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中央線グリーン車があれば要らない? 「都内だけの短距離特急」廃止へ もう見向きもされないと思いきや…!

乗りものニュース 2025年1月10日 7時12分

中央線・青梅線を走る都内完結の短距離特急「はちおうじ」「おうめ」。通勤ライナーを実質値上げして誕生したものの、一般の快速列車に連結されたグリーン車の営業開始に伴い廃止に。役目を終えたと思いきや、意外な需要がありました。

前身は中央・青梅ライナー 特急「はちおうじ」「おうめ」

 JR中央線・青梅線の快速電車などでグリーン車が営業を開始するのに伴い、特急「はちおうじ」と「おうめ」がダイヤ改正前日の2025年3月14日で運行を終えます。通勤客に特化したダイヤのため一般利用者にはなじみが薄い特急列車ですが、乗車してみると、意外な利用実態がわかりました。

 特急「はちおうじ」「おうめ」は中央線の特急用車両E353系を使い、平日の朝と夕方・夜にそれぞれ東京~八王子、東京~青梅を結んでいます。2019年3月のダイヤ改正で誕生しました。

 それまでは特急用車両の間合いで通勤ライナー「中央ライナー」(東京~八王子)、「青梅ライナー」(東京~青梅)が運行され、ライナー料金は一律で普通車510円、グリーン車720円でした。“特急化”に伴って指定席特急料金が適用されるようになり、主要顧客の大人にとっては値上げになりました。

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は当時、JR東日本役員から特急格上げの狙いを「定期列車の車両をE353系に統一して、従来のE257系と比べて着席サービスの質が向上するため、ライナーより高い特急料金を頂戴して(E353系への)投資額を負担していただく」と聞きました。

値上げに、私鉄の攻勢も追い打ち

 ただ、値上げが一因となって「ライナー時代に比べて乗車率が悪くなった」とされます。また、「はちおうじ」の新宿と八王子の間は、京王電鉄の有料座席列車「京王ライナー」(新宿~京王八王子)、「おうめ」の新宿と拝島の間は西武鉄道の座席指定列車「拝島ライナー」(西武新宿~拝島)と競合しており、京王と西武が攻勢を強めているのも追い打ちを掛けました。

「はちおうじ」の定期列車は上下計5本、「おうめ」も上下計3本にとどまり、本数が圧倒的に多く、料金も割安な京王ライナーや拝島ライナーに立ち向かうのは難しくなっていました。

 そんな中でJR東日本は、中央線東京~大月・青梅間の快速電車などで通勤用車両E233系の中間に2階建てグリーン車2両を増結し、12両編成とすることを決定。全編成にグリーン車がそろう2025年3月15日のダイヤ改正に伴って「はちおうじ」と「おうめ」は運行を終えます。

グリーン車タダで乗れるし、もう見向きもされないのでは?

 筆者は利用状況を確認すべく、2024年12月27日に東京を18時30分に出発する「おうめ」1号の普通車指定席で終点の青梅へ向かいました。56.0km離れているためチケットレス指定券ならば920円ですが、記念に切符を発券したため1020円しました。

 乗車する前はこう想像していました。始発駅のためラッシュ時間帯でも列に並べば快速電車などに着席できるチャンスが大きく、2024年10月から順次運転を始めているグリーン車を連結した編成が「お試し期間」でグリーン料金なしで利用できるため「始発の東京駅では『おうめ』はほとんど見向きをされないのではないか」と。

 ところが、ふたを開けてみると想定外の結果でした。「おうめ」の進行方向の先頭車両は4分の1弱の座席が埋まって発車しました。通勤客に加え、冬休み期間のため廃止前に乗車する鉄道ファンがいたことも乗車率を押し上げていました。

 次の停車駅の新宿で大勢の通勤客らが乗り込むと、先頭車両は約6割の乗車率となりました。全ての列が埋まっているものの、1人で乗った客の通路側の座席はおおむね空いている状態です。

 途中の吉祥寺でホーム上の非常ボタンが押される事案で一時停車したため、続く立川には3分遅れの19時22分に着きました。すると、乗客のほぼ半分が降り、中央線内が“主要区間”になっていることが分かりました。

 つまり、乗車時間が比較的長い東京または新宿から立川へ、確実に座って帰宅したい利用者が、都合の良いダイヤで走っているため予約した場合が多かったようです。青梅線に直通する顧客が中心ではないかと予想していた筆者にとっては意外でした。

 残る利用者の多くは拝島で下車。遅れを回復して19時52分に着いた終点の青梅までの顧客はまばらでした。

“乗り納め”にオススメの区間

「おうめ」と「はちおうじ」の廃止まで残すところ2か月余りとなり、「記念乗車」の鉄道ファンも増えてくるかもしれません。「おうめ」に乗る場合の区間で筆者がお薦めしたいのは、東京と拝島の間です。

 というのは、この区間は49.3kmとギリギリながら50km以内の指定席特急料金が適用され、チケットレス指定券ならば660円で済むためです。もちろん、運賃も割安になります。

 少しぜいたくをしてグリーン車に乗りたい場合は1430円と、普通車料金の倍以上かかりますが、青梅までの1690円よりは節約できます。

 他に新宿~青梅や、「はちおうじ」の東京~八王子も50km以内の指定席特急料金となります。

 中央線・青梅線では、ダイヤ改正前に快速電車などのグリーン車を追加料金なしで利用できる「お試し期間」が脚光を浴びています。一方で、「はちおうじ」と「おうめ」が運行されるのはあとわずかです。ダイヤ改正前にはグリーン車体験の傍らで、通勤ライナーの系譜を継いだ特急列車の“乗り納め”を楽しむのも手ではないでしょうか。

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