Infoseek 楽天

“いるだけ”で世界がザワつく!? 「世界唯一の空母」でフランスはどこへ行くのか でも日本には来れない?

乗りものニュース 2024年12月28日 16時12分

フランスの空母「シャルル・ド・ゴール」は、アメリカ海軍以外で唯一の原子力空母であるうえに、核兵器の運用も可能です。その抜群の存在感を、フランスはどう活用するのでしょうか。

一部艦艇は沖縄に寄港

 在日フランス大使館は2024年11月29日(金)、フランス空母打撃群がインド太平洋地域へ向け仏本土のトゥーロン港から出航したと発表しました。

 フランス空母打撃群は、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」を中心とした艦隊で、同艦には、艦載機として「ラファールM」戦闘機、E-2C「ホークアイ」早期警戒機、ヘリコプターなど約40機が搭載されているとのこと。このほかに、防空フリゲートや補給艦、潜水艦なども加わり、約3000名の将兵で構成されているそうです。

 フランス空母打撃群による今回の長期展開は「クレマンソー25」と名付けられています。フランス軍事省が発表したスケジュールによると、「シャルル・ド・ゴール」らはこのあと地中海からスエズ運河で紅海へと入り、インド洋を経由してオーストラリア沖を抜け、西太平洋へ向かう計画です。

 その間、地中海、インド洋、オーストラリア沖、そして西太平洋の各所で外国海軍と共同演習を行う予定で、オーストラリア沖と西太平洋では海上自衛隊との演習も予定されています。なお、打撃群の構成艦艇の一部が沖縄県にあるアメリカ海軍施設に寄港することが明らかになっています。

 なお、フランス海軍の空母が太平洋に展開するのは、1968(昭和43)年の通常動力型空母「クレマンソー」以来、57年ぶりのことです。

世界で唯一の「核兵器搭載原子力空母」

 打撃群の中心を務める「シャルル・ド・ゴール」はアメリカ海軍以外では唯一の原子力空母ですが、同艦はアメリカ海軍の原子力空母ですら、現在では持っていない能力を有しています。それが、核兵器の運用能力です。

「シャルル・ド・ゴール」の艦載戦闘機ラファールMは、熱核弾頭を搭載するミサイル「ASMP-A」の運用能力を備えています。ASMP-Aは、2010(平成22)年からラファール戦闘機への搭載が開始された、射程600kmを誇る超音速巡航ミサイルで、敵の防御をすり抜けて目標へ正確に命中する能力を有しています。

 以前は1978(昭和53)年から運用が開始された、艦上攻撃機の「シュペルエタンダール」が核ミサイルの運用を担ってきましたが、同機は2016年に全機退役が完了しており、その役割がラファールMに引き継がれた形です。

 このように核兵器運用能力を有する「シャルル・ド・ゴール」は、フランスが関心を寄せる地域や、紛争が発生しそうな地域へと派遣されることで、国としての意思やプレゼンス(存在感)を示したり、あるいは紛争の危険度をコントロールしたりと、有用なツールとなります。

 それでは、フランスはなぜヨーロッパから遠く離れたインド洋へと「シャルル・ド・ゴール」を派遣し、かつそこで海上自衛隊と共同訓練を実施するのでしょうか。その理由は、「フランスにとってインド太平洋という地域が持つ意義の大きさ」と深く関係しています。

「太平洋国家」であるフランス でも空母が日本に寄港できないワケとは

  ランスは、ヨーロッパに位置する国家であると同時に、インド太平洋地域にも多くの領土を持っていて、こうした海外領土などのおかげで、世界でも有数の広大な排他的経済水域(EEZ。漁獲や資源開発に関して沿岸国が排他的な権利を有する海域)を保持しています。つまり、フランスは日本と同じく「太平洋国家」ともいえます。

 そのため、インド太平洋地域で発生する問題は他人ごとではなく、南シナ海における中国の活動や北朝鮮情勢は、フランスにとっても大きな関心事です。そこで、フランスは「シャルル・ド・ゴール」の派遣や海上自衛隊との共同訓練を通じて、同地域でのプレゼンスを示し、情勢に関与することを目指そうとしているのです。

 そこで注目されるのが、「シャルル・ド・ゴール」が日本に寄港する可能性についてですが、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)はその可能性は無いと考えています。その理由は、日本の「非核三原則」です。

 核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」という有名なフレーズで知られ、1968(昭和43)年以来、日本政府が踏襲してきた「非核三原則」は、読んで字のごとく日本国内への核兵器の持ち込みを禁止しています。つまり、もし「シャルル・ド・ゴール」が先述したASMP-Aを搭載した状態で展開するようであれば、日本への寄港は認められないことになるわけです。

 とはいえ、打撃群の一部艦艇が沖縄に寄港することは明らかにされており、また海上自衛隊との共同訓練も予定されていることから、今回の展開で安全保障面における日仏間協力はさらに進展することになるでしょう。

この記事の関連ニュース