昨今「アドベンチャーバイク」というカテゴリーが人気となっています。ワインディングからオフロードまでどんな道でも走れる走破性と、二輪車としては比較的優れた積載能力を兼ね備えている点が評価されているようです。
たとえるなら「オフロードバイク+ツアラー÷2」?
オートバイにそれほど興味ない人でも「オフロードバイク」といえば、ある程度イメージがつくのではないでしょうか。多くの人が想像するのは、舗装路はもちろんのこと、未舗装路、場合によっては泥道や雪道、砂漠やジャングルなども走れる二輪車というのが定番でしょう。
このような優れた悪路走破性が魅力のオフロードバイクですが、エンジン特性や燃料タンクの容量、シート形状や積載性などを鑑みると、いわゆる「ツアラー」と呼ばれるクルージング用のロードスポーツモデルと比べた場合、長距離走行には不向きな点があるのも事実です。
そこで、長距離走行も可能なオフロードバイクとして登場したのが「アドベンチャー」と呼ばれる車種になります。
そのルーツは、世界一過酷なレースとして名を馳せた「パリ・ダカールラリー(現ダカール・ラリー)」で使用されたワークスマシンにあります。
「パリダカ」の略称で日本でも知られるこのレースに対応するためのモデルとして、二輪各社では、砂漠を越えるための大容量タンクや夜間走行用の大型ライト、大型のカウルや長距離走行用のシートなどの特別装備を備えたラリー専用車を開発しましたが、そこから派生したレプリカモデルが、1980年代後半に相次いで各社から販売されます。
こうして、ホンダの「アフリカツインXRV650/750」、ヤマハの「XTZ750スーパーテネレ」、スズキのD「R750/800S」、BMWの「R100GS」など、アドベンチャーバイクの原点ともいえるモデルが誕生しました。
進化するアドベンチャーバイク
大型のオフロードバイクは「ビッグオフ」と呼ばれていましたが、次第に長距離ツーリング向けの装備が充実し、旅バイクとしての性格が強くなっていきます。高速走行から身体の負担を軽減する大型スクリーンに加え、大容量のトップケースやパニアケースを装備できる積載性を備えるようになります。
また近年では、電子制御サスペンションにクルーズコントロール、トルクコントロールなどの電子制御も搭載されるようになったことで、オンからオフまで道を選ばずに長距離を走れる「冒険するバイク」アドベンチャーバイクとして定着していきました。
すでに誕生から30年以上経つアドベンチャーバイクですが、大別するとフロントに19~21インチのスポークホイール&ブロックタイヤを装備し、未舗装路の走破性を重視したオフロード寄りのモデルと、フロントに17~19インチのキャストホイールを備え、ロードタイヤを装備した剛性重視のオンロード寄りのモデルに分かれます。
また、海外では大排気量のアドベンチャーバイクが人気ですが、日本では普通自動二輪免許で乗れる400cc以下のモデルも人気です。ちなみに、かつては250ccのオフロードバイクに大容量タンクと大型ライトを装備した長距離ツーリング仕様も人気でした。
日本で人気の小排気量アドベンチャー
筆者(石津祐介:ライター/写真家)もオートバイに乗っていますが、長距離ツーリングが好きなため、以前はヤマハのオフロードバイク、TT250Rの長距離ツーリングモデル「TT250R Raid」を所有しており、現在はスズキのアドベンチャーモデル「Vストローム250」を所有しています。このオンロード寄りのアドベンチャーバイクは、40代以上のいわゆる「リターンライダー」に大人気で、ツーリングに行くと必ずと言えるほどよく見かけるバイクです。
なお、筆者が思うに、、最近のアドベンチャー人気は、「終(つい)のバイク」として選ぶユーザー層が多いからではないでしょうか。若い頃は、スポーツバイクやオフロードバイクなど色々なバイクに乗ったけど、最後に乗るバイクはツーリングもキャンプもこなせて、どこでも走れるユーティリティー性が高いバイクがいいと、アドベンチャーを選ぶライダーも多くいます。
アドベンチャーバイクは、ツーリングとキャンプや登山などアウトドアでのアクティビティを楽しんだり、その様子をSNSにアップしたり、またカスタムを楽しんだりと、バイクを中心に中高年の趣味嗜好にジャストフィットしているからこそ、人気を集めているのではないでしょうか。
跨れば冒険心をかき立てる、そんな魅力がアドベンチャーにはあります。どこまでもどんな道でも走ってくれる旅の相棒、たとえるならそういったバイクです。2025年は各メーカーから新モデルも発売も予定されているため、個人的にも注目したいジャンルの1つです。