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夢の「駅直結物件」どうすれば叶うのか? 地下通路とビルをつなぐ“マイ出入口”の造り方

乗りものニュース 2025年1月14日 7時12分

地下鉄駅の通路の一部は、民間のビルとつながっています。「駅直結」をうたって資産価値を上げるために、ビルを地下通路に接続させるためには、どうすればよいのでしょうか。

地下駅の「請願口」を設置するには?

 東京の地下には大規模な地下道ネットワークが広がっています。歩いている時は意識しませんが、これらは連続的なひとつの地下道ではなく、多くの場合さまざまな地下通路が接続する形で構成されています。

 例えば新宿駅東口の地下通路は、東京メトロ丸ノ内線新宿駅から新宿三丁目駅に続く「メトロプロムナード」、花園神社付近からタカシマヤタイムズスクエア付近まで続く全長800mの副都心線地下通路、都営新宿線のコンコースから構成され、西武新宿駅方面につながる新宿サブナード株式会社運営の「新宿サブナード」、JR新宿駅南口付近に伸びる国土交通省・東京都の「新宿東南口地下歩道」が接続しています。

 公共的な性格の強い地下道ですが、一方で多数の民間ビルが地下通路に直結しています。雨にぬれずに移動できる直結口は営業上、非常に有利な設備であり、ビルの資産価値を向上させますが、どのような手続きをすれば設置できるのでしょうか。

 近接ビルなど外部事業者からの要望で設置される連絡出入口を「請願出入口」といいます。日本初の地下鉄、東京地下鉄道(現在の銀座線新橋~浅草間)が1930年代に上野から日本橋、銀座へと延伸する過程で、デパートとコンコースを直結することで駅の建設費を負担してもらったように、実は古くからある手法です。

 なお、三越と直結する三越前駅、上野松坂屋と直結する上野広小路駅は、出入口どころかデパートのために造った駅です。このように地域や周辺企業が費用を負担し設置する駅を「請願駅」といい、近年では東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅(森ビル)、東武東上線のみなみ寄居駅(本田技研工業)、JR京葉線の幕張豊砂駅(千葉県、千葉市、イオンモール)などの事例があります。

ビルだけが得する出入口は造れない

 話を「請願口」に戻しましょう。道路下に設置された地下通路は、公共的な目的で道路管理者(国道なら国、都道なら都)から「借りた(占用許可)」空間に設置した施設です。そのためビル事業者が費用を負担したからといって、ビル事業者だけが利益を受ける地下通路は造れません。

 東京メトロが発行した『帝都高速度交通営団 工務部のあゆみ』には、営団は近接ビル事業者からの要望に対し、「当該駅の既設出入口が利便性に欠けており、要望のビル出入口を設置することが公共の利便に寄与する」ことを可否の判断基準としていたと記されています。この方針は基本的に今も変わっていないと思われます。

「公共の利便」は、「地下鉄コンコースからビル用地内を通過して地上に出る地下鉄専用出入口を確保し、その途中からビル内に連絡できる構造」とすることで確保するとあり、受益の代償として事務経費を含め工事にかかるすべての費用をビル側に請求しました。

 なお、請願口は地下鉄の壁に穴を開けてビルの地下と接続するものから、新宿三丁目駅E8出入口(高島屋新宿店地下1階に直結)のように、駅通路そのものをビル付近まで伸ばす大規模なものまでさまざまで、負担すべき費用もまちまちです。

 請願口は「売り手市場」だったと言えますが、1980年代後半以降は関係性が変わってきます。バブル景気でビルの建設が活発になり、請願口が増加の一途をたどった一方、道路管理者や警察は路上の視認性向上を理由に、歩道上への出入口設置を認めず、既存出入口についても撤去を求めるようになります。

 しかし地価が高騰する中、都心一等地の用地取得は困難です。2000年代に入るとバリアフリー化でエレベーター設置が求められたため、ビルとの連携強化が必要になります。現在では地下鉄出入口はビルと一体化しているのが当たり前の光景になりました。

 一方、他社財産である請願口の存在は新たな問題となっています。東京メトロは荒川決壊などの大規模浸水対策として、出入口、非常口、換気口、坑口など、地上と地下を結ぶさまざまな「穴」をふさいでいますが、出入口全体の3分の1を占める請願口の半分で対策が必要なのです。

 止水板のかさ上げから、階段の密閉まで想定される浸水ごとに必要な対策はさまざまですが、いずれにせよ多額の費用がかかります。一か所でも穴があれば破綻するのが浸水対策ですから、近接ビル事業者任せとするわけにもいかないのです。地下鉄とまちをつなぐ請願口の変遷は、時代を反映していると言えるのかもしれません。

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