米本土以外では唯一、常駐の配備先だった韓国からもA-10対地攻撃機が間もなく退役します。日本の航空祭に時折飛来していたA-10は、ほぼすべて在韓米軍所属の機体だったため、日本で見られるのももうすぐ終わりそうです。
エンタメ世界でも「大活躍」だった有名攻撃機
アメリカ空軍は2024年11月、韓国の烏山空軍基地に所属するA-10「サンダーボルトII」が、来年1月頃から段階的に退役すると発表しました。同基地には24機のA-10が配備されていますが、これらは在韓米軍だけでなく、アメリカ本土以外で唯一の海外基地を拠点とするA-10部隊になります。
A-10は対地攻撃に特化した軍用機として開発されました。機首部分には30mmGAU-8「アヴェンジャー」ガトリング砲を搭載し、主翼下のパイロンにはロケット弾から対地ミサイル、誘導爆弾まで多種多様な兵装を搭載することが可能で、対地攻撃の中でも特に戦車をはじめとした戦闘車両に対して高い戦闘能力を誇ります。
また、その特徴的な外見から、映画やマンガなどにもたびたび登場しており、代表的なところで2007年公開の映画『トランスフォーマー』や2009年公開の『ターミネーター4』などが挙げられます。また、戦闘機を題材にした往年の傑作マンガ『エリア88』では主要キャラの愛機として長きにわたって活躍しています。これらを鑑みると、攻撃機という地味なカテゴリーの機体ながら、マニアだけでなく一般人のあいだでも比較的知られた存在だといえるでしょう。
隣国の韓国に配備されていたため、日本の航空祭にもA-10はよく飛来しており、イベント中にはその人気を裏付けるように多くの見学者が集まっていました。しかし、前述したように今回、在韓米軍からA-10の退役が決まったため、今後は日本で同機を見る機会はほぼなくなるはずです。
世界の空から消えるのも間もなくか?
じつはアメリカ空軍は今回の在韓米軍の機体だけでなく、すべてのA-10を今後数年以内に退役させる予定です。
A-10は湾岸戦争やアフガニスタン紛争、イラク戦争で多くの戦果を上げた攻撃機です。しかし、対地攻撃に特化した設計のため飛行速度が遅く、敵戦闘機や対空ミサイルなどの迎撃には脆弱です。
今後発生するかもしれないロシアや中国といった大国の正規部隊との戦闘では、無数の防空兵器による迎撃が想定され、そのような状況下ではA-10が攻撃機としての能力を発揮できないだけでなく、機体が無事に飛び続けることすら難しくなると考えられています。
こうしたことからアメリカ空軍ではA-10を完全退役させて、その予算や人員を最新ステルス戦闘機F-35「ライトニングII」や新しい装備品の調達・運用に回すことを決めました。退役の具体的なスケジュールはまだ発表されていませんが、アメリカ空軍省の長官は連邦議会の公聴会において「2028年から2029年のあいだ」と説明していることから、2030年までにはアメリカ空軍からすべてのA-10が退役すると思われます。
アメリカ国内メディアの報道によると、退役後のA-10を他国に輸出して活用する案も検討されており、2030年以降もこの機体が飛び続ける可能性もゼロではないようです。しかし、日本周辺で活動するA-10飛行隊がなくなるのは決定事項であるため、まもなく日本でも見られなくなるのは間違いないようです。