ロシア等に向けた原付を含むバイクの輸出が中古・新車含め全面的に禁止となります。日本で買い付けられたバイクは、ロシアにわたり、戦争の道具になっていた可能性があります。一方、クルマについては“ほぼ手つかず”状態が続きます。
原付を含む中古バイク、乗用車より早く全面輸出禁止
G7首脳テレビ会議で、石破 茂首相が表明した対ロシアを含む輸出貿易の追加制裁の具体的内容が2025年1月10日、明らかになりました。制裁回避のため第三国を経由した貿易に関与した団体等への追加制裁と共に、ロシアの産業基盤強化に関係する特殊車両パーツ、中古バイクの輸出強化が同1月中に施行されます。
ウクライナ戦争の解決を目指し、G7主要7か国が協調して実施する対ロシア制裁について、輸出規制が新たに強化されます。経済産業省が担当する貿易では、 自動車関連物品は「産業基盤強化に資する物品」と「奢侈品/しゃしひん(ぜいたく品)」の2つの視点で、規制対象が定められていました。貨物自動車や建設用特殊車両は「産業基盤強化に資する物品」の視点で2022年の制裁から対象になっていました。例えば、日本国内ではレジャー用途に思われがちなスノーモービルも、産業基盤強化に資する物品として輸出禁止対象にされていました。
ただ、昨年12月、主要7か国の首脳テレビ会議で石破 茂首相が、さらなる制裁を表明したこともあり、対象が拡大されることになりました。その代表例がブルトーザーなどの建設用特殊車両です。完成車だけでなく、今回の追加制裁では補修や代替の手段となっていたエンジンなど部品を輸出禁止の対象としました。
もう1つはバイクに関する輸出です。バイクは以前から規制対象でしたが、特殊車両のような産業基盤強化に資する物品」としての規制ではなく「奢侈品」として規制されていたため、完成車として規制対象に指定されていたものの、輸出時の中古価格が安い一部のバイクは輸出が可能でした。
今回の追加制裁で50ccを含めたバイク(※経済産業省のリリースでは「小型自動二輪」)全体が「産業基盤強化に資する物品」と位置付けられ、輸出ができなくなります。
手軽な移動手段だからこそ「戦争に便利なモビリティ」
「小型のバイクは日本ではお手軽な交通手段として認識されているが、一部軍用として使われている側面もある。ヘリコプターにも搭載できるので非常に便利なモビリティとして使われている」と、経産省貿易管理課は指摘します。
このほかにも、通信機器に応用される受信機、テレビ受像機、モニター、マイク、拡声器も禁輸対象に加わりました。工具。プレス用の鉄鋼製品も新たな対象になります。
335品目増えて通関で利用される品目分類コードで、もともとの指定1486品目から335品目が追加され、1821品目が輸出禁止対象になります。
ただ、乗用車については、今のところ「奢侈品」としての規制が継続されているため、金額で600万円、排気量1901cc以上の車両が対象です。ロシアやベラルーシ向けの輸出は、ほぼ全体が中古車ですが、80%は1900cc以下の車両のため、この分野は手つかずのままです。
新たに3か国の特定団体も対象に
輸出貿易管理令などの改正は、ロシアとベラルーシだけではなく、第三国にも及んでいます。
これまでは輸出経由地としての実績があったアラブ首長国連邦、中華人民共和国、カザフスタにある軍事関連団体などの16の特定団体への輸出が禁止されていました。これに加えてキルギス、タイ、トルコにある特定団体も指定し、6か国の団体が対象になりました。
この措置は国を対象にするものではなく、第三国にある特定団体を輸出禁止団体として指定し、迂回輸出を阻止するものです。1月中に6か国にある合計47団体が輸出等禁止の対象になります。
武藤容治経済産業相は1月10日の閣議後会見で追加制裁について、次のように話しました。
「G7首脳会議の合意を踏まえて本日閣議決定した。1月23日に施行する。今後とも国際社会と連携しながら、ロシア制裁の実施に万全を期す」