巨人にFA移籍した甲斐拓也捕手(32)の〝置き土産〟が、古巣の後進育成にひと役買っている。
その一人が今季で6年目を迎えた石塚綜一郎捕手(23)だ。石塚は2019年の育成ドラフト1位で入団し、昨年7月に支配下に昇格。翌8月にはプロ初本塁打を放つなど打撃が持ち味で、その打力を生かすため昨季は一塁を中心にさまざまなポジションに取り組んだ。
今季も捕手をメインとはしないが、自主トレでは球界を代表する捕手である甲斐のもとで鍛錬を積んだ。「昨年も甲斐さんのところでお願いして、ほぼ捕手として出場せずに支配下になった。雰囲気もいいですし、そこで環境を変える必要はない」とスキルアップを図った。
そんな石塚が自主トレを通して、より意識するようになったことが「頭の整理」だった。甲斐が日本シリーズのために相手チームの映像をチェックし、洗い出した大量のデータを見せてもらったのだ。そこには打者によって「このカウントでこの変化球を一球も打っていない」というところまで記されていたという。石塚の中では「打者としたら、甲斐さんという捕手にこれだけ研究されている。ただ打ちにいくだけじゃ足りない」との思いが強まった。
「技術というよりは頭の整理も必要なのかなと。捕手によって攻め方は違うが、攻めてくるところを狙う、練習するという手もある」
宮崎での春季キャンプでも自主トレで得た考え方を活用し、練習から「カーブがくるんじゃないか」などと想定しながら頭の整理につなげている。恩師は新天地に渡ったが、貴重な財産を武器に競争を勝ち抜く。