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自衛隊「専用トラック」大水害になぜ強い? 空から落としても津波喰らっても大丈夫な理由

乗りものニュース 2024年8月16日 7時12分

台風や豪雨などではパトカーはおろか、消防車でも救援に向かうことが難しい場合があります。一方で、自衛隊のトラックは東日本大震災の冠水エリアで問題なく走行したとか。なぜ自衛隊のトラックは水に強いのでしょうか。

輸送機からの空中投下もOK

 台風や豪雨などで冠水した道路を走ると、民間車では即座にエンジンルームが浸水し走行不能になってしまいます。それは一般的なパトカーや消防車も同様。しかし、自衛隊車両は水深の深い場所でも走れるといわれています。一体どれくらいの深さまでなら問題なく走れるのでしょうか。

 そもそも、自衛隊が保有する車両のすべてが悪路走破性に優れているわけではありません。専用設計の車両はおのずと車両本体価格は高額なほか、どうしても燃費が悪いため、燃料コストなども専用部品も高くなります。そのため、自衛隊でも市販車を多数使用しており、営業車のような「業務車」や、大型バスそのままの「人員輸送車」、カラーリングだけ変えたような「業務トラック」などが全国の基地・駐屯地に配備されています。

 これらは、市販車とほとんど変わらないため、自衛隊車両といっても悪路や冠水地域には不向きです。

 日本国民の多くが思い浮かべる、不整地や浸水エリアでも走れそうな自衛隊車両、それは「高機動車」や「3 1/2tトラック」などでしょう。

 これらは、防衛省が作った仕様書に沿って設計されている「自衛隊専用車両」であり、市販はされていません。ただ、そのぶん市販車には求められないような要求数値が盛り込まれており、基準をクリアしているかの専門試験まで行っています。たとえば、一般車なら行わないような、輸送機からの空中投下も採用前に実施しています。
 
 だからこそ、堅牢で水にも強く、整備性にも優れた車両に仕上がっているのです。

東日本大震災時に性能いかんなく発揮

 自衛隊専用設計の車両は前出の「高機動車」と「3 1/2tトラック」以外にもいくつかありますが、比較的ポピュラーな車両は前出の2種類以外だと、「1/2tトラック」と「1 1/2tトラック」ではないでしょうか。

 この4車種は、全国の基地・駐屯地で見られます。また1/2tトラックは47都道府県すべてに配置されている地方協力本部という防衛省の出先機関などでも使用されています。

 車体サイズの小さい方から並べると、6人乗りの「1/2tトラック」、10人乗りの「高機動車」、17人乗りの「1 1/2tトラック」、24人乗りの「3 1/2tトラック」となります。

 これらは大きさだけでなく、車重やタイヤの数、果ては最低地上高なども異なるものの、渡渉能力は水深80cm(標準積載状態)で統一が図られています。この数値は最も小さな「1/2tトラック」にも明記されているため、吸排気周りにもその数値に対応するための艤装が施されているはずです。

 足回りは全車AWD(全輪駆動)で、車両によっては油圧モーター式のウインチが装備されています。そのため、ぬかるみや泥濘地でも優れた走破性を誇ります。

 実際、いすゞの公式動画では「3 1/2tトラック」の走行試験を見ることができますが、タイヤの3分の2が水の中に入り、荷台の直下まで水面が迫っていても走っています。

 また水深80cmという数値は、確実に走れる保証のスペックなので、状況次第では100cm、すなわち水深1mでも問題ないかもしれません。

 一説によると、3 1/2tトラックは2011年の東日本大震災時、津波による被害を受けた自衛隊車両のなかで唯一動いたクルマだったとか。

 ちなみに、このように優れた悪路走破性を持つ3 1/2tトラックのコンポーネントを流用した救援車両として、東京消防庁には「救出救助車」という6輪駆動車が配備されています。

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