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いよいよ本格始動した日英伊「世界最強戦闘機」への道 日本の”意向“すでに機体に反映済み!? 答えは翼の形に!

乗りものニュース 2025年1月20日 6時12分

いよいよ計画が本格始動した、日本、イギリス、イタリアの3か国による有人戦闘機の国際共同次期戦闘機開発プログラム「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」。ここで気になるのは、日本の存在感です。じつは、日本は機体デザインを担当するとされていますが、その”答え“が意外なところから感じ取れました。

いよいよ計画が本格始動

 中谷 元防衛大臣は2025年1月15日、ロンドンでイギリスのジョン・ヒーリー国防大臣と会談を実施。日本、イギリス、イタリアの3か国による有人戦闘機の国際共同開発プログラム「GCAP」(グローバル戦闘航空プログラム)」について、設計や製造を手がける合弁企業を早期に設立し、2025年内にGCAPのプログラムを管理する国際機関GIGO(ジャイゴ:グローバル戦闘航空プログラム政府間機関)との契約を目指すことなどで一致しています。

 防衛省は令和7(2025)年度予算案に、GCAPで開発される有人戦闘機の開発経費として1087億円を計上しています。この1087億円はGIGOへの拠出金のほか、開発に必要な各種試験の準備、機体とエンジンの共同設計に使われる予定となっており、いよいよ次期戦闘機の開発が本格的に開始されることになります。

 2024年12月29日付のNHKは、日本が主に機体のデザイン、イギリスが搭載される電子システム、イタリアが機体の制御システムをそれぞれ主に担当する方向で調整が進められていると報じています。NHKは防衛省関係者の話として、軽量化やステルス性の向上に欠かせない複合材の技術力などを生かせることが、日本が機体デザインを担当する方向で調整が進められている理由だとも報じています。

 NHKは次期戦闘機のデザインを、レーダーに映りにくいステルス性能を重視した設計にしたいという防衛省関係者の話を紹介しています。戦闘機に高いステルス性能を与えるための研究は、日本がイギリスより先を行っているという印象を筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は持っていますし、日本が機体のデザインを担当することは合理的なのではないかと思います。

じつは昔と変わっている主翼形状

 次期戦闘機の共同設計は合弁企業とGIGOの契約締結後に開始されるため、どのような形になるのかはこれから決まっていきます。ただし、イギリスで機体の開発を主導するBAEシステムズは、各国の要望などを形にしたコンセプトモデルを製作しています。

 同社が製作したコンセプトモデルは、日本でも2023年の3月に開催された「DSEI JAPAN 2023」と、2024年10月に開催された「国際航空宇宙展2024」で展示されていますが、これらは同一のものではなく、主翼の形状が変わっていました。この主翼形状の変化は、もしかすると日本の意見を反映してそのようになった可能性があります。

 次期戦闘機はおおざっぱに言うと、イギリスが2018(平成30)年に開発計画を発表した有人戦闘機「テンペスト」と、日本が諸外国の協力を得て単独で開発しようとしていた次期戦闘機の開発計画を統合したものです。イギリスは2018年にテンペストの開発計画を発表して以来、新たに開発する戦闘機の主翼を、平面系がギリシャ文字のラムダ(Λ)に似ていることから「ラムダ翼」と呼ばれる形状とすることを目指しており、BAEシステムズの製作制作したコンセプトモデルにもそれが反映されていました。

 しかし同社は2024年7月のファンボロー・エアショーで公開されたコンセプトモデルから、主翼を平面系が三角形か、それに近い形状であることから「デルタ翼」と呼ばれる形状に変更しています。ちなみに国際航空宇宙展2024には、ファンボロー・エアショーで公開されたものを縮小した、デルタ翼機の新コンセプトモデルが展示されていました。

じつは「日本の意向」が反映された結果なのか?

 ラムダ翼には高い運動性を得られるといった利点があるのですが、2025年1月現在、ラムダ翼を採用した実用機は現れていません。イギリスとイタリアはGCAPで開発する有人戦闘機の運用開始時期について明言していませんが、日本はF-2が退役を開始する2035年の運用開始を目指しています。それに間に合わせるためには、採用にリスクの大きいラムダ翼機とするよりも、ユーロファイター・タイフーンなど多くの戦闘機に採用されてきた実績を持つデルタ翼機とする方が現実的であり、日本がそれを求めたのではないかと筆者は思います。

 2020年11月14日に内閣官房行政改革推進会議が開催した「行政事業レビュー 秋のレビュー」で防衛省が発表した資料には、航空優勢を確保するためには戦闘機が「より遠方で敵の航空機やミサイルに対処できる体制を整えること」と、「我が国周辺空域に迅速に展開」できる能力が重視されると記載されており、次期戦闘機を単独で開発しようとしていた頃から、航続性能と速度性能を重視していました。

 その一方で、防衛省は運動性能を重視項目に挙げていません。重視している能力が変わっていないのであれば、運動性能ではラムダ翼機には及ばないものの、航続性能と速度性能を両立できるデルタ翼機の開発を日本が目指すのは当然だと思います。その点においても2024年7月以降に製作制作された次期戦闘機のコンセプトモデルには、日本の意見が反映されたのではないかと考えられます。

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