JR東日本のチケットレスサービス「新幹線eチケット」は、どれほど「お得」なのでしょうか。実際に乗った区間で比較すると、確かに指定席だと従来の紙のきっぷよりお得でしたが、自由席は事情が違いました。
「eチケ」はどんな場合でも安いのか?
「新幹線eチケット」(eチケ)は、チケットレスでおトクに乗れることが多いJR東日本のサービスです。しかし、「東京都区内」など特定都区市内制度の適用がなくてもメリットがあるのでしょうか。そして、すべてのケースにおいて安くなるのでしょうか。先日乗車したJR上越新幹線の燕三条→上野→西日暮里(山手線)の経路で、比較してみます。
なお、決済に使うクレジットカードや乗車券の種類(紙のきっぷ・カードタイプのSuica・モバイルSuica)でポイントの還元率が異なり、非常に複雑になるため、今回は次の条件に絞って見ていきます。
・決済はビューカード以外のクレジットカードを使用
・モバイルSuicaを使用
・購入や乗車で付与されるJREポイントは考慮する
・クレジットカードのポイント付与は考慮しない
今回、割引率の高い「トクだ値1」「トクだ値14」はすでに売り切れで、選択肢は通常料金のみ。通常期に上越新幹線の燕三条から指定席を利用し上野で山手線に乗り換え、西日暮里まで移動する場合の値段と付与されるJREポイントは次のとおりです。
・券売機で購入する紙のきっぷ:9230円(ポイント付与なし)
・eチケ:9030円+山手線146円-180ポイント-2ポイント=実質8994円【安】
紙のきっぷは、行き先が上野でも西日暮里でも、東京都区内の駅なら値段は同じです。一方、eチケは新幹線の区間だけの利用となります。その代わり「所定の指定席特急料金から一律200円引き」と案内されており、この割引で上野→西日暮里の146円をカバーできます。さらに指定席利用なので、発売額の9030円に対して2%の180ポイント、山手線はモバイルSuicaで乗車するため50円につき1ポイント付与の「在来線乗車ポイント」2ポイントを獲得できます。
自由席だと事情がガラリと変わる
しかし、自由席を利用する場合はまったく違う結果となります。
・券売機で購入する紙のきっぷ:8700円(ポイント付与なし)
・eチケ:8700円+146円-2ポイント=実質8844円
・タッチでGo!新幹線:8700円+146円-174ポイント-2ポイント=実質8670円【安】
自由席はeチケで購入してもポイント付与の対象外となるため、獲得できるのは上野→西日暮里の146円に対する「在来線乗車ポイント」のみです。さらに値段も紙のきっぷと同じなので、トータルでは紙のきっぷより高くつきます。
ここで利用すべきは「タッチでGo!新幹線」です。これは交通系ICカードの残額で新幹線の自由席に乗車できるもので、登録したSuicaで乗ればJREポイントも付与されます。モバイルSuicaで乗車した場合、50円ごとに1ポイント付与なので、8700円では174ポイントが付与されます。還元率は指定席のeチケと同じ2%です。
ただし、指定席のeチケのように、紙のきっぷより200円引きという仕組みはないため、ポイント還元を踏まえた実質の値段でようやく紙のきっぷと同等の額になります。
注意したいのは、「タッチでGo!新幹線」はeチケとは違う商品であることです。例えばeチケで燕三条→上野を検索すると、自由席のeチケも表示されますが、これはあくまで自由席をeチケで購入するだけのため、ポイントの付与はありません。
なんだか紛らわしく感じてしまいますが、この燕三条→上野→西日暮里の場合、指定席は「eチケを購入」、自由席は「タッチでGo!」という棲み分けになります。なお、「タッチでGo!新幹線」の利用には事前に設定が必要です。
今回の経路では
・指定席:新幹線eチケット
・自由席:タッチでGo!新幹線
の利用が安価という結果になりましたが、降車駅によっては紙のきっぷの「東京都区内」を活用した方が安くなるケースもあるため、とにかく安くしたいなら、場面に応じた使い分けをがんばって研究することになります。ちなみに私(和田 稔:鉄道ライター)は、クレジットカードがビューカードではないため、フルの還元率にならず、モバイルSuicaのオートチャージも設定できません……。