東成田~芝山千代田間を結ぶ芝山鉄道は、全長2.2kmで「日本一短い鉄道」として知られます。実は九十九里浜方面への延伸が検討されており、そのルート上を沿線自治体がバスを運行しています。芝山千代田駅の“その先”へ行ってみました。
芝山千代田駅から先に延伸構想がある
「日本一短い鉄道」として知られる第3セクター鉄道・芝山鉄道。東成田~芝山千代田間は2.2kmと短く途中駅もありませんが、実はさらなる延伸構想があり、そのルート上をバスが運行しています。芝山千代田駅には“その先”があるのです。
芝山鉄道の成り立ちは、成田空港の建設により、空港東側地域の交通が寸断されて不便になる状況を解消するためです。1970年代、成田空港建設は強い反対を受けており、地域住民や企業への補償的な意味合いでスタートしました。
起点となる東成田駅は京成電鉄の初代「成田空港駅」です。1981(昭和56)年の芝山鉄道設立時、そこから整備場前駅(現・芝山千代田駅)までの2kmに、小型電車を折り返し運転する計画でした。
しかし、「通常の鉄道で京成成田駅まで直通させるべき」という地元の要望を受けて、計画は京成本線と直通できる鉄道に変わります。このため現在も都営浅草線・京成線を経由した列車が、芝山千代田駅まで直通運転しています。
空港反対派の土地を迂回するルートになったこともあり、路線延長は2.2kmとなりました。なお計画時は芝山千代田駅から700mほど先に「千代田駅(仮称)」を設置し、さらに九十九里浜の蓮沼海浜公園まで延伸する構想もありました。
現時点で路線建設の目途は立っていませんが、周辺自治体の芝山町、横芝光町、山武市が「芝山鉄道延伸連絡協議会」を構成し、鉄道延伸までの暫定措置として、成田空港第2ターミナルと横芝屋形海岸を結ぶ、空港シャトルバスを運行しています。
芝山鉄道の延伸ルートは決まっていませんが、芝山町に立てられた看板によると、「芝山千代田→芝山町中心部→JR横芝駅→JR松尾駅→蓮沼海浜公園」というルートのようです。芝山千代田~横芝間が道路で15.9km。そこから松尾駅までJR総武本線に平行して4.3km、松尾駅から蓮沼海浜公園まで7.9kmですから、延伸区間は計28.1kmです。既存区間と合わせるなら30km程度となり、なかなか壮大な構想です。
おっと、乗り場を間違えた…
こうした構想の代替が前出の空港シャトルバスですが、始発は芝山千代田駅ではなく、成田空港第2ターミナルです。芝山千代田駅、芝山町中央部を経て、横芝駅を通らずに松尾駅へ直行。そのうえで蓮沼海浜公園を経由し、横芝屋形海岸まで約27km運行されています。
自治体が鉄道延伸の代替事業としてバスを運行するのはかなり珍しく、どの程度利用されているのでしょうか。
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年末の金曜日の朝9時31分、松尾駅にやって来ました。松尾駅前には「芝山千代田行き」のマイクロバスが止まっていましたが、これは「芝山ふれあいバス」で、空港シャトルバスではありません。シャトルバスの時刻表には「JR松尾駅南」がありますが、その停留所は駅前ではないようです。
ふれあいバスの運転士に聞くと、シャトルバスのバス停は踏切を越えた先とのこと。駅から直線距離で50mほどの場所にある駐車場に、JR松尾駅南バス停がありました。松尾駅にはこのバス停側に出口がないので、実測しましたが徒歩8分ほどかかります。
初めて来た筆者は、9時34分発の横芝屋形海岸行きに乗り遅れました。そこでまずは、10時25分発の成田空港第2ターミナル行きに乗車することにしました。
出発直前に3人がやって来ました。バスには1人が乗っていたので、筆者を含めて5人です。運行は千葉交通に委託されているため、車両は千葉交通バス。車内には千葉交通成田営業所の路線図が掲出されていますが、空港シャトルバスの記載はありませんでした。バスは利用者がいなかった3つのバス停を通過しました。
いったん東成田駅へ行き折り返すことに
道路からは森とゴルフ場が多く見え、あまり人家はありません。また一帯では古墳も多く見られます。10時37分、横芝遠山バス停で1人が乗車。10時43分には芝山文化センター前バス停で3人が乗車しました。芝山町中心部に駅を設けるなら、この辺りなのでしょう。
10時49分、芝山中学校入口バス停でも1人が乗車し、車内には計10人の乗客です。10時55分、6分遅れで航空博物館入口バス停に到着。2人が下車、1人が乗車したのですが、「前乗り、前降り」なので動線が交差していました。
筆者も下車し航空科学博物館を見学。その後12時8分に再び空港シャトルバスに乗車すると、今度は5人が乗っていました。
12時15分に芝山千代田駅バス停を通過し、12時23分に空港第2旅客ターミナルに到着しました。各方面のバスと同一平面で乗り換えられ、鉄道駅へのアクセスも用意です。
第2ターミナルから空港第2ビル駅へ移動しましたが、芝山鉄道の東成田駅とは乗り換えできますが、案内標識は少なく、駅員に道を聞きました。地下通路だと7分で乗り換えられました。
先述の通り東成田駅はかつての成田空港駅で、構内は広め。ただし施設は閉じられており廃駅のようでした。ホームも2面4線ありますが、使われているのは1面のみです。
鉄道延伸に可能性はありそうか
東成田13時0分発の芝山千代田行きには14人が乗車していました。車両は芝山鉄道3500形電車でした。これは京成3500形電車3537編成4両を芝山鉄道がリースした車両で、「芝山鉄道」と書かれたプレートも。芝山鉄道はこの4両しか保有していないのでレア車両です。同社ウェブサイトでは運用が告知されています。
乗車時間4分のうち2分半はトンネルでした。トンネルを出ると成田空港が見えます。芝山千代田駅は1面1線ですが、エレベーターも備わります。改札口で要望すると数量限定の「乗車記念証」をもらえました。これは楽しい試みです
15時7分、ようやく芝山千代田駅から空港シャトルバスで横芝屋形海岸を目指します。乗客は4人だけ。途中乗車は筆者を含めて2人で、松尾IT保健福祉センター前バス停までに筆者以外の全員が下車しました。
蓮沼海浜公園は17種類のプールや、日本一の走行距離である2.1kmも走るミニトレインなど見どころ豊富なのですが、終点まで利用した乗客はいませんでした。
ここに鉄道を敷設しても、沿線利用は見込めないように感じました。京成本線ではなく、成田スカイアクセス線への連絡線を設置し、高速運転して芝山鉄道に直通する特急でも運行しなければ、観光客誘致も難しいのではないでしょうか。沿線利用だけなら、空港シャトルバスが空港第2ビルに乗り入れる現状の方が、便利だと思えます。