ウィラー・エクスプレスの高速バスにはトイレがありません。車内の乗客の要望を聞く独自サービス「お助けDM」でも、多いのは「トイレ行きたい」との声だそう。そこで運転手はどのように対応するのでしょうか。
トイレないウィラー高速バス 「トイレに行きたい」要望多し
日本全国で高速バスを運行しているWILLER EXPRESS(ウィラー・エクスプレス)では、乗車中の困りごとを乗客がスマホなどから営業所・乗務員に伝えることができる、「お助けDM」という独自のサービスを行っています。
このサービスは同社でも重要で、2025年1月24日に最終審査が行われた同社の「トップガンコンテスト」でも審査項目のひとつになっています。これは同社所属のハイウェイパイロット(運転手)で、最もサービス対応や運転技能が優れた人を決めるコンテストです。
そして「お助けDM」にかなり頻繁にあるのが“トイレ対応”なのだそう。実はウィラーの高速バスには、車内トイレがついていないのです。
ウィラーの“トイレなし”は、同社なりの裏付けがあっての方針です。過去にトイレ付きとトイレなし車両を用意した結果、主要なユーザーである20代から30代の女性にとって、トイレなし車両の方が人気だったといいます。
というのも、走行中の車内では「恥ずかしくてトイレにいけない」、むしろ車内トイレ無しのほうが「清潔感がある」といった声が多かったのだそう。乗客は高速道路SA・PAなどでの開放休憩時にトイレへ行けるので、あえて車内トイレを設けていない高速バスは、ウィラー以外にも少なくありません。
そうは言っても、乗客から「お助けDM」を通じて寄せられる“トイレに行きたい”という要望は、切実なものであることも想像がつきます。しかし「お客様がトイレに行かれるので次のSAで停車します」などと言っては、その人が恥ずかしい思いをするだけです。
では、そうした時に運転手はどのような対応を取るのでしょうか。
さすがの神対応!
トップガンコンテストで最終審査に残った3名の運転手は、「車両点検」「予定していたSAの混雑」など、それぞれほかの乗客に悟られないような理由で、SAやPAに立ち寄るそうです。
なかでも最優秀の「トップガン」に選ばれた遠藤雅典(えんどうまさのり)さんは、コンテストでは「フロントガラスが虫によって汚れたのでSAに停まります」と言っており、普段も自身に注目が向かう内容で、立ち寄る理由を説明しているそうです。
遠藤さんは「40人が乗っていて、ひとりのトイレで休憩場所を変えるという恥ずかしい思いはさせたくない。『悪いのは自分だから』にしたい」と話します。ちなみに遠藤さん、実際にはたとえ汚れていなくても、ガラスを入念に拭き掃除するそうです。
「(トイレの要望を受けてSAなどに立ち寄った際は)ガラスクリーナーまで持って本当に拭きますね。そしてトイレに行くお客さまには『何分までかかっても大丈夫なんで、ゆっくり行ってきてください』とその人とわからないように、小声で伝えます」(遠藤さん)
では、他に「お助けDM」ではどのような要望が寄せられるのでしょうか。
遠藤さんが最近何度かあって印象に残っていると話した要望が、「隣の席の人の体臭が耐えられない」といった内容だそうです。インバウンド(訪日外国人)の利用増加などを背景に、食習慣や文化の違いからくる体臭のトラブルが増えているようです。
遠藤さんはこうした要望が寄せられた場合、「アナウンスで(体臭がきつい人に)直接は言えませんので、DMを送った方に、空いている席があった場合は『申し訳ございません。別の席に移動されますか?』と伝えています」と、席替えで対応するといいます。席が空いてない場合は、事務所の人に対応を任せるとのことでした。