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「スゴすぎるロマンスカー」に乗ってみた “フル加速”運転も!? 珍しい「GSE」の臨時列車どうやって実現

乗りものニュース 2025年1月17日 12時40分

小田急ロマンスカーのフラッグシップ車両である70000形「GSE」。2編成しかないこの形式が団体臨時列車として運転されました。どうやって実現させたのでしょうか。

「GSE」や多摩線や開成車庫に入線

 新宿と箱根湯本を結ぶ小田急ロマンスカーのフラッグシップ車両である70000形「GSE」。この車両が2025年1月6日、小田急トラベルのツアー「開運!紅いロマンスカーGSEで白い富士を眺める新春初旅」の団体臨時列車として、通常は走行しない多摩線や開成車庫などに入線しました。

「GSE」は2編成しかないため、団体臨時列車として運転されるのは珍しいケースです。実際にツアーに参加してみたところ、ロマンスカーが珍しいルートで走るというだけでなく、参加者を飽きさせない企画が盛りだくさんでした。

 今回のツアーは多摩線の唐木田駅から「GSE」に乗車し、新百合ヶ丘車庫線や小田原留置線、開成車庫に入線。最後は新百合ヶ丘駅で解散となるという行程でした。

 小田急電鉄によると「GSE」は通常、土休日は2編成がフル稼働となるため、平日しか団体臨時列車で使用することはできないといいます。平日は1編成が日中に喜多見検車区で待機する運用が組まれており、車両検査がない日だけ団体臨時列車で使用することができるそうです。

 今回の団体臨時列車は、この「本来は喜多見検車区で待機しているはずの編成」を使用して運転されました。

朝に秦野駅から新宿駅まで「モーニングウェイ号」として走行した「GSE」を、喜多見検車区ではなく唐木田まで回送。団体臨時列車として走らせた後、夕方から新宿と片瀬江ノ島を結ぶ「ホームウェイ号」の定期運用に戻すという、まさに針の穴を通すような形で「GSE」の団体臨時列車が実現しました。実現に向け、小田急トラベルと小田急電鉄の担当者の間で、綿密な調整が続けられてきたのです。

「GSE」は唐木田駅を発車すると、多摩線を進んでいきます。同線は多摩センター駅から京王相模原線と並走しますが、この区間では、京王側の車両(乗り入れ車両の都営10-300形)と「GSE」の並走が実現するというサプライズも。

実はこれ、今回の企画に携わった乗務員がアドリブで考案したもので、多摩センター駅を発車する京王の時刻を基準に、「GSE」の速度を調整して実現させたものでした。

一気に加速する「フル加速」体験も

 あっという間に多摩線を走り切ると、列車は新百合ヶ丘駅に到着。ここでは、新百合ヶ丘車庫線(8両までしか入線できない7番線)に入線します。通常はありえない、ロマンスカーの「非日常体験」が楽しめました。列車はここから小田原まで、通常は試運転列車が使用する行路で本線を下っていきます。

 ここからは、「GSE」に搭載されている車内BGMが片っ端から流されていくという、「音鉄」に嬉しい企画がありました。「GSE」には15曲の車内BGMがあり、当日は「いつか王子様が」「魅惑のワルツ」「誰かが私を見つめてる」「オーラリー」など、10曲程度が披露されました。上品なBGMが流れ続ける車内は、通常の「ロマンスカー」とまた違った雰囲気です。

 相武台前駅では後から来たロマンスカーを先に通す「通過待ち」も実現。ロマンスカーがロマンスカーを追い抜くという、珍しい光景が実現しました。またトンネル区間では、車内照明が消灯され、普段はあり得ない夜行列車のような雰囲気を楽しむことができました。

 列車は小田原駅に到着すると、ホームがない「小田原留置線」に入線。そこから折り返して開成車庫に入線し、「GSE」の撮影会と、駅前に展示されている3100形「ロンちゃん」の見学が行われました。

当日は3100形「ロンちゃん」の車内や運転台が特別に公開され、実際に3100形を運転していた主任運転士が車両を解説し、参加者は熱心に聞き入っていました。現行の「ロマンスカー」と異なり、3100形は運転室の環境も過酷で、運転士の技量が試される車両だったそうです。

 一連のイベントが終わり開成車庫を発車すると、後はもう終点の新百合ヶ丘へ向かって走るだけですが、ここでもサプライズが。富水駅を通過した後、一気に加速し、最高運転速度である110km/h運転を行う「フル加速」体験が行われました。途中、車内放送で「加速は『GSE』より『VSE』の方が良かったかもしれません」という、乗務員ならではの興味深い話も聞くことができました。

 また車内では、かつてロマンスカーで実施されていたシートサービス「走る喫茶室」の係員「スチュワーデス」の車内放送を再現する企画や、足柄乗務所の乗務員が作成したグッズが配られるなど、参加者を飽きさせない企画が盛りだくさんでした。

 さらに、今回のツアーでは“有料オプション”もあります。それは、ロマンスカーの運転台見学。参加者は梯子で展望室の上に設けられた運転室に座ることができたのです。

 この見学では運転士から「『GSE』の運転感覚は他の車両と異なり、運転席が高いため速度が遅く感じます。正確に停止位置に止める習熟も必要になります」といった興味深い話も聞くことができました。乗務員との距離が近いのが、こうした団体臨時列車の魅力でしょう。

 あいにく当日は曇りだったため、車内から雪化粧の富士山を望むことはできなかったものの、「乗り鉄」「撮り鉄」「音鉄」いずれも満足できる列車でした。

 なお、小田急トラベルでは今後も、ロマンスカー車両を使った珍しいツアーを実施していくとのこと。2025年2月8日(土)には、「MSE」が車庫線や新宿駅の地下ホームに入線する「ロマンスカーMSE4両編成を満喫する一日~車庫線・Y線・地下線入線、超激レア行路を走る&撮影タイム~」を開催する予定です。

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