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驚愕、兵士の護衛付き!? 国宝指定を受けた「ミグ戦闘機」とは 噂を確かめに現地へGO!

乗りものニュース 2025年2月1日 11時42分

ベトナムでは、ミグ戦闘機を国宝に指定しているとか。一体どういうことなのか、展示されている博物館に行ってみると、当該機はなんと警備の兵士がいるほどでした。しかし説明を読むと、それは納得の理由からでした。

国宝になったミグ戦闘機と戦車

 2024年11月、ベトナムの首都ハノイの郊外に「ベトナム軍事歴史博物館」という新しい博物館がオープンしました。ここではベトナム戦争で実際に使用された兵器や、戦争中に鹵獲(一部は撃破した兵器の残骸)したアメリカ製兵器などが展示されていますが、それらとは別に館内にはベトナム政府によって国宝に指定された戦闘機が展示されています。

 国宝扱いされているのは、2機の旧ソ連(ロシア)製MiG-21「フィッシュベット」戦闘機です。いずれも博物館の屋内で大事に展示されており、それぞれの兵器には警備のためにベトナム軍の兵士が常に側に立っていました。

 国宝の武器というと、日本でも古来の刀剣などで国宝指定されているものがありますが、それらは歴史的な側面と工芸品としての価値が認められているからです。一方、MiG-21戦闘機は、いまから50年ほど前まで現役だったソ連製の兵器で、いずれも万単位の数が生産された工業製品であり、日本の刀剣とは性質が大きく異なります。

 加えて、これらは性能的には特出した点などはなく他の兵器と変わりません。なぜ、これら兵器は国宝に指定されたのでしょうか。

1機で米軍機12機を撃墜 ベトナム戦争の勝利の象徴か?

 じつは、これら兵器はベトナム戦争で特出した戦果を挙げたため国宝になったのだとか。すなわち、自国の歴史を語るうえで、その功績を称えるためにというのが理由のようです。国宝に指定されたMiG-21にはそれぞれ機体番号が指定されており、国宝指定されたのは4324号機と5121号機となっています。

 4324号機はベトナム戦争中に、なんと14機ものアメリカ軍軍用機を撃墜しており、その戦果のほとんどが、1965年から68年にアメリカ側が実施した「ローリングサンダー作戦」の最中に挙げたものとされています。現在の4324号機の機首部分には撃墜記録を意味する星のマークが14個も描かれており、戦果にはF-105「サンダーチーフ」やF-4「ファントムII」といった当時のアメリカ軍の主力戦闘機が含まれているとのこと。

 ちなみに、この撃墜記録は1人のパイロットではなく、この機体に搭乗した12名のパイロットによって達成されたそうです。

 一方の5121号機は5機の米軍機を撃墜しています。その戦果は1972年12月にアメリカ軍が実施した大規模空爆「ラインバッカーII作戦」で挙げたものだとか。この爆撃作戦にはアメリカ空軍の戦略爆撃機B-52も大量投入され、第二次世界大戦以降に実施された爆撃作戦で最大規模のものでした。このアメリカ軍機の襲来に5121号機も迎撃で出撃し、1機のB-52爆撃機を撃墜したとされています。

 ベトナムの公式発表によると、「ラインバッカーII作戦」による空襲で約1600人の民間人が死亡しているとのこと。そのため、たった1機であっても飛来したB-52を撃墜したことの意義は大きく、ベトナム戦争の勝利のシンボルとして認められたのかもしれません。

ベトナムの国宝制度は意外と新しい

 ベトナムにとって、1960年代から1970年代にかけて長く続いたベトナム戦争は、国の成り立ちに大きな影響を与えた歴史的な出来事であることは間違いありません。だからこそ、そこで活躍した兵器を国宝として保存・展示する意義は大きいことだといえます。

 ベトナムでの国宝制度の歴史は比較的新しく、憲法にその条項が追加されたのは2009年で、実際に指定が始まったのは2012年からとなります。以降は数年おきに10~30点程度の物品が段階的に追加されており、現在は294点(2024年までに指定された物)が国宝として取り扱われています。

 国宝の大部分は美術品や絵画などの歴史遺産ですが、ここで紹介したような兵器類も一定数含まれており、1954年のディエンビエンフーの戦いで使われた37mm対空砲や、1972年のコントゥムの戦いで活躍した59式戦車、ホーチミン氏が使った作戦ノートなども国宝指定を受けています。

 国宝品の追加は定期的に行われており、今後もベトナムの歴史に根ざした国宝現代兵器が増えて行くと思われます。

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