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人口最少の県が「いちばん月に近い場所!?」日本唯一の研究拠点「何もない」イメージ覆るか?

乗りものニュース 2024年10月31日 17時12分

東京ビッグサイトで開催された「国際航空宇宙展2024」に鳥取県がブースを出していました。ハナシによると鳥取砂丘で月や宇宙の研究を進めようとしているとのこと。ひょっとしたら将来、観光地から宇宙産業の拠点へイメージを一新しているかもしれません。

ラクダで有名な観光地で宇宙開発

 鳥取砂丘といえば日本有数の海岸砂丘として有名な場所で、日本国内でありながらも砂漠の雰囲気とラクダに乗れることで有名な観光地です。そんな国内有数の砂丘地帯が、なんと月面宇宙開発の拠点として利用される動きがあるそうです。「砂丘」と「月面」という意外すぎる組み合わせのコラボレーションを生み出したのは「砂」です。

 2024年10月16日から18日にかけて東京ビッグサイトで開催された「国際航空宇宙展2024」に鳥取県がブース出展し、現在行っている鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」をPRしていました。

「ルナテラス」とは、鳥取砂丘の近郊に設けられた月面を模した試験場で、月面探査車をはじめとした宇宙で使用する機器の実証試験を行うことができるそうです。

 観光とラクダのイメージが強い鳥取砂丘が、宇宙開発を通じて月面とつながるというのは一般人にはなかなか思いつかない壮大なプロジェクトといえるでしょう。実は、鳥取県は夜空がきれいに見えることから「星取県」と自称して宇宙とのつながりをPRしており、前出のプロジェクトも宇宙開発のテストフィールドを開設することで、県内の宇宙産業育成と地域振興を目的としています。

 ただ、出展ブースにいた担当者の説明によると、プロジェクトのきっかけはかなり単純なものだったようです。

砂丘と月面の類似性は?

「ルナテラス」は鳥取砂丘の国立公園外にある鳥取大学乾燥地研究センターの敷地内にあり、0.5ヘクタールの広さに「平面」「斜面」「自由設計」(造成や掘削が可能)の3つのエリアがあります。

 月面の表面は「レゴリス」と呼ばれる砂で覆われており、その場所で使う月面探査車の試験を地球上で行う場合は、砂漠や荒野などが利用されています。たとえば、アメリカでいうとアリゾナ州の砂漠にあるブラックポイント・ラバフロー試験場が知られており、NASA(アメリカ航空宇宙局)の有人月面着陸計画「アルテミス」で使われる月面探査車の試験をここで行っています。

 国内ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)が相模原に宇宙探査実験棟という屋内実験施設を持っていますが、屋外型の試験場はこの「ルナテラス」が日本初になります。

 試験場として利用する以上はその類似性を科学的に証明する必要があり、そのために試験場開設前に「鳥取砂丘のデジタルデータ化プロジェクト」という砂丘の調査を実施。この調査では鳥取砂丘全体をスキャニングして3次元マップを作成し、砂自体も密度と粒度の試験を行っています。それらをアメリカのNASAが保有する月面データと比較し、最終的に鳥取砂丘と月面には類似性が高いという結論が得られたとのハナシでした。

 調査報告書には、月面のクレーターのような特殊な地形を除いたエリアを除けば「類似した地形的特徴や砂の強度を持っていることが確認できた」と記されており、鳥取砂丘と月面の環境が似ていることが確認されているそうです。

将来、鳥取県のイメージ変わるか?

「ルナテラス」は2023年7月にオープンしましたが、すでに多くの企業がここを利用しています。宇宙開発を専門に行うベンチャー企業だけでなく、大手ではタイヤメーカーのブリヂストンが月面探査車用のタイヤ「AirFree」の走行試験に使っています。

 現在、施設の利用料はとっていないそうで、かかるのは試験エリアの原状回復費用だけとのこと。ただ、利用条件として「月面探査に係る実証実験等のためにフィールドを利用」「鳥取県と連携協定を締結するなどにより本県の産業振興、地域振興に繋がる取組を連携して行おうとする企業・研究機関等」などがあるため、それらを鑑みると宇宙開発と地域振興に関連した企業に限定されるようです。

 鳥取県では、「ルナテラス」以外にも宇宙に関連した取り組みを進めており、すでに今年(2024年)6月には「宇宙産業創出に向けたロードマップ」を発表するなどして、県全体で複合的に宇宙関連産業の育成を行っていく方針を打ち出しています。

 将来、この地域で宇宙産業が発展していった場合、ひょっとしたら鳥取砂丘にはこれまでの「砂」と「ラクダ」のイメージの他に、「月面」と「宇宙」が加わって、観光地としても新たな進化を遂げるかもしれません。

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