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「まだ特急が“縦列駐車”してる!?」 71年ぶり新装の「松山駅」 高架になっても“珍風景”だらけ!?

乗りものニュース 2024年10月11日 9時42分

愛媛の顔・JR松山駅がついに高架の新駅舎に切り替わりました。ただ、地上駅の名残りも色濃く残り、ホーム上の名物だった光景も、一部健在です。新駅誕生の前後を追いました。

地上駅「さよなら」の前から始まっていた大工事を追う!

 四国主要4駅で唯一、国鉄時代の駅舎(2代目、1953年築)を維持していたJR松山駅が2024年9月29日、高架の新駅舎へ切り替わりました。地元メディアも連日、松山駅の特集を放送したこともあり、駅内には2代目駅舎最後の日を見届けようと多くの人であふれかえっていました。

 その賑わう駅の南側、旧松山貨物駅跡地では、今宵決行が決まった新駅開業に向けた線路切替工事や各種撤去作業などを前に、関連会社を含む工事関係者約170人が集結して最後の全体点呼が粛々と行われていました。

 松山駅へ到着後に松山運転所へ引き上げる特急「しおかぜ」25号が1分ほど遅れて通過した22時44分、いよいよ工事スタート。四国では2008年2月に実施された高知駅の高架化以来、16年ぶりの大工事となりました。

 今回のタイムリミットは朝4時まで。16年前の高知駅時とは違い、電化区間での実施となるため架線切り替えも必要となります。とにかく時間がありません。

 そして取材しているこちらも時間がありません。すぐ松山駅へ愛車セドリックで急行します。2代目松山駅舎の前には約250人の人だかりができ、「しおかぜ25号」に接続する形で最終列車となった八幡浜行き普通列車を見送った人たちが、駅前の人だかりに合流していきます。

 23時すぎ、野本明人松山駅長と歴代の駅長が駅前に並び、2代目駅舎の消灯式が執り行われました。「戦後の復興期から激動の71年でした。多くの出会いや旅立ちを見守ってきた駅舎に感謝したい」と野本駅長のことばの後、カウントダウンの掛け声で三角屋根に灯っていた駅名照明が消され、歓声と拍手のなか、2代目駅舎はその長い歴史に幕を下ろしました。

 さて、余韻に浸っている間がありません。また線路切替現場へ急ぎ戻ります。地上駅に向かう予讃線の線路は、人海戦術によって30分ほどで新駅に延びる線路へ切り替えられ、その接続工事が慌ただしく行われました。そうして日が変わった29日0時14分。軌陸工事車両が初めて繋がれた線路を渡る瞬間を目撃しました。新しい予讃線の誕生です。

ホームの珍風景も健在!? 高架化したばかりの松山駅

 朝6時10分、7000系を使った試運転列車が行われたあと、1番営業列車となった岡山行き特急「しおかぜ6号」と併結の高松行き特急「いしづち6号」が発車3分前に入線、定刻となる6時13分に慌ただしく発車し、新たな松山駅のスタートを切りました。

 さて、松山駅の外観自体は、きのうまでの地上駅時代とパッと見変わりありません。とはいえ、駅窓口に人気はなく、改札口はすべて撤去されています。

 ただ、駅の中は全国唯一の“特急列車の縦列停車”が展開されていた1番線や、対面の2番線を大胆に跨ぎ、3番ホームを経由して新駅のコンコースへ通り抜ける渡り廊下が一夜のうちに設置されていました。手すりのみが設置された廊下が新設された以外は、普段の駅構内、線路もそのままです。この不思議な光景を撮影しようと、足を止めて写真を撮影する人などで混雑していました。

 地上駅の施設や線路は今年度中に撤去される計画で、まさに今しか見ることのできない「珍風景」です。11月4日に行われる地上駅のお別れイベントでは、掲げていた駅看板などを購入したり、敷石を持ち帰ることができたりするということで、今から楽しみです。

え、「縦列停車」してるじゃん…

 さて注目のプラットホームは3階です。これまでの2面3線から2面4線へと拡大し、普通列車や観光列車「伊予灘ものがたり」が発着する3・4番と、特急列車を中心に発着する1・2番線が新たに設けられました。

 これまで、同一の番線に“縦列停車”して連絡していた高松・岡山方面の電車特急「いしづち・しおかぜ」と宇和島方面に向かうディーゼル特急「宇和海」は、別々の番線に発着し、同一ホームによる対面乗り換え可能になりました。これにより乗り換え時分の短縮が実現したそうです。

 ただ、特急の“縦列停車”そのものは、新駅になっても実は健在です。

「いしづち・しおかぜ12号」(9時15分発)と「宇和海7号」(9時07分発)は、1番線で縦列停車を行っています。これはホーム使用状況の都合によるもの。消滅したと思われていた名物も、偶然ながら継承されました。

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