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新幹線寸断!「名古屋-東京」を“かなりマイナーなルート”で迂回した結果 「まず選ばないだろうね」

乗りものニュース 2024年9月3日 7時12分

台風10号によって東海道新幹線が運休となり、中央本線の特急「しなの」に乗客が殺到するなか、名古屋から東京へ「しなの」を使わないルートで、比較的快適に脱出ができました。代替ルートは、「なるべく近いほう」がよいとは限りません。

「のぞみ」が豊橋で立ち往生

 台風10号の影響で、東海道新幹線は2024年8月29日午後から9月1日夕方にかけて、多くの列車が運休になりました。日本の大動脈が止まり多くの人々が移動の足を奪われた格好ですが、名古屋から東京へ向かおうとしていた筆者もそのひとり。帰京日の8月30日は東京への迂回ルートとなる特急「しなの」も満席だったため、別のルートで名古屋から脱出しました。

 筆者は名古屋出張から帰京すべく、29日15時57分名古屋発の「のぞみ30号」に乗車。このときはまだ、定刻で運行していました。

 ところが16時30分ごろ、「掛川~静岡間の雨量が規制値に達したので、しばらく停車します」というアナウンスとともに、「のぞみ30号」は豊橋で停車してしまったのです。雨がおさまったら運転再開という放送は流れるものの、見込みはまったく立ちませんでした。

 車内は落ち着きを保っており、ビジネスマンがPCのキーボードを叩く音が響いたり、ささやき声で話したりする程度。定刻通りなら東京に着いていた17時33分を過ぎ、さらに1時間がたったころ、「一部のドアを開放します。運転再開に備えて、お買い物などをすませたらすぐにお戻りください」というアナウンスをきっかけに、車内は一気にざわつき始めました。

 乗客は開いているドアを目指して一斉に動き始め、通路には人だかりが。飲食物を持たず乗車した人が買い物に出かけたケースが多かった模様です。中には「長期戦」を覚悟したのか、缶ビールを開ける音も。

 そして19時ころ、全列車の運転打ち切りや運休が発表され、「のぞみ30号」は名古屋方面に引き返す計画があるという案内が流れました。とはいえこの時点で、引き返す方面の三河安城や名古屋にも列車が停まり線路が塞がっており、ホームの駅員もいつ動くかわからないと繰り返すばかり。

 待っていてはいつになっても名古屋に戻れないと判断した筆者は、豊橋から名古屋まで、在来線の東海道本線で引き返すことにしました。長蛇の列の窓口で「エクスプレス予約/スマートEX払い戻し証明書」「乗車駅証明書」をもらい、19時49分発の特別快速で豊橋を離脱。定刻の20時42分、無事に名古屋へ戻ることができました。ひとまず「列車ホテル」のお世話になることは回避しました。

「しなの」満席!さあどうする?

 翌8月30日、なんとかこの日のうちの帰京を考えたものの、東海道新幹線は東京-名古屋間で終日運休と発表。代替ルートとしては、名古屋-塩尻で特急「しなの」、塩尻-新宿で特急「あずさ」を乗り継ぐルートか、または名古屋-長野を「しなの」、長野-東京を北陸新幹線で乗り継ぐルートが浮かびます。
 
 東海道新幹線のエクスプレス予約の払い戻しと情報収集を行うため名古屋駅へ。朝8時の時点で窓口には行列ができていました。40分ほど並び、まずはエクスプレス予約の払い戻し手続き。今回は気象状況を鑑みて、利用者のクレジットカードに運賃・特急料金の全額が返金されると説明されました。

 次に「しなの」などのきっぷの手配ですが、この時点で15時台まで満席。また、自由席にも乗客が殺到しており、「しなの」利用での帰京案はボツに。名古屋からは特急「しらさぎ」も敦賀まで運行されており、東海道新幹線の代替ルートとして注目されるようにもなった北陸新幹線に乗り継げますが、ここで一計を案じました。

 名古屋から北陸へは、岐阜県を縦断し富山県へ至る東海北陸道を走行する高速バスがいくつか運行されています。中でも富山県高岡市を結ぶイルカ交通の「きときとライナー」は、名古屋と北陸新幹線新高岡を3時間35分で結びます。今回は「きときとライナー」と北陸新幹線の組み合わせで、帰京を目論みました。

 筆者はスケジュールの都合で名古屋15時30分発の4便を選択。「きときとライナー」は当日予約ができません。飛び込みで乗車できるか気を揉みましたが、無事に空席に収まることができました。
 
 筆者を含めて13人の乗客を乗せたバスは、名古屋高速、名神高速を経て東海北陸道へ。集中工事中の名神高速でしたが、工事渋滞の影響をほとんど受けませんでした。17時ごろには、ひるがの高原SAで休憩を取り、さらに高山市荘川、白川村と山深い岐阜県内を北上します。車窓には清流・長良川の上流部分が現れ、気持ちを和ませてくれます。

 雨雲レーダーを確認し、岐阜県や北陸地方はあまり雨風の影響を受けなさそうだと判断したものの、一時的に強い雨に降られました。しかし、雲間から光が差すなど天気は保ち、ほぼ定刻の19時8分に新高岡へ到着しました。

 このルートを、名古屋-東京の代替ルートとして使用した人は皆無だった様子。話を聞いた運転手さんも「そりゃあ早く帰りたいだろうから(きときとライナーを)選ばないだろうね」と苦笑気味でした。

 筆者は、エクスプレス予約の払い戻し手続きを終えた直後、JR東日本が提供する「えきねっと」を利用し、スマートフォンで新高岡20時34分発の北陸新幹線「はくたか578号」予約しておきました。ここからいよいよラストスパートです。

「はくたか578号」は発車時こそ半分ほどの乗車率でしたが、長野で名古屋からと思われる乗り継ぎ客が乗車し、一気に満席に。碓氷峠を越えて高崎に到着する寸前、街の光を見て「関東平野に戻ってきた!」と強く感じたのでした。東京には定刻23時24分着。名古屋を出て9時間という長旅になりました。

 なお、かかった交通費は「きときとライナー」が4000円、「はくたか578号」が1万3630円でした。

「迂回ルート」で移動して得た教訓は

 最後に、今回の旅行を通して得た注意点について紹介します。

(1)一番早く着く方法にこだわらない
 東京-名古屋間の代替ルートでは、「しなの」と「あずさ」および北陸新幹線の組み合わせが一番わかりやすく、かつ早く着くため、このルートに乗客が殺到したと考えられます。ですが、東京-名古屋間には、多彩な交通機関があります。

 高速バスは東名・新東名高速を走る便が運休となりましたが、今回紹介したような北陸周りや、岐阜県の高山を経由し高速バスで新宿へ向かう方法もあります。SNSでは、名鉄バス/富山地方鉄道の高速バス富山線なども迂回ルートとして注目されたようです。

 ただ、富山駅は最速達列車「かがやき」が停車しますが、今回筆者が利用した新高岡駅には停車しません。富山から「かがやき」の利用ならば、もっと混んでいたかもしれず、今回の「はくたか」の利用は結果的に、ゆとりにつながったかもしれません。

 また、中部国際空港と羽田空港を結ぶ飛行機の臨時便も設定されました。鉄道でも、名古屋-塩尻間の臨時快速が設定されたほか、忘れがちですが、中央本線の普通列車を乗り継ぐ方法もあるのです。

 時間に余裕があるなら一番早く着く方法にこだわらず、いま動いている交通機関の情報を集め、「今日中に着けばいい」という気持ちで、移動を楽しむくらいの余裕が必要かもしれません。

(2)“長期戦”を想定して、飲食物を確保してから乗車

 東海道新幹線では車内販売がなくなってしまったため、列車が止まり車内でカンヅメ状態になると飲食物が入手できません。また、迂回ルートとなった北陸新幹線や特急「サンダーバード」では、乗り換え駅となる敦賀駅で、駅弁などの売り切れが続出したようです。こうした事態に備えて、事前に飲食物を準備しておくことが肝心です。

(3)配られる証明書などは確実にもらい、きっぷも保管すること

「エクスプレス予約/スマートEX払い戻し証明書」や「乗車駅証明書」「遅延証明書」といった証明書類は必ずもらいましょう。東海道・山陽新幹線の場合、これらと使用したきっぷやEXご利用票を窓口で提出すれば、払い戻しを受けられます。手続きは1年以内なら東海道・山陽新幹線の各駅で対応してもらえるので、とにかく焦らず、次の乗車の前や、帰宅して落ち着いてからにするぐらいの心づもりでいましょう。

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