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「すごく安定している」 特定原付の「四輪型」使い勝手バツグン!? 高齢者の免許返納で熱視線のワケ

乗りものニュース 2024年7月28日 16時12分

グラフィットが発表した四輪型の特定小型原付の試乗会が開催。二輪タイプと比べ安定する構造で、免許返納後の移動手段として高齢者の支持を集めました。そこから見えるのは、移動の“制約”への不満です。

自分の父親でも乗れる四輪型を、早く市場に出したい

 自転車と原付の二刀流「モビチェン」で知られるグラフィット(glafit)が、初の“四輪型”特定小型原付のプロトタイプを2024年6月に発表し、7月から本社のある和歌山市を皮切りに東京、大阪で試乗会を開催しました。
 
 会場には親子で体験し、免許返納後の移動手段を模索する家族の姿も。体験者が口にしたのは、クルマでも電動アシスト自転車でもない「免許返納後」に使える移動手段でした。

「新しい乗りものの規格について議論が続き、まだ特定小型原付という言葉もない当時から、『四輪型』の構想を考えていました。その時、ほとんどの人の頭の中にあったのは電動キックボードだったのですが、社会課題を解決するための乗りもの、四輪型が世の中に必要だと思っていました」

 東京試乗会で、利用者の応対に追われるグラフィットの鳴海禎造社長は、新しいパーソナルモビリティの必要性を、こう訴えました。

 同社は、これまで自転車として乗ることができる電動原付バイク「GFR-02」や免許なしで乗れる特定小型原付「NFR-01PRO」などを商品化。先進的なアイデアをパーソナルモビリティで実現するスタートアップとしての認知度を高めてきました。これらは着座タイプですが二輪車。フル電動で体力は補えたとしても、バランス感覚が必要でした。

 鳴海社長は43歳。父親は74歳。自宅からの移動にクルマは欠かせませんが、免許返納後の移動についても考えなければならなくなってきています。返納後の移動手段を提供することは、自身の課題でもあると鳴海社長は話します。

 試乗できる四輪型の車両はまだ1台しかありません。それでも、プロトタイプの公開を急いだ理由は、試乗会などを通じてより多くの声を聞き、少しでも早く市場投入にこぎつけたい、という思いからでした。

70歳、クルマを降りて不便さを実感

 2024年7月21日、東京都江東区での試乗会には、免許返納を前にした人が遠方から訪れました。

 神奈川県大和市在住の男性は、70歳を過ぎて乗用車を手放しました。運転免許はまだ手元にありますが、そこで改めて実感したことがあると言います。

「これまでよく行った遠くのスーパー、気に入っているレストランに行けないですね。バスがあるけど、時間がかかって不便なんです。自転車でいいじゃないかと思っても、高校の通学以来乗ってないし、持ってもいない。やっぱり乗用車のかわりに簡単に乗れるものがないとだめだ、と思って試乗する気になりました」

 グラフィットが提案する四輪型は、車幅60cm。自転車のハンドル幅と同じです。免許不要である特定小型原付の規格なので、返納後も乗ることができます。

 公道走行の基本は最高速度20km/hで車道左端を走りますが、特例特定小型原付としての機能(最高速度6km/hモード)も備えているので、自転車が通行できる歩道も走ることができます。この点では、歩道のみを走行できる速度6km/h以下のいわゆる「シニアカー」と比較すると、実用性が期待できます。

 70歳の男性は、四輪型の運転感覚について、こう話します。

「この四輪型はスロットルを離すとブレーキがかかるので(※減速で回生ブレーキが効くので滑走せず、短い距離で停止する)、乗りやすかったです。普通はアクセルを戻しながらブレーキ踏まないといけないですから乗りやすいです」

80歳、返納したら必要 問題は価格

 千葉県在住の80歳の男性は、家族といっしょに東京試乗会を訪れました。

「すごく安定している。スロットルを離すと止まっちゃうから、カーブとかではぎこちなかったけど、慣れるとうまく走ることができると思う」

 男性は大型免許を返納し、現在は普通免許と自動二輪免許を所持。バイクに乗っていたのは40歳ぐらいまでで、もっぱら乗用車を運転しています。

「免許返納して、クルマの便利さがなくなった時には必要な乗りもの。こういう乗りものがあるといい。問題は値段。年金暮らしでも手が届く価格だったらいい」

 グラフィットの広報担当・安藤明子さんは、試乗会の手ごたえを、こう話します。

「試乗会に来ていただける人からは、具体的な質問が多く寄せられて驚いています。例えば、アームレストやバックレストは付けられないかとか、荷物の置き場所は作れないかとか。自分が乗ることをイメージした要望が多いです」

 四輪型特定小型原付の登場に希望をつなぐ人は、免許返納を見込む高齢者だけではありません。安藤氏はこうも話します。

「実は身体の不自由な人からも、利用できないかという問い合わせは多いです。電動車いすはシニアカーと同じ速度6km/hなので、免許返納した後の人と同じように、移動のスピードに不満を抱えていることがわかりました。福祉車両としては別の課題もありますが、可能性を幅広く考えていきたい」

 グラフィットが開発した四輪型特定小型原付は、歩道と車道にある段差に乗り上げることがあっても転倒しにくいリーンステア制御を搭載。幅の狭い生活道路での走行安定性と、自転車並みの小回りを両立させています。

 現状での開発課題は、年齢を問わない安全な操作性。試乗車は急ハンドルを防止するステアリングダンパーを付けていました。

 同社は「2年後の量産体制」(鳴海社長)を目標に、日本初の姿勢制御機能付き四輪型特定小型原付の市販を狙います。

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