ロシアの最新戦闘機Su-57が中国のエアショーに出展。経済制裁の影響が色濃くでた“劣化モデル”を披露したロシアの意図は何だったのでしょうか。そうしたなかでも輸出契約を取り付けた模様です。
ロシア自慢のステルス戦闘機が中国に初登場…オイなんだコレwww
ロシア航空宇宙軍のSu-57戦闘機が、「中国国際航空宇宙博覧会」(エアショーチャイナ)に参加するため2024年11月4日、中国に飛来しました。Su-57が中国に姿を現したこと、さらに言えばロシア国外で開催されたエアショーへの参加は、今回が初となります。
Su-57は航空自衛隊も運用しているF-35戦闘機や、アメリカ空軍が運用しているF-22などと同じく、高いステルス性能と飛行性能を併せ持ち、高度な電子機器を搭載する第5世代戦闘機です。
中国はロシアからライセンス権を購入したSi-27「フランカー」戦闘機の生産で、近代的な戦闘機の開発・製造技術を習得したと言っても過言ではありませんし、2015年にはフランカーシリーズの究極進化型とでも言うべきSu-35を購入して、空軍力の強化に務めています。
ロシアはSu-57の輸出仕様機「Su-57E」を輸出したがっていますが、ウクライナへ侵攻した2022年以降、パリエアショーなどヨーロッパの主要エアショーから“出禁”となっているため、Su-57Eのアピールも思うようにはできていません。
そのためエアショーチャイナへのSu-57の参加は輸出、それも中国への輸出のアピールを狙ったもの……とも思えますが、そういうわけでもないようです。
というのも、中国のSNS「微博」(ウェイボー)などでは、ショーの開幕に先立って行われたSu-57の地上展示を見た中国の人々から、嘲笑の声さえ上がっている始末なのです。これはいったいどうしたことなのでしょうか。
ボルト見えてるし胴体にスキマあるし……
ロシア航空宇宙軍はエアショーチャイナに、機体番号「054」と「057」の2機のSu-57を参加させています。「054」と「057」は製造番号から2010年代に製造された試作機であることが確認されています。
「微博」などには地上展示を間近で見学した中国の方々が撮影した、Su-57「057」の動画がアップされていますが、「057」は試作機ということもあってか、胴体パネルを接合するボルトがあらわになっているほか、機体パネルの接合部の隙間が確認できるなど、ステルス性能を重視した第5世代戦闘機とは思えない仕上がりに。中国の人からSNSで嘲笑されても、いたし方ない仕上がりになっています。
他方、中国空軍は既に第5世代戦闘機であるJ-20(殲20)を300機近く実戦配備しており、今回のエアショーチャイナでは、Su-57の試作機はもちろんのこと、J-20よりもステルス性能が高そうなデザインのJ-35(殲35)もデビューさせています。Su-57の試作機を見せられたところで、今さらこんなモノいらないよ、という話になるのが関の山でしょう。
もっともロシアも、中国への兵器輸出や兵器技術の移転には、中国の技術盗用を嫌って慎重になっています。真偽のほどは定かではありませんが、前に述べたSu-35の輸出にあたっては、中国が技術盗を行った場合に備えて、巨額の違約金が設定されていたという話もあります。
このような状況を鑑みれば、仮に中国がSu-57Eの輸出を求めたとしても、輸出が認められる可能性は皆無だったのではないかと思われます。
ちゃっかり成果は挙げた!?
中国にSu-57Eが輸出される可能性が皆無に近いにもかかわらず、ロシア航空宇宙軍がSu-57をエアショーチャイナに参加させた最大の理由は、「ロシアは決して孤立していない」というアピールのためだったと筆者(竹内 修;軍事ジャーナリスト)はおもいます。
ロシアはウクライナへの侵攻後、日本やアメリカなどの自由主義陣営諸国との関係が悪化しており、ベトナムやインドのように比較的友好的な国々とも、必ずしも上手くいっているわけではありません。
そうしたなかで中国はロシアと友好的な関係を保ち続けています。Su-57Eの中国への輸出はなく、Su-57の試作機を中国の人々に嘲笑されたとしても、Su-57がロシア以外で開催されたエアショーに初めて参加したという事実は中国人のプライドをくすぐるはずですし、中国との良好な関係をアピールする絶好の機会になるはずです。
また、エアショーチャイナにはアフリカ諸国や中東諸国などから多数の高官が訪れます。そこではアメリカなどの目を気にすることなく、Su-57Eの商談ができるものと思われます。
その甲斐もあってか、ロシアで兵器輸出を担当するロスオボロンエクスポルトは、エアショーチャイナの会場で、Su-57Eの輸出契約を締結したと発表しています。輸出国や納期などは一切明らかにされていませんが、実現すればSu-57の輸出は初となります。
ただ、ロシア航空宇宙軍向けのSu-57も、自由主義陣営諸国の経済制裁で、電子部品などの入手が困難になり、20機から30機程度を量産したところでストップしてしまったとの報道もあります。本当にSu-57Eの輸出が実現するのか、疑問視する声も少なくはありません。