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「自衛隊さん無人機の契約どうなったんですか?」 艦載型“無人ヘリ”で暗礁に乗り上げた海自 欧州の機体が「救世主」になるかも

乗りものニュース 2025年1月25日 6時42分

イギリスのレオナルドUKは、イギリス海軍向けの艦載型無人機「プロメテウス」の設計を開始すると発表しました。現在、フランス海軍でも艦載型無人機の導入計画が進められていますが、どうやらこれらは自衛隊とも関連してくるかもしれません。

イギリス海軍の次世代無人機が設計開始

 イタリアの大手防衛航空宇宙防衛企業であるレオナルドのイギリス法人レオナルドUKは2025年1月7日、回転翼機型UAS(無人航空機システム)「プロテウス」の試作機の設計を開始すると発表しました。

 イギリス海軍は2040年までに海上航空の進化を推進する海上航空変革(MATx)戦略を策定しており、プロメテウスはその一環として、2022年6月から開発が開始されていました。レオナルドUKはプロテウスの試作機初飛行の予定時期を、2025年半ばと発表しています。

 2024年10月に開催された「国際航空宇宙展2024」でもキャビンモデルが展示された、レオナルド・ヘリコプターズの単発有人ヘリコプター「AW09」のノウハウに加えて、デジタル設計技術や一部部品の製造に3Dプリンターを使用するといった先端製造技術によって、設計開始から半年強という異例の早さで初飛行にこぎつけると説明しています。

 プロメテウスは、艦艇で運用するUASの自律飛行機能の開発と実証のためのテストベッドとして位置づけられており、完成した試作機がそのまま実用機になるわけではありません。ただ、レオナルドUKが発表したイメージイラストには、胴体下面に潜水艦の捜索に使用する「ソノブイ」を投下するソノブイランチャーや、やはり胴体下面に大型レーダーを搭載するプロメテウスが描かれています。

 ここから推測されるのは、イギリス海軍が現在運用している艦載ヘリコプター「リンクス・ワイルドキャット」の後継機を、プロテウスをベースに開発されるUASとする構想を持っているのではないかということです。

小型ミサイル搭載で「攻撃」もやれる

 フランス海軍も、水上戦闘艦で回転翼機型UASを運用する構想を持っており、エアバス・ヘリコプターズやタレスなどと共に「VSR700」の開発を進めています。VSR700はフランスのギンバルが開発した単発ヘリコプター「カブリG2」をベースに開発されており、試作機は2019年11月8日に初飛行しています。

 VSR700は原型機のカブリG2と同じディーゼル・エンジンを使用しているため、ターボプロップ・エンジンやピストン・エンジンを使用する回転翼機型UASに比べて燃費性能が高く、100kgの器材を搭載した状態で、最大8時間の飛行が可能とされています。

 このVSR700のもう一つの大きな特徴はペイロード重量の大きさで、各種センサーやソノブイなど多様なミッション器材を最大250kg搭載できます。エアバス・ヘリコプターズはVSR700の用途として、搭載する光学センサーや海上/陸上レーダーを使用したISTAR(情報収集・監視・目標補足・偵察)任務や、ソノブイを用いた対潜戦などを上げています。

 2019(令和元)年6月に開催されたパリエアショーでは、VSR700の実大モックアップと共にMBDAの対戦車ミサイル「ブリムストーン」と、より小型の対戦車ミサイル「MMP」が展示されていたことから、恐らく小型艦艇攻撃への活用も、検討されていると考えられます。

 艦艇で回転翼機型UAS、さらに言えば有人ヘリコプターを運用する場合、海が荒れた状態でいかにして飛行甲板に機体を安全に着艦させるかが課題となっています。エアバス・ヘリコプターズはその解決策として、VSR700にエアバスの防衛宇宙部門であるエアバス・ディフェンス・アンド・スペースが開発した、電波を利用する自動着艦システム「デッキファインダー」との組み合わせを提案しています。

暗礁に乗り上げた海自の無人機導入計画 今後の方向性は?

 防衛省も、海上自衛隊の艦艇で回転翼機型UASを運用する方針を固めています。

 2018(平成30)年12月に発表された「防衛計画の大綱」では、護衛艦に搭載するSH-60K/L哨戒ヘリコプターを補完するため、回転翼機型UASを20機導入することが決定。防衛計画の大綱と同時に発表された中期防衛力整備計画には、2019年度から2023年度までの5カ年度で3機を導入すると明記されていました。

 2024年11月6日付の読売新聞によれば、海上自衛隊は防衛大綱の策定前に行った市場調査の結果、海上自衛隊の要求を充たせる回転翼機型UASはノースロップ・グラマンのMQ-8C「ファイアスカウト」だけと把握し、導入に向けた準備を進めていたとのことです。

 しかし同紙は、会計検査院がMQ-8Cの契約状況を調査したところ1機も契約が締結されていないことが判明したうえ、MQ-8Cの生産ラインは2022年に閉鎖されてしまったため入手が不可能になってしまったと報じています。海上自衛隊の護衛艦に搭載する回転翼機型UASの導入計画は、宙に浮いた状態になっています。

 読売新聞は、海上自衛隊が他の企業に艦載回転翼機型UASを発注できないかなどの対策を検討しているとも報じています。プロテウスもVSR700も、海上自衛隊が回転翼機型UASの役割と位置づけていた貨物の輸送や洋上哨戒はもちろん、海上自衛隊が重視している対潜水艦戦能力の獲得も視野に入れています。

 海上自衛隊がノースロップ・グラマン以外から艦載回転翼機型UASを入手するのであれば、プロテウスの実用機型かVSR700を軸に検討されることになると筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。

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