「東京オートサロン2025」にイギリスのロータスとケータハムが最新モデルを2台ずつ出展していました。それらを見比べると、ルーツこそ同じくする両社ではあるものの、各々目指している方向が違うことが見て取れました。
海外メーカーも注目する「東京オートサロン」
今年(2025年)も開催された「東京オートサロン」。その前身である「東京エキサイティングカーショー」は元々チューニングカーとカスタムカーを対象にしたカーマニア向けのイベントとして始まりました。しかし、それから40年以上経ち、いまや約26万人もの観客が集まる、国内屈指のカーショーへと成長しています。
そんな「東京オートサロン」に出店する自動車メーカーは、国内メーカーだけには留まりません。今回はフォルクスワーゲン、BMW、ヒョンデ、BYDのほか、イギリスからはロータスカーズとケータハムカーズが最新モデルを引っ提げて参加していました。
イギリス車といえば、走ることに特化したスパルタンなライトウェイトスポーツカー発祥の国です。今回の「東京オートサロン」に参加したロータスやケータハムも、元をたどればこうしたスポーツカーを手作りするバックヤードビルダーとして始まりました。
しかし、ロータスは1976年の「エスプリ」を登場させてからは、スーパースポーツ路線に舵を切ったのに対し、ケータハムはロータスが生産を終了した「セブン」の生産権を取得して自動車製造に参入して以降、一貫してライトウェイトスポーツカーにこだわり続けてきたという違いがあります。
そして、両社の目指す方向性の違いは、2015年以降、ヨーロッパを中心に盛り上がりを見せるようになったBEVブームで顕著になりました。そのことは今回の「東京オートサロン」の両社の出展ブースを見ても明らかです。
動力は変わってもライトウェイトスポーツへの情熱は変わらず
ロータスが会場に持ち込んだのは、高級SUVの「エレトレR」と、高級5ドアサルーンの「エメヤS」です。ボディカラーは前者がブラック&ゴールドの「JPS」カラー、後者がピンクにもオレンジ色にも見える赤色系のマジョーラカラーでした。
ライトウェイトスポーツカーのイメージがいまだに強く残るロータスが、4枚ドアのSUVやサルーンを出展したことに昔からのファンは違和感を覚えるかもしれません。しかし、同社は2021年に最後のガソリンエンジンモデルとなる「エミーラ」を発表した後は、プレミアムBEVブランドへの脱皮を目指し、商圏を拡充すべくラグジュアリーカーを販売の主力に置いています。
おそらく、この経営方針の変化は、ポルシェが「カイエン」や「パナメーラ」などの5ドアモデルによって、好調な業績を示していることに影響を受けたのかもしれません。
もっとも、F1参戦などモータースポーツで輝かしい歴史を持つロータスのマシンということもあり、「エレトレR」は最高出力918ps、最高速度は265km/hにも到達し、「エメヤS」は最高出力612ps、最高速度は250km/hを叩き出します。しかも、加速の鋭いBEVらしく0-100キロ加速は前者が2.95秒、後者が4.5秒と、共に俊足を誇っています。これらを鑑みると、ロータスが内に秘めたスポーツマインドは、BEV化や高級車の生産に軸足を移した現在も変わっていないと言えるでしょう。
一方、ケータハムのブースに展示されていたのは、ヤマハ製の高出力モーターを搭載したBEVスポーツカー「プロジェクトV」とロータス「セブン」の伝統を今に伝える「セブン170R」の2台です。
内燃機関への情熱は捨てません
「プロジェクトV」は現在、ケータハムが開発を進める次世代BEVスポーツカーで、軽量で運転が楽しいイギリス製ライトウェイトスポーツカーの伝統に則り、装備の簡素化によって車両重量1190kgとBEVとしては極めて軽量なボディを持つのが特徴のクルマです。
パワーユニットはリアアクスルに272psのシングルモーターを搭載し、後輪を駆動します。その成り立ちはBEVで蘇ったロータス「ヨーロッパ」とでも形容できるものでしょう。
同車は2023年7月にイギリスのグッドウッド・フェスティバルで初公開され、その後製品化に向けて開発が進行中です。日本は、1年前に開催された「東京オートサロン2024」が初のお披露目でした。オートサロンへの出展はこれで2回目ですが、生産型のデビューは2025年後半~2026年前半の計画で、予定通りならばこれが最後のプロトタイプ展示となるようです。
もう1台の「セブン170R」は、「160R」の後継となるスズキの軽自動車用エンジンを搭載したピュアスポーツカーです。ケータハムでは内燃機関の生産が許される直前までガソリンエンジン車の生産を続けるようで、このクルマの展示はそのような同社の気概を表したものと言えます。
ロータスとケータハムは、両社とも元をたどればコーリン・チャップマンの作ったライトウェイトスポーツカーに行き着きます。しかし、それから70年以上経ち、現在では目指す方向性に関して、どうやら完全に異なっている模様です。