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地下鉄車両なのに「展望席」!? いろいろブっ飛んでる福岡の新型「すごい車両になっちゃいました」

乗りものニュース 2024年10月26日 15時12分

福岡市営地下鉄空港線の新型車両4000系がまもなくデビュー。日本初の機構をいくつも盛り込んだだけでなく、地下鉄車両なのに「展望席」まであります。かなり意欲的な車両になったようです。

みんなの理想を聞いたら……スゴイことに!!

 福岡市内を走る地下鉄空港線・箱崎線で、32年ぶりに新型車両が導入されます。2024年10月23日、本格的な運用を前に報道関係者へ、その全貌が公開されました。

 2024年度中のデビューに向けて準備が進められている福岡市交通局、通称「フクチカ」の新型車両「4000系」。福岡空港と姪浜を結ぶ空港線と、中州川端から貝塚へとつながる箱崎線に、6両1編成とした18編成の導入が予定されています。

 報道関係者が集まった姪浜車両基地に姿を現した4000系は、まずその外観の鮮やかさと、思い切った切妻の“顔”に圧倒されました。現在運用されている1000N系、2000N系ともに白とブルーのラインが入ったステンレス車体なのですが、今度の車体は全身白をベースに、正面とサイドラインにブルーを配しています。そして窓枠には、青空をイメージしたというこれまでのブルーとは異なるスカイブルーが採用されています。

 ファンからは“青い食パン”ともささやかれている切妻の顔は、現場運転士の「見通しをよくしてほしい」との要望から採用されました。これは同線に乗り入れているJR九州の305系電車に大きく影響されたといいます。

 今回の新車の開発には、「乗務員や整備士、この数年間に寄せられた『お客様の声』をできるだけ反映させました」と、車両開発に携わった福岡市交通局車両設計係長の江村卓朗さんは熱く語ります。

日本初の技術の“音”を聞くならここだ!

 兵庫の川崎重工業で製造開発が進められた4000系は、走行系に“初モノ”の技術も詰め込まれています。営業列車としては世界初だという「同期リラクタンスモーター」は、現有車両から約20%程度の消費電力量を低減させる効果を生むそうです。

 また、急カーブの多い地下鉄ならではの乗り心地を改善させるため、曲線に応じて車軸の向きを可変させることができる「リンク式方軸操舵台車」を採用。スムーズに曲線を通過できるほか、その際に発生する摩擦音も軽減されるといいます。

 その効果は、たとえば空港線 福岡空港-東比恵間のカーブなどでぜひ体験してほしいということでした。

地下鉄なのに展望席?異色の空間は6号車に広がっていた

 さらに意欲的なのが、多くの声を具現化したという4000系の車内です。

 編成端部の6号車には、これまでに地下鉄車両にはなかった「展望席」が設けられています。車両の一部の側窓が、外から見てもわかるほど大きいのです。これは、空港線の運行形態を考慮したものです。

 空港線は福岡空港から博多駅を経て博多湾沿いに走り、姪浜から地上に飛び出して、マリンビューが楽しめるJR筑肥線へと乗り入れます。この車両も予定では筑肥線の筑肥前原(糸島市)まで運行されます。そこで、空港ゲートや博多駅新幹線改札に近い6号車に、子供連れのファミリー層や大型のキャリーバックを抱えた観光客向けとしてフリースペースを設けています。

 その6号車の運転室近く設けられているのが「展望席」です。2歳程度の子供が床にひとり立ちしても車窓が眺められるよう、高さ1236mmもある大型一枚窓を配し、窓の下端を低くしています。この窓は視界をクリアにするため、他の窓よりも透過率を上げているそうです。

 また、車両正面の貫通扉は、運転席に“かぶりつき”をする子供の目線でも楽しめるように、ガラス面を床下580mmまで下げているとか。とにかく子供達に地下鉄を楽しんでもらいたいというフクチカの意気込みが感じられます。

 ほかの車内も、座席を従来の高さより20mm上げて座席下のスペースを確保するとともに、荷物棚の位置を下げています。これは「網棚を使わない」といわれる福岡県人に寄り添った工夫です。棚をガラス張りとし、絶妙な傾斜をつけることで窮屈さを払拭しつつ、荷物棚を使いやすくしています。

 さらには優先座席も拡充し、通常座席より60mm高くした立ち座りしやすい優先席も初めて設置しました。これは身体障害者団体と密接な交流をもっている福岡市ならではの発想であり、使う側からの細かい要望の声を具現化した結果だといいます。

 こうした様々な「声」と最新のテクノロジーを結集して完成した新型4000系。これからさらに乗務員訓練と試運転とを重ね、できるだけ早い運用開始を目指すとのことです。なお10月27日(日)には姪浜駅で11時30分から14時30分まで、一般向けのお披露目見学会も実施します。

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