三重県で建設中の国道1号「北勢バイパス」がまもなく延伸します。将来は海側の2大国道に次ぐ“第三の南北軸”となる計画ですが、いまはまだブツ切り状態。延伸でどう便利になるのでしょうか。
まもなく延伸「北勢バイパス」
三重県北部で整備が進む国道1号「北勢バイパス」が2024年度中にも延伸します。10月下旬には報道陣向けに延伸区間の現場公開も行われました。
北勢バイパスは、伊勢湾岸道のみえ川越ICから、同道の側道としてみえ朝日IC付近まで進み、そこから南西へ延びる国道1号のバイパスです。現在は8.5kmが開通済みで、2024年度にはさらに2工区の4.1kmが延伸開通する予定です。
将来的には鈴鹿市まで延び、そこから松阪市に至る国道23号「中勢バイパス」へ接続することで、慢性的に混雑している海側の国道23号、1号の現道を代替する“第三の南北幹線”となります。
また、海側の2大国道が大地震発生時に津波で浸水すると予測されているため、災害に強い道路を山側に整備する点も重要視されています。
ブツ切りの状態で効果はあるのか?
とはいえ、そのような存在感を発揮するのは、全線がつながってこそ。現状では四日市市の山側の市道で途切れています。
その山を「坂部トンネル」で抜け、四日市市三重地区の住宅街の麓を通り、国道477号バイパスにT字で接続するのが、今回の延伸区間です。国道477号は近鉄湯の山線沿いの東西道路で、四日市の市街地から東名阪道(四日市IC)、新名神(菰野IC)を連絡しています。
現状の北勢バイパスの利用について、国土交通省の北勢国道事務所は、「北勢バイパスを利用して四日市東ICから東名阪道を利用する交通と、『キオクシア』の工場がある四日市ハイテク工業団地へのアクセス路として主に使われております」と話します。
延伸区間については、同工業団地への新たな通勤ルートを形成することで、交通の円滑化が図られるとしています。
とにかくトラックだらけの湾岸
重要港湾である四日市港を抱える同市海側の国道23号・1号は、実際に走ってみると大型トラックの多さに目を見張ります。渋滞も慢性的ですが、その一因として、市街地から「高速道路までが遠い」という点が挙げられるでしょう。
三重県を通る高速道路の東名阪道、そして新名神とも、かなり山側を通っており、高速道路が直接的に海側の市街地の混雑を緩和するには至っていません。四日市市だけでなく、南の鈴鹿市や津市などでも同様のことが言えます。
そうしたこともあり、三重県では海側の市街地と山側の高速道路を結ぶ道路が整備されてきました。北勢バイパスに接続して東名阪道の四日市東ICに通じる県道上海老茂福線(元有料道路)や、北勢バイパスの新たな終点となる国道477号バイパスも同様で、いずれも4車線(一部2車線)の快走路となっています。
北勢バイパスは全線つながらない状態でも、こうした“東西軸”の道路と組み合わせることで、市街地の国道23号・1号を避けるルートを形成することになりそうです。
今回の延伸区間のさらに先、北勢バイパス3工区8.4kmについては、調査設計の段階であり、ほぼ影も形もない状態です。開通はまだまだ先ですが、ここまでできれば、国道1号現道の渋滞損失時間は、整備前(2010年)と比べ“約7割”も削減されるといいます。
ちなみに、北勢バイパスは伊勢湾岸道のみえ朝日IC付近も通っていますが、同ICは出入り方向に制限がある“ハーフIC”であり、北勢バイパスからICへの経路がやや複雑です。みえ朝日ICが“フル化”すれば海側からの高速道路利用もしやすくなると考えられますが、フル化について北勢国道事務所は「北勢バイパスや周辺道路の交通状況より必要性に応じて検討」するとしました。