成田空港には他空港にないようなユニークルールがいくつも存在します。そのなかのひとつが、南側から着陸するときに「太平洋上で車輪を降ろして陸地へ進入する」というもの。どのような理由からなのでしょうか。
「洋上で脚を下ろせ」
成田空港には、おおむね南北方向に滑走路が2本伸びており、冬などの北風などが吹いている時期は、南側(滑走路34L/34R)から着陸するため、千葉県の太平洋側から着陸進入するケースが増えます。このときパイロットは、成田ならではの“ルール”に従わなければなりません。それは、空港からだいぶ離れた場所で車輪のついた降着装置を降ろすということです。なぜこういったルールがあるのでしょうか。
このルールは、あるパイロットによると「世界でも有数の変わったもの」なのだそうで、「九十九里浜の方向から着陸する飛行機は降下時、陸地に入るまで」に降着装置を下ろさなければならないといいます。
このルールがある経緯について同氏は「とくに長距離国際線の飛行機は、車輪のあいだに氷が付着していることもあります。そのため、海の上で氷を落としてきてから地上に降りてくるように……というルールを成田空港側が定めているのです」と話します。
このルールが定められた背景には、1989年度に19件、翌1990年度には17件の落下物が発生したなかで、南側からの着陸時がいずれも16件と大半を占めたのが理由です(四国新聞社2012年3月17日付)。
成田空港を運営するNAA(成田国際空港)によると、「落下物は多くの場合、氷の塊です。航空機から漏れた水が上空で凍って、それが着陸直前に落ちてくるというケースです」とのこと。そこで、太平洋上から車輪をおろすというルールを採用したことで、以後落下物の発生件数は「大幅に減り、1年に2件ほどになっている」としています。
なお、成田空港の運航に詳しい人物によると、「九十九里浜で、着陸する飛行機が洋上で車輪を降ろしているかチェックがあり、もし実施していない場合は、航空会社側に通告が行くようになっている」とのことです。