神社は日本全国に約8万8000社以上あるといわれており、それぞれ「八百万(やおよろず)の神」が祀られています。その多くは交通安全を祈願していますが、さらに細かく空の安全祈願や殉職者の慰霊を行っている神社もあります。
都心の一等地にある航空神社
神社は全国に数多くありますが、飛行機に関する神社があるのをご存じでしょうか。歴史の中で飛行機が誕生し、普及・発展するに伴い航空事故も何度となく起きてきました。そういった殉職者を慰霊するためや、航空安全を祈願するため、各地に「航空神社」と名の付く神社が創建されています。
今回は、なかでも代表的な航空神社を5つ集めてみました。
新橋のビル屋上に鎮座する航空神社
一般財団法人 日本航空協会が所有する航空会館(東京都港区)の屋上には、そのものズバリの「航空神社」があります。ここは都会のビルの屋上にある珍しい神社ですが、日本航空協会の前身である帝国飛行協会の理事会が1931(昭和6)年、明治神宮造営の残木を拝受して創建されました。
創建当初は航空殉職者を祀っていましたが、のちに航空功労者も合祀されるようになり、1982(昭和57)年以降は祭神慰霊の神社から航空平安祈願の神社へと転換しています。「空の安全」を願うことから「落ちない」という縁起を担いで、受験生や就活生にも人気だといいます。
羽田空港ターミナル内にある航空神社
羽田空港の第1旅客ターミナル内にあるのが「羽田航空神社」です。室内に設けられた珍しい神社ですが、前述した航空会館屋上の航空神社から、1963(昭和38)年に旧ターミナルの屋上送迎デッキに分霊される形で創建されました。それから30年後の1993(平成5)年に、第1ターミナルの増改築に伴い建物内に移設されています。ここは場所柄、航空会社のクルーや乗客にも人気の神社です。
歴史に翻弄された航空神社
埼玉県所沢市の北野天神社にも航空神社はあります。ここは元々、旧日本陸軍の所沢飛行場にあった「航空神社」が由来です。1937(昭和12)年に航空殉職者を祀るため、創建されました。翌1938(昭和13)年には、より郊外の豊岡町(現在の入間市豊岡)に陸軍航空士官学校(現在の航空自衛隊入間基地)が開設されたことに伴い、そちらに遷座されます。
第二次世界大戦後、航空士官学校がアメリカ軍に接収されジョンソン基地となったため、埼玉県所沢市の北野天神社の境内に遷座されました。後に奈良の航空自衛隊幹部学校(奈良基地)と、返還・新設された入間基地に分霊されますが、2024(令和6)年に再び北野天神社に奉遷されています。
関西にはヘリコプターが鎮座する神社も
日本で初めて空飛んだ軍人にちなんだ神社が埼玉県にあります。
航空発祥の地、所沢に鎮座する航空神社
前出の北野天神社式内の航空神社と同じく、埼玉県所沢市にあるのが「所澤航空神社」です。こちらは所澤神明社の敷地内で、正式には鳥船神社(とりふねじんじゃ)といい、徳川大尉の初飛行から100年目を迎えたのを記念して、2011(平成23)年に創建されました。
由来は、1911(明治44)年、所沢に飛行場が造られ、徳川好敏大尉によるアンリ・ファルマン機での初飛行が行われた際、その前日に大尉が所澤神明社を参詣したと伝えられているからです。
狛犬の代わりにヘリコプターが鎮座する航空神社
最後は大阪に目を転じてみましょう。大阪府泉佐野市には、関西国際空港を建設する際に創建された「泉州航空神社」があります。ここは、正しくは泉州磐船神社といい、1983(昭和58)年に大阪府交野市の磐船神社から分霊され、航空安全と旅行安全を願って創建されました。
本殿には、狛犬の代わりに本田航空から寄贈された川崎ベル47G-2小型ヘリコプターの実機が展示されています。また、境内の地下には「航空博物館」があり、飛行機のプロペラや計器、装備品など航空機関連の資料約4000点が展示されています。ちなみに入場は無料です。
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日本神話には天界から神々が降臨する話があり、その際に乗っていた船「天磐船(あまのいわふね)」や「天鳥船(あめのとりふね)」に関する神々を、航空安全の御利益がある神様として祀っています。また航空事故の殉職者を合祀する神社も多くあります。
航空神社も、航空機という新しい技術と共に創建され、それに関わる人々の拠り所となりました。飛行機好き、航空ファンなら、一度これらの神社に足を運んでみてはいかがでしょうか。
※一部修正しました(12月29日13時55分)。