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飲酒OK! 独海軍の「激レア艦」日本で積んだ食料は? ビール以外の酒も飲むの? 准士官に聞く船上の食生活

乗りものニュース 2024年9月24日 7時12分

軍艦の乗組員らは、船上でどのような食生活を送っているのでしょうか。7か月間にわたり同じメンバーで航海を続けるドイツ海軍の補給艦「フランクフルト・アム・マイン」に積み込まれた食料や、海自では禁じられている飲酒をめぐる話などを同艦の准士官に聞きました。

補給艦で出てくる料理は?

 ドイツ海軍のフリゲート「バーデン=ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」が2024年8月20日、東京国際クルーズターミナル(東京都江東区)に艦隊を組んで寄港しました。ドイツ海軍が「今年最も重要な海洋防衛外交の取り組み」と目しているインド太平洋方面派遣「IPD24」の一環で来航した艦隊です。

「バーデン=ヴュルテンベルク」は航行中に乗組員のチームを随時入れ替えるクルー制を導入していますが、ドイツ海軍で最大級の軍艦「フランクフルト・アム・マイン」はIPD24の7か月の任務の間、約200人の乗組員(うち女性は15%)が基本的に入れ替えなしで航行を続けています。

 長期間の缶詰生活でストレスがたまりそうな「フランクフルト・アム・マイン」の乗組員たちは、船上でどのような食生活を送っているのでしょうか。その知られざる食生活について、同艦の准士官・マティアスさんにインタビューしました。

 食料230トン、弾薬200トン、燃料9500立方メートル、真水1300立方メートル。これは「フランクフルト・アム・マイン」が搭載できる量です。食料を入れるコンテナは甲板上に設置され、統合された冷却システムにより、熱帯海域でも温度管理をしながら輸送が可能です。

 あまりに膨大すぎて具体的に想像できない量ですが、仮に食料230トンが全てお米だった場合、日本人が一人で一年に食べるお米の量は60kgですので(JA全中による)、3800人ほどが一年間食べられるだけの食糧を搭載できることになります。

 それだけ膨大な食料品を積める「フランクフルト・アム・マイン」では、実際にはどういった食べ物が提供されるのでしょうか。

なんと「飲酒OK」なドイツ艦

「フランクフルト・アム・マイン」にどのような食材を積んでほしいかは、四半期ごとに乗組員が希望を出せるそうです。そして実際に、日本に寄港した際に補給した食材は「果物、野菜、乳製品(ヨーグルト、チーズ、牛乳)、コーンフレーク、チキンナゲット、スペアリブ」だといいます。「日本固有の食品は何も積まなかった」とマティアスさん。

 せっかく日本まで来てくれたのに、ちょっと残念な気もしますが、艦内では充実したドイツ料理が日々提供されるといいます。ラプスカウス(Labskaus)という、「見た目は悪いが案外おいしい」が枕詞の料理は、ドイツ北部の船乗りが考案したことにちなんで多くの軍艦で食されるそうです。

 ほかには、シュニッツェルと呼ばれるドイツ風カツレツ、ローストビーフにローストポーク、ソーセージ。余暇は、業務で鍛えた体にさらに鞭打ってジムでトレーニングして過ごすという、何事にも粉骨砕身な「フランクフルト・アム・マイン」の水兵たちですから、筋トレ後のプロテイン補給に良さそうなものが主流のようです。

 ドイツ料理の代名詞ともいえるジャガイモ料理も、もちろん多いといいます。充実したドイツ料理で船員のホームシックは緩和されそうです。

 しかし、それに加えて、なんとドイツ海軍では飲酒が認められているというから驚きです。

 もちろん、ルールはあります。「夜勤がない日の18時以降に、ビールを2杯まで」と決まっているそうです。日本は、戦前の海軍はイギリス式だったので航海中にお酒が飲めましたが、戦後の海上自衛隊はアメリカ式に変わり、船内での飲酒は認められていません。つまり、日本の海上自衛隊のモデルとなった米軍でも艦内での飲酒は禁止です。ルールがあれば絶対に守るまじめなドイツ海軍だからこそ、条件付きの飲酒が認められるのかもしれません。

 ちなみに、日本に寄った際に、日本のビールは積まなかったそうです。「ビールは2杯まで」というルールを厳格に守っているため、日本で補給しなくてはならないほどに減らなかったのか。あるいは、ドイツ人は16世紀から続く「ビール純粋令」というビールの製造方法についての法律を誇りに思っている人も多いため、「ビールはやっぱりドイツ」という誇りがあるのでしょうか。気になるところです。

実は積み込まれている様々なアルコール飲料

「フランクフルト・アム・マイン」の積み荷のリストには、ビールのほかに「ワイン、スパークリングワイン、ウィスキー、ジン、ラム酒、リキュール」の文字もありました。いずれも、ドイツから持ってきているそうです。

 ドイツ艦隊がIPD24の一環で2024年5月にニューヨークに寄港した際には、フリゲート「バーデン=ヴュルテンベルク」の甲板で、500人の来賓を招いたパーティが催されました。その際の写真では、ビールが振る舞われた様子が見られますが、ほかのお酒は確認できません。積み荷に見られるビール以外のお酒は、いつ、どこで、誰が飲んでいるのでしょうか。答えは、とある写真にありました。

 2024年8月26日と注釈の付いた写真には、楕円形の長いテーブルに貝殻やキャンドルなどのきれいなテーブルセッティングが設(しつら)えてあり、赤ワインと白ワイン用のグラスがしっかり並んでいます。

 高解像度の写真を拡大してつぶさに眺めて見ると、テーブル中央の主賓席には「バウアーンシュミット大佐」という名前がハッキリと見て取れます。窓の外が明るいことから、おそらく東京湾で停泊中に、米軍の、空母初の女性艦長として有名なエイミー・バウアーンシュミット氏をビジネス・ランチに招いたものと見られます。その対面の席には、ドイツ第2艦隊司令官のアクセル・シュルツ准将の名前と見られる名札があります。積み荷リストに載っている様々なお酒は、こうした機会に振る舞われているようです。

 積み荷リストと写真から判明した「フランクフルト・アム・マイン」での食生活と社交の様子は、オンとオフを切り替えて、ドイツ人らしい、かなり計画的なものだということが分かりました。

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