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SF世界が現実に!?「三菱の無人戦闘機」は“脳みそ”搭載します 担当者を直撃したら「使い捨て」もありました

乗りものニュース 2024年11月1日 17時12分

2024年10月に開催された「国際航空宇宙展」で三菱重工が新たな軍用無人機のコンセプト模型を披露しました。しかも2種類。どう違い、特徴は何なのか、担当者に聞きました。

「戦闘機の三菱」が構想する無人機

 2024年10月16日から18日にかけて東京ビッグサイトで開催された「国際航空宇宙展2024」で、三菱重工業は新しい軍用無人機のコンセプト模型を初公開しました。

 三菱重工業といえば日本有数の防衛企業であり、特に航空分野においては国内の戦闘機関連の事業を担当しており、F-15戦闘機ではライセンス生産、F-2戦闘機ではアメリカとの共同開発と生産、そして最新鋭のF-35Aステルス戦闘機では国内での最終組立を担当しています。

 言うなれば「日の丸戦闘機の大黒柱」と形容できる同社が、これまでの事業とは異なる無人機のコンセプトを提案してきたことは、大変興味深いことだと筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は感じました。

 出展された無人機の模型は2種類あります。ひとつは「戦闘支援無人機コンセプト」と呼ばれるもので、見た目はパイロットが座るコクピットを無くした戦闘機のような形をしています。胴体下部にはミサイルなどの武装が搭載できるウェポンベイらしきモノも確認できました。

 もうひとつは「ARMDC-20X」という名前が付けられた無人機で、外見上は胴体が細長く巡航ミサイルのようなデザインをしていました。

 これら無人機は外見だけでなく、その運用方法もまったく異なる機体だそうです。

低価格使い捨て型と高性能再利用型

 三菱重工業の担当者によれば、これら無人機には明確な違いがあるといいます。

「『ARMDC-20X』はミサイル技術を転用した機体で、基本的にはミサイルのように使い捨て運用です。ただ、そのぶん大量生産して安く使うことを目標にしています。想定する運用手段は観測がメインで、有人機のセンサーの代わりです。名称の意味は『Affordable Rapid Prototype Missile Drone Concept』の頭文字で、和訳すると『早期に比較的安く提供できるミサイル技術をベースとした無人機のコンセプト』という意味になります」

「ARMDC-20X」の全長は5m程度で、展示された模型が実際の大きさになるそうです。胴体中央付近に小さな主翼があり、後方上部にはエンジン用の空気取り入れ口、後方にはエンジンノズルと外側に傾いた尾翼があります。また、先端下部にはセンサー窓らしき突起物があり、その形状はF-35「ライトニングII」戦闘機の機首下の電子光学センサーによく似ていました。

 使い捨て前提のこの無人機の場合、損耗を無視して偵察を行い、場合によっては撃墜されることで敵の状況を知ることもできるでしょう。レーダーに見えにくいステルス性や、センサーの高性能化した現代の戦場では、この様な使い捨て無人機が戦いを有利に進めるための有効な手段となるのかもしれません。

有人戦闘機の空の戦いの相棒となる無人機

 もう一方の無人機は「戦闘支援無人機コンセプト」と呼ばれるものでした。展示されていた模型は実機の10分1の大きさで、開発した場合は有人戦闘機と同等くらいのサイズになるそうです。

「この無人機は離着陸用の脚があり、地上の滑走路から繰り返し運用することを想定しています。ですから、『ARMDC-20X』と比べると比較的高性能となっており、運用は有人機からの指示に基づいて脅威を探知したり、機体に搭載したミサイルを発射したりします」(三菱重工業の担当者)

 現在、世界各国では有人機と連携して戦闘を行う無人戦闘機の開発が進められており、オーストラリアではMQ-28「ゴーストバット」、ロシアではS-70「オホートニク」などの無人機、アメリカでは「協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft)」という名称で複数の機体の開発が進められています。

 1機の有人戦闘機に対して、複数の無人戦闘機がチームを組んで戦うことで、少ない人員でより効率的に戦うことが可能になり、また、戦闘の危険なパートを無人機に担当させることで、パイロットの損耗も防ぐことができます。

 この「戦闘支援無人機コンセプト」も、そんな世界の無人戦闘機の流れに沿った三菱重工業の独自プロジェクトだといえるでしょう。

無人機のキモとなるAI開発はすでに進行中

 世界各国で開発が進む無人戦闘機ですが、その開発でキモとなるのは機体といったハードウェアではなく、それを制御するAI(人工知能)技術にあります。

 一般的な無人機は無線や衛星通信を使った遠隔操作が基本です。しかし、無人戦闘機となると、戦闘中の状況の変化が激しいため操作が遅延する遠隔操作は不向きです。そのため、機体内部のAIが制御を行い、有人機からの指示を基にして戦闘します。このように、AIで飛ぶ無人戦闘機は、周辺状況や脅威に応じて自機ですぐさま判断し続ける必要がありますが、その指針となるアルゴリズムの開発は一朝一夕で完成されるものではありません。

 三菱重工業の担当者はAI技術に関して次のように説明してくれました。

「無人機開発においてAIはもっとも重要な技術要素のひとつとして考えており、弊社としては10年以上に渡って開発を行っています。開発についてもエンジニアだけで行うのではなく、チーム内に自衛隊OBの元戦闘機パイロットもおります。またAIを社有の小さな機体に搭載して、飛行試験を行うといったことも社内で行っています」

 今回展示された模型は、三菱重工業が提案したコンセプト模型であり、これらがそのまま開発されることはないでしょう。しかし、三菱重工業は防衛装備庁から無人機とAI技術に関する業務を受注していることから、その具体的な成果は遠くない将来に見られるかもしれません。

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