先月28日に埼玉・八潮市内で道路が陥没し、トラックが転落した事故で、地元消防は9日、安否不明となっている74歳のトラック運転手男性の穴内での捜索を打ち切った。事故後、しばらくは会話ができた運転手を迅速に救助できなかったことに対し、無念の声が漏れている。
現場では5日に重機を入れるためのスロープの2本目が整備されていた。ところが、穴の中の水位が上昇するなどして、手がつけられなかった。この日、8日ぶりに本格的な救助活動に着手したが、変わらず水位が高く、壁が崩落する恐れがあるなどしたため、30分で中断。穴の中での救助活動の打ち切りが発表された。
防災アナリストの金子富夫氏は「救助活動の断念で、運転手さんのご家族は無念な気持ちだと思います。また、現場を担当している救助隊員も、非常に悔しい気持ちにさいなまれていることでしょう」と話す。
金子氏は初動対応がすべてだったと指摘する。「今でも残念なのは、落下直後はトラックの荷台が地上に近い位置にあり、救助隊員も運転手と会話をしていた。この時点でトラック荷台のキャビン近くへワイヤを巻き付けて引き上げていれば、トラック全体が引き上げられたのでは」
28日午前9時40分過ぎにトラックが転落し、昼過ぎに隊員が運転席後部からの救助を試みたが、土砂が崩れるなどして、ケガをした。ワイヤでのつり上げ作業を始めたのは午後4時過ぎ。同8時にはワイヤの強度が弱く、運転席側が切れてしまい、失敗。他の場所でも道路が陥没し、トラック荷台部分が地上につり上げられたのは翌午前3時過ぎだった。
「災害救助は人の命がかかっているので、瞬時の判断、迅速な活動が迫られ、隊員の身に危険が及ぶ可能性がある時でも積極的な姿勢が望まれます。今回は現場の困難な状況から高度救助隊や自衛隊のレスキュー隊、自衛隊ヘリによるつり上げなどの要請が必要だった。現場指揮は地元消防署任せになる現行の消防体制の限界も浮き彫りになった」(金子氏)
今後は運転席部分とみられるものが見つかった現場から約100~200メートル先の下水道管内の探索に移ることになる。八潮消防署の佐藤徹司署長は「下水管の中は水流や硫化水素濃度が高いため、引き続き関係機関と検討していきたい」と話し、具体的な方法は未定。さらなる時間を要することになりそうだ。