファ陣営は、守勢に回る厳しい局面を迎えることになりそうだ。