パイロットを空港などで見かける際、冬でも半袖のワイシャツを着ているのを見かけることがあります。「操縦室は気温が一定だから」あるいは「計器のスイッチ類に袖口が触れないようにするため」といった説もありますが、本当でしょうか。
昔は「半袖ワイシャツ」だけだった?
航空会社のパイロットを空港などで見かける際、冬でも半袖のワイシャツを着ているのを見かけることがあります。これには、「操縦室は気温が一定だから」あるいは「計器のスイッチ類に袖口が触れないようにするため」といった説もありますが、本当でしょうか。
もし冬に半袖姿のパイロットを見かけたのが、成田空港や羽田空港の国際線ロビーであれば、東南アジアや中東、南半球の豪州など、日本は冬でも気温の高い国への便もあるため――そんな推測ができるかもしれません。しかし、半袖シャツ姿のパイロットを冬の国内線で見かけることも珍しくないのです。
そこで、筆者の知り合いの元機長へ、実際に国内線の乗務でも半袖姿のパイロットは多いかを尋ねてみました。
回答は「半袖を着るか長袖かは好き好きで、本人のまったくの好み」。特に多いわけではないということでした。元機長自身も冬は長袖のワイシャツを着ることが多かったそうです。
特に、往年のプロペラ機YS-11などでは長袖を着ることが多かったそうです。YS-11はジェット旅客機と異なり、空調がさほど効かず操縦室も寒かったそうです。
そうした機種による暑い・寒いの違いはあったとしても、空港では昔から半袖姿のパイロットを見かけるのはなぜでしょうか。「それはこういうことかもしれません」と、元機長はある理由を教えてくれました。
同氏は、もうずいぶん以前のことと断ったうえで、「かつて勤めていた航空会社は、国内線の運航が主体でしたが、支給するワイシャツが半袖でした」と話しました。
スイッチ類に引っかからないように「半袖」はホント?
制服は会社の貸与規定により、元機長の勤めていた航空会社では1年間に数枚が支給されました。なぜ半袖のみだったのかは今も分からないそうですが、その後の労使交渉により長袖も支給されるようになったとのこと。筆者が記憶しているのは、この時代のことだったのでしょう。
なお、乗務に着るワイシャツは長袖でも半袖でも構わないし、「パイロットの印」のひとつである肩章が無くても良いそうです。半袖か長袖のどちらにしようか考えるのは、国内線では極端な南方面、北方面への便くらいであり、乗務中に腕まくりしても問題はないとのことでした。現代のジェット旅客機は操縦室の空調も効いているので寒さを気にすることもなく、そのほかの制服の着用方法に細かい決まりはないそうです。
そうなると気になるのは、スイッチ類に引っかかるのを防ぐためにパイロットは半袖が多いという「説」です。これについては、元機長の答えは「そんなことはありません」と明確に否定しました。
どうして、スイッチ類の操作に結びついたかは謎ですが、元機長の答えは「制服のジャケット自体が長袖です。『制服を着て操縦してはいけない』決まりはありませんし、昔から上着を着て操縦しているパイロットもいる」でした。
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