渋谷駅大規模再開発事業は、JR渋谷駅西口の旧東急東横店西館と南館の解体が進み、駅の再開発も大詰めとなっています。2024年の暮れ、その現場にはまるで“古代遺跡”のような光景が広がっています。
再開発始動から12年
渋谷駅の再開発事業は、駅周辺街区も含めて100年に一度と呼ばれるほどの大規模事業です。戦前から戦後にかけて増設された駅の複雑な構造とその老朽化、戦後の復興から次々と建てられたビルの老朽化、防災面の脆弱さが喫緊の課題となり、駅周辺は2005(平成17)年に政府の「都市再生緊急整備地域」に指定され、大規模再開発事業がスタートしました。
渋谷駅の再開発は、2012(平成24)年の複合施設「渋谷ヒカリエ」開業後、本格的に始動しました。東急東横線の高架ホームが地下化されたことによって、跡地には高層ビルの「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア東棟」が開業しました。
駅前では、西口のバスターミナル向かいにあった東急プラザが解体され、複合施設「渋谷フクラス」が開業。さらに、東急東横店西館ビル内にあった東京メトロ銀座線ホームは、「渋谷ヒカリエ」側へ移設されました。
渋谷駅の再開発工事は、小刻みに動線が変更になったり仮設の通路であったりと、利用者にとってはいつまで工事をするのかと疑問に感じてしまいます。工事は極力、列車などを止めずに行われ、おのずと時間がかかってしまうのです。それでも線路とホームの移設、線路の嵩上げなどを実施した際は、JR山手線を止めざるを得ませんでした。
利用者はいましばらくの辛抱ですが、実は駅本体の工事は、そろそろ後半となってきました。大きく残っている箇所は、東急東横店西館と南館の解体、「渋谷スクランブルスクエア」第II期工事の「渋谷スクランブルスクエア」中央棟・西棟、「渋谷駅橋上駅舎」の建設です。
2024年7月には国道246号を挟んだ南側に、新南口改札がオープンしました。橋上駅舎はそれとは別で、中央棟3階に整備されて、北改札と南改札へ分かれます。「渋谷スクランブルスクエア」第II期工事は、2027年度の完成を目指しています。
そんなところに山手線が!? 今だけの光景とは
2棟の解体は4年という長い年月をかけて行われています。2020年に閉館した東急東横店西館の解体は、銀座線の回送線路を生かしたまま、建物上部からスライスするように行われ、全体の撤去はほぼ終了しています。
この解体の過程で回送線路を北側へずらして仮線となり、2024年12月現在は山手線を跨ぐ既存橋梁の撤去と、線路を支えていた西館の基礎の撤去を行っています。空撮では、仮線が新たな支柱に支えられ、建物の撤去作業が進む様子を捉えました。
一方の東急東横店南館は4階部分までを残し、解体は外見上しばらくストップしているようでしたが、そのうちに西館との結合部分が撤去されました。夏頃には駅利用者の目にも分かるほど解体が進行しており、上空からの光景ではコンクリートの基礎がむき出しとなり、まるで消えゆく古代遺跡のように見えます。「渋谷フクラス」側からは今も山手線外回り電車が露出する光景が見られ、変わりゆく渋谷駅の限定的な姿となっています。
山手線の線路は駅の南側が盛土、国道246号を跨ぐ部分が橋梁、駅部分が高架橋区間という構成でしたが、2023年1月に山手線ホームが上下ひとつにまとめられ、高架橋部分は仮橋脚と軌道桁からなる構造となりました。山手線の直上には「渋谷スクランブルスクエア」中央棟が建設されるので、後に本橋脚とビルの基礎が完成すると仮橋脚は撤去されます。
東急東横店西館と南館の解体は2024年内の予定ですが、空から見る限り、翌年にもかかりそうな状況です。解体が終了すれば、「渋谷スクランブルスクエア」東棟に連結する形で中央棟と西棟が建設され、西館跡地にはハチ公前広場が、銀座線回送線の直上には空中回廊が整備されます。10年以上経過している渋谷駅大規模再開発事業は、いよいよ大詰めといったところです。