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改良重ね大進化! 阪神淡路大震災で誕生「自衛隊用レスキュー装備」とは 外国軍も是非使って!

乗りものニュース 2025年1月17日 9時42分

日本屈指の大災害として記録されている阪神・淡路大震災で人命救助に尽力した陸上自衛隊は、そのときの教訓を基に災害派遣専用の装備を開発・導入しました。人命救助専用の装備は東日本大震災や能登半島地震などでも活躍しています。

誕生のきっかけは関西で起きた大災害

 今年(2025年)は阪神・淡路大震災からちょうど30年の節目です。1995(平成7)年1月17日午前5時46分に起きたマグニチュード7.3の巨大地震(兵庫県南部地震)によって、神戸市や淡路島などには甚大な被害が出ました。

 このとき、消防や警察などとともに救援活動の中心を担ったのが自衛隊です。なかでも陸上自衛隊は主要な役割を果たし、約100日間にわたった派遣期間において、最大約1.8万人(のべ約161.6万人)、各種車両のべ34.5万台などが被災地で活動しています。

 ただ、陸上自衛隊にはそれまで消防や警察のレスキュー部隊が所有するような人命救助に特化した装備がほとんどなかったため、生き埋めになった要救助者を捜索したり救出したりするには、人力に頼るしかありませんでした。

 こうした教訓を基に開発されたのが、戦闘行動を想定する自衛隊においては珍しい、災害派遣に特化した専用装備「人命救助システム」です。

「人命救助システム」は、様々な救助資機材をひとつのシェルターコンテナにユニット式でひとまとめにしたもので、エンジンカッターや削岩機、投光器といったものから、がれきの中を覗くためのファイバースコープやエアジャッキ、背負い式消火ポンプ、伸縮ハシゴ、折り畳み式リヤカー、そして担架や医療器具セット、簡易トイレなどまで含まれます。

 開発は阪神淡路大震災での活動直後からスタートしています。なお、開発に際しては市販のものを最大限流用する形が採られ、専用品は必要最小限に抑えられました。

調達開始から数年でさっそく改良型が誕生

 最初に完成したのが「人命救助システムI型」です。専用台車(ドリー)に積載されたコンテナは航空機や船舶での輸送に便利な国際標準規格(ISO)サイズで、CH-47J輸送ヘリコプターによる牽吊輸送も可能です。

 コンテナの左右側面は伸縮式で、広げると救護所や隊員の待機所などに使えるようになっており、内部にはユニットタイプのトイレやシャワー室を設置できるほか、隊員約100人分の装備が収納されています。なお、これら隊員用の資器材はさらに小型のコンテナに小分けで収納されており、キャスター付きの台車やリヤカーで運べるようになっています。

 人命救助システムI型は、さっそく1995(平成7)年度の第一次補正予算から調達が始まります。しかし、部隊で運用を始めてみると様々な欠点が見つかりました。

 なかでも最も大きかったのが、専用台車に乗った状態で大型トラックで牽引する、いわゆるトレーラー構造でした。この形状だと、牽引する大型トラックを運転する隊員にもけん引免許が必要になるため相応の技量が求められるほか、走れる場所も限られてしまいます。

 そこで、収納する資機材を約半分の50人分に減らし、それに合わせてコンテナも小さくすることで大型トラックの荷台に積載できるようにした「人命救助システムII型」が1990年代末に開発され、2000年代初頭より導入されています。

 なお、人命救助システムII型は、I型と比べて小型かつ収容する装備が少なくなったことにより、1セットあたりのコストも低廉化したため、全国の駐屯地に広く配備できるようになったのも特徴と言えるでしょう。

 参考までに、牽引車タイプのI型は調達数が42セットです。陸上自衛隊の駐屯地および分屯地は2025年現在、全国に162か所あるため、I型はその4分の1程度、主要な駐屯地にしか配備できなかったと考えられます。

 対してII型の具体的な調達数は不明ですが、少なくとも47都道府県すべて(陸自駐屯地のない奈良県には空自の奈良基地へ配備)に配備されていることから、そのことを鑑みるとII型の方が配備数が多いのは間違いなさそうです。

外国軍への供与もスタート

 そののち、東日本大震災や熊本地震などでの使用実績をフィードバックし、さらなる改良が加えられたのが「人命救助セットIII型」です。これは2018(平成30)年ごろから配備されている最新型で、基本構造は従来の人命救助システムII型とあまり変わっていないものの、積まれた各種資機材が新しいものになり、水害救助器材なども含まれるようになったのが特徴です。

 人命救助システムII型ならびにIII型は、航空自衛隊でも「人命救助システム」の名称で導入されており、主要な基地にはひと通り配備されています。

 また、2019年には外国軍に供与する初の自衛隊装備にも選ばれています。選定の理由は非戦闘用装備かつ有用なものだからで、日本と同じく台風や豪雨などの自然災害に悩まされるフィリピン軍に対して、2021年3月より配備が進められています。

 ほかにも、2019年にはパプアニューギニアとフィジーの軍人を日本に招いて人命救助システムの研修を行っています。これに関して日本政府は、フィリピン軍での運用結果を見極めたうえで他国への供与も検討していくと明言していました。

 冒頭に記したように、今年は阪神淡路大震災の発生からちょうど30年です。そのときの教訓を契機に生まれた装備は、絶え間ない改良が加えられて進化し続けています。

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