“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は、新道が審査員を務めた“学生お笑い”の賞レースで見事な漫才を見せつけた大学4年の男女コンビを紹介する――。
「大学生M―1グランプリ」の決勝が1月26日に行われました。私は審査員を務めたのですが、決勝の8組に残ったのが同志社大学のこのコンビ。しかも最終決戦の2組にも残りましたが、惜しくも筑波大の乙女ブレンドに敗れました。ただ1本目に披露した漫才はこの日、一番面白かったので紹介したいと思います。
【プロフィル】
コンビ名‥ピ夜(ピヨル)
結成‥2021年4月
男性‥キノシタ
生年月日‥2002年11月26日
女性‥イワサキ
生年月日‥2002年6月3日
大学‥同志社大学
2人の漫才は一見、普通の会話をしているだけに見えて、なぜか気づけば笑ってしまう。この漫才にフリとボケがあるのだろうか? 笑いが起こってるからあるのでしょうが、見失ってしまう。というのも照れてる男性と照れてる女性がどうでもいい話をしているだけだから。
キャラクターの見せ方でうまいのがセンターマイクに行くまでの女性の歩き方で、ある程度のキャラクター紹介ができるところ。そして何でもない会話で1つ目の笑いにたどり着くと、もう男性側の自己紹介が終わっている状態になる。自己紹介らしき言葉は一つもないのに「おそらくこういうキャラクターなんだな」と気づかせる。
さらに会話のやりとりがとても上品で、ムダな言葉をここまでなくせるのかと驚いてしまいます。それに加えて見た目とセリフがバッチリ合っている。言葉選びのうまさで流れの自然さを描けているのだと思います。
そんな2人に話を聞きました。
――コンビ名の由来は
キノシタ「サークル内で書いた大量の上の句と下の句の中からランダムに引いて組み合わせた」
――大学入学前からネタをやる機会はあった?
キノシタ「大阪の『楽屋A』という吉本興業以外の芸人がたくさん出る劇場で、平均月2本程度ライブに出てました」
イワサキ「私は、大学でサークルに入ってからお笑いを始めました」
――「大学生M―1グランプリ」の手応えは
キノシタ「ウケたが、もっといけると感じた」
イワサキ「2本目終えた後は正直優勝したかな、と思いました(笑い)。乙女ブレンドだけでなく全員が実力のあるコンビだったので、決勝に残れただけでとても光栄でした。ネタ前は多少緊張していたが、決勝メンバーが友達だらけだったのでリラックスしてできたことも最終的にネタを2本させていただけた要因かなと思います」
――ネタの作り方は
キノシタ「キノシタの案をイワサキに見てもらう」
イワサキ「キノシタが『0↓1』を考えていろいろ提案してくれるので、そこから2人で詰めていく形です」
――影響されたお笑い番組は
キノシタ「吉本新喜劇、エンタの神様」
イワサキ「もともとお笑い番組を見る家ではなかったのですが、受験勉強が嫌でたまたまつけたテレビでやっていた『M―1グランプリ2017』を見てお笑いに興味を持ち始めました。当時のファイナリストの方々のネタはとても印象に残っています」
――今後はどうする?
キノシタ「プロになりたいが、4年間でイワサキを説得できなかった」
イワサキ「お互い就職が決まっているので、いったんは解散という形になると思います。私は芸人になるつもりはないので、機会があれば休日に舞台に立たせていただくことはあるかも?ぐらいの感じです」
――将来の目標は
キノシタ「30歳までピ夜をやりたい」
イワサキ「近い将来にですが、『NOROSHI』(大学生チーム戦お笑いネタ賞レース)が学生生活最後の大会になるので、仲間と一緒に結果を残すことが目標。あとは卒業までの残りのライブ、一つひとつ楽しんでネタをしたいです」
☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。