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史上最強の「ベンツGクラス」 特殊部隊も愛用する納得の理由 ドローンとも連携します!

乗りものニュース 2024年8月21日 12時32分

メルセデス・ベンツの高級SUV「Gクラス」がベースの軍用4駆が「ユーロサトリ2024」で披露されました。さまざまな軍用車両があるなか、Gクラスが原型であることが大きなメリットなのだとか。現地でハナシを聞きました。

ベンツの高級SUVの性能には軍隊も注目

 ベンツGクラスといえば、SUVの中でも高級モデルとして有名です。ベンツという高級車としてのブランド力はもちろんのこと、その知名度に負けないほどのラグジュアリー感と4輪駆動車としての優れた能力、高い衝突安全性がそのイメージを形作っているといえるでしょう。

 ただ、Gクラスはもともと軍用車両として開発された経緯があります。だからこそ、優れた悪路走破性と信頼性を兼ね備えているといえますが、それらは世界中の軍隊や特殊部隊、警察などといった組織からも評価されており、このクルマをベースにした特殊車両がいくつも開発されています。そのなかで最も新しいモデルと言えるのが、ドイツの防衛企業ラインメタル社が新しく開発した空挺車両「カラカル」です。

 同車が初めて展示されたのは、2022年に開催された防衛見本市「ユーロサトリ2022」でのこと。それから2年経った今回の「ユーロサトリ2024」では、展示とともに走行する様子も披露され、注目を集めました。

「カラカル」はラインメタル社とメルセデス・ベンツ社およびACS(アーマード・カー・システムズ)社が提携して開発した全輪駆動(4WD)の軍用車両です。ボディ部分はACS社による独自の設計ですが、シャシー部分はメルセデス・ベンツ社のGクラスの派生モデル W464が採用されています。

 車体重量は2.9tで、路面上での最大速度は130km/h。貨物については2t以上の積載量を誇ります。

 パラシュート部隊や特殊部隊で使用する空挺車両として開発されたため、軍用ヘリコプターや輸送機での空輸を前提にしているのも大きな特徴です。CH-47F「チヌーク」やCH-53K「キングスタリオン」といった大型ヘリコプターでは機外に吊り下げ輸送することができ、C-130「ハーキュリーズ」やA400M「アトラス」といった軍用輸送機では空輸だけでなく、上空からの落下傘投下にも対応しています。

 ドイツ軍とオランダ軍向けの軍用車両として、2023年7月に正式な生産契約が結ばれており、生産開始と両軍への引き渡しは2025年から始まる予定です。また、ロシアによる侵攻を受けているウクライナからも、同軍の特殊部隊向けとして緊急の提供依頼を受けており、Gクラスの461モデルをベースにした急造「カラカル」が、すでに20台ほど引き渡されているそうです。

ドローンだって装備

「ユーロサトリ2024」のラインメタル社ブースに展示された「カラカル」には、いくつかの兵器が搭載されており、軍用車両らしいスタイルとなっていました。

 車体上部の銃座には40mmグレネードランチャー、助手席には軽機関銃がそれぞれ装備されていました。また、荷台部分には4つの円筒形の物体が斜めに取り付けられていましたが、これは「HERO140」という名前の徘徊ドローンの発射機です。

 徘徊ドローンとは、戦場において一定時間、飛行し続ける無人機のことで、上空から地上を監視するだけでなく、必要であればそれ自体が体当たりして誘導兵器になることもあるとのこと。これら武装のバリエーションの多さと攻撃力の高さは、他の軍用車両と比べても十分に強力なものだといえるでしょう。

「カラカル」のボディはモジュラー式の設計となっており、任務や用途に応じて武装や装備を組み替えることでさまざまな姿に変えることが可能です。展示車は、重武装ですが運転席側のフロントガラス以外は窓がなく、運転席と助手席以外はフレームしかないオープントップ仕様となっており、ドアも取り外し可能な簡易的なものになっていました。

 このような攻撃力と軽量化に特化した構成は、空挺部隊や特殊部隊での運用を想定したものですが、たとえば密閉型のキャビン仕様にすれば、兵員輸送や野戦救急車といった任務に用いることも可能です。また、ボディの仕様変更だけでなく、シャシーを延長し3軸6輪にして積載量を増やした、輸送モデルも用意されています。

世界中で整備・修理できるのはメリット大!

「カラカル」は、シャシーこそGクラスをベースにしていますが、全体としてみれば完全な軍用車両だといえます。逆にいえば、なぜ、わざわざ民間のものを流用したのでしょうか。その一番の理由は前述したようなGクラスの優秀性にありますが、それ以外にもメンテナンスと運用面で大きなメリットがあるからです。

 同車は3000台の生産が予定されていますが、そのベースとなったGクラスの累計生産台数は50万台を超えており、整備や修理などで必須のサプライチェーンも世界中に整備されています。

 少数生産の軍用品と比べると、それらはスケールメリットによって圧倒的に低コストであり、Gクラスの販売が続く限り長期間に渡って安定して利用することもできます。ラインメタル社も「カラカル」の運用については今後20年間のライフサイクルサポートが行えると説明しています。

 2024年7月時点で、「カラカル」を採用した国は、ドイツ、オランダ、ウクライナの3か国に留まっているものの、世界的に名の知られたメルセデス・ベンツのブランド力とGクラスの人気が後ろ盾となれば、今後も採用国が増えていく可能性は高いといえるでしょう。

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