飛行機の着陸時に使われるタイヤの付いた脚は、飛行中ボディに格納されていますが、なかには、格納中のタイヤがむき出しの状態で飛ぶものも。背景には、その機種“ならではの使われ方”が関係しています。
多くの旅客機で「主脚ドア」はあるが…
現代の旅客機の多くは、主脚を格納する部分にドアがあり、上空ではそれを閉じていることが一般的です。これには、主脚を保護するだけでなく、巡航中の空気抵抗を減らすなどのメリットもあります。しかし、なかには、格納した車輪をあえてむき出しにしたまま飛ぶモデルも存在します。なぜでしょうか。
主脚格納部にドアがなく「タイヤむき出し」で空を飛んでいるモデルは、例えばJAL(日本航空)やANA(全日空)でも運用されてるボーイング737、そして伊丹空港に拠点を置くJ-AIRなどで運用されているエンブラエル170・190などです。
J-AIRの公式SNSでは、過去にこの「タイヤむき出し」の理由を、「主脚のブレーキを冷却するため」と紹介しています。
旅客機は離着陸時、主脚に大きな摩擦熱が発生しており、ブレーキを作動させることで生じる熱は摂氏300度ともいわれています。そのため、空港にはブレーキ・クーリング・カートというディスク・ブレーキ冷却用のカートがあり、駐機中に取り付けて廃熱する場面も見られます。
その一方、水平飛行中の外気はマイナス50度になることもあります。J-AIRは、「頻繁に離着陸し次便までの時間も短いため、ギア(ブレーキ)を効率良く冷却するには上空がベスト」と投稿しています。
実は使い方が関係?「タイヤむき出し」の理由
J-AIRが保有するエンブラエル170・190は100席以下の座席数で、地方間の短距離フライトを主に担当する「リージョナルジェット」というもの。より大型の150席クラスのボーイング737も、最も一般的な用途は、必然的に多頻度運航となる短距離路線です。
こうしたモデルではその運用上、国際線用の300席級の機体のように、長い便間の時間(ターンアラウンドタイム)を確保できるわけでありません。限られた短い時間に効率良く冷却を図るべく、飛行中の外気を「天然のクーラー」として使っているというわけです。
また、この構造は重量の削減にも役立ちます。ドアや関連する装置を取り払えれば、その分機体が軽くなります。そして軽いほど離陸滑走距離が短くて済み、滑走路が短い地方空港にも就航できるというメリットも存在します。