かつての名門軍用機メーカーマクドネル社が唯一、民間向けも視野に入れて実用化を進めた飛行機が存在します。この機体はなぜ生まれたのでしょうか。
ビジネスジェットにしちゃ異形…?
かつてアメリカにあった航空機メーカー、マクドネル社は、大ヒット戦闘機であるF-4「ファントムII」の開発を手掛けるなど、名門軍用機メーカーだったことで知られています。しかし同社が民間向けも視野に入れて実用化を進めた飛行機が1タイプだけ存在します。それが「マクドネル119/220」です。この機体はなぜ生まれたのでしょうか。
この「マクドネル119/220」は、全長約20m、全幅約18mの大きさで、いわゆる「ビジネスジェット」に分類されます。外観上の特徴はエンジン配置。ビジネス機サイズにもかかわらず、左右それぞれ2機ずつのターボ・ジェット・エンジンを主翼の下に吊り下げる、大型旅客機のような見た目が特徴です。
とはいうものの、実はこの機体、最初から完全なる民間向けモデルとして開発されたものではありませんでした。アメリカ空軍は、旅客だけでなく多用途に使用できる機体「UCX」の開発を、当時ジェット軍用機の開発に成功していたマクドネル社と、ロッキード社に依頼しました。ここでマクドネル社の掲げた設計案が、後年のマクドネル119/220です。
ただ空軍は最終的に、ロッキード社の案を採用する決定を下しました。そこでマクドネル社は、軍用では不採用となってしまったこの機体デザインを用いて、民間向けモデルとして実用化する方針を取ります。その結果、マクドネル119/220はアメリカの最大手、パンアメリカン航空(パンナム)からの暫定受注も獲得したほか、実用化に不可欠な認証ともいえるFAA(連邦航空局)の「型式証明」の取得も完了しています。
しかしながら、最終的にパンナムが競合機の導入を決定し、マクドネル119/220は失注に。これに伴って同モデルは、機体が量産されないまま、開発終了という結果になりました。
なお、この機の名称ですが、当初マクドネル社は「119」として開発を開始。民間機として開発続行することに伴い型式名を「220」に変更しています。