米国が4日、中国からの輸入品に対する10%の追加関税を発動したのに対し、中国は報復として、石炭や液化天然ガスを含む米国からの輸入品に対する関税を発表した。米中が貿易戦争で激しい応酬を繰り広げた。報復合戦が続けば、世界経済に影響が出ることは必至だ。
中国財政省は、10日から米国産石炭と液化天然ガスに15%、原油、農業機械、農業用車両に10%の関税を課すと発表した。この発表は、米国の追加関税が発効したわずか数分後に行われた。トランプ大統領と習近平国家主席が今週後半以降、首脳協議を行う予定となっている。
4日の発動を予定していたメキシコ、カナダへの25%の関税は、両国が国境警備に力を入れるということで、トランプ氏が1か月間延期する大統領令を出した。トランプ氏は両国からさらなる譲歩を引き出すため、圧力をかけ続けるとみられるが、中国とはバチバチだ。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、2024年の中国の対米輸出は5246億5600万ドル、対米輸入が1636億2400万ドルで、対米黒字額は3610億3200万ドルだった。
中国事情通は「中国は米国のエネルギー輸出の主要市場で、昨年の石油、石炭、液化天然ガスの輸入額は約70億ドル。しかし、中国は昨年ロシアから約940億ドルを輸入しています。比べてみると、米国からのエネルギー資源の輸入はごくわずか。関税を上げると基本的に消費者が負担することになりますが、中国が米国に報復関税を課しても、中国国内はさほど痛くないんです」と指摘する。
そもそも第一次トランプ政権の時も米中は激しい貿易戦争を行った。
第一次トランプ政権時の2018年は、中国は米国に4784億ドルを輸出し、米国から1551億ドルを輸入した。
「第一次トランプ政権の時、トランプ氏は何度も追加関税を課し、結果、総額3600億ドル相当の商品に関税を課したことになりました。中国はこの時、突然のことで十分な準備ができていませんでした。その時にトランプ氏のやり方を学んだので、今回は事前に貿易戦争の準備ができていたとみられています。報復関税だけでなく、レアメタル、レアアースという希土類元素の輸出管理を強化することで対抗します。双方が関税を課しながら、交渉を続けることになるでしょう」と前出の中国事情通。
希土類元素はハイテク製品の製造に欠かせないもので、米国の経済や国家安全保障に大きな影響が出ることが確実だ。
米国事情通は「今回、中国は対抗する準備ができています。第一次トランプ政権の時から7年かけて、中国は希土類元素の輸出管理体制を非常に発達させました。米国は多くの希土類元素を中国に頼りっきりになっています。中国は米国経済に重大な損害を与える可能性があります」と指摘する。
米中貿易戦争は世界にどれほどの影響を与えるのだろうか。