運賃の値上げが相次いでいますが、首都圏の鉄道は今どこが一番安いのか、改めて比較してみます。
初乗り運賃が最も安い鉄道会社は
JR東日本が2026年3月に運賃を改定する方針です。これには「幹線」運賃の値上げと、「電車特定区間」と「山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合するという内容も盛り込まれています。東京~新宿間の運賃が、現行のIC208円・きっぷ210円から、IC253円・きっぷ260円に値上がりする見込みであることが話題となったのも記憶に新しいところです。
振り返ってみると、安く電車に乗れた首都圏も気がつけば運賃が徐々に値上がりしているような印象です。そこで、2025年1月現在、首都圏の鉄道はどこが一番安いのか、改めて比較してみたいと思います。
なお、「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用している鉄道会社もありますが、今回はこのバリアフリー料金込みの金額で比較します。
まず初乗り運賃です。最安は、きっぷで140円の京王電鉄、東急電鉄、小田急電鉄の3社です。さらに3社のIC運賃を比較すると、京王と東急の140円に対し、小田急は136円でした。初乗りは、ICカードで小田急に乗った時が一番安いことが分かります。ちなみに、小田急では小児ICの運賃が一律50円。どこまで乗っても50円です。
東急は近距離の4~7km区間が180円と高めですが、7kmに絞ると小田急・京王よりも安くなります。IC運賃の7~11kmが227円、12~15kmが250円と、この部分の上がり方が緩やかなのも特徴です。
5km・10kmだとどうなる?
この3社とJR東日本の5kmでの運賃は次のとおりです(カッコ内はきっぷ)。
・小田急:167(170)円
・京王:160(160)円
・東急:180(180)円
・JR東(山手線内):167(170)円
・JR東(電車特定区間):167(170)円
京王は近距離での運賃の区分が細かく、上がり幅も緩やかなので、15kmまではほぼ最安をキープしています。ただし、10kmでは以下のようにJR東日本が最安です。
・小田急:230(230)円
・京王:209(210)円
・東急:227(230)円
・JR東(山手線内):178(180)円
・JR東(電車特定区間):178(180)円
JR東日本は、4~6km区間から7~10km区間への上がり幅が11円(きっぷ10円)なので、初乗り運賃でスタートダッシュを切った小田急・京王・東急よりも安いというカラクリです。
しかし、距離が伸びるとまた形勢は変わり、30kmでは東急が347(350)円と、4社の中では最安となります。各社とも沿線各駅の利用状況に合わせた戦略が反映されているものと思われますが、運賃が変わる距離や上がり幅が異なるのは興味深いところです。
ところで、ここで東京メトロの運賃を見てみましょう。10kmでは209(210)円と、なかなか大健闘の数字です。「初乗りは高い」というイメージのある東京メトロですが、実は距離が長いほど相対的に安くなる特徴があります。中野~西船橋間は、JR東日本だと571(580)円なのに対し、東京メトロだと324(330)円で移動できるのも有名な話ですね。
2026年3月に予定されているJR東日本の運賃改定で、中央線の東京~新宿間が253(260)円になると、東京メトロ丸ノ内線の同じ区間が逆に209(210)円で安くるといわれるのもこれに由来しています。もちろん、東京メトロの運賃改定がない前提での話ですが……。
ユーザーとして運賃は重要ですが、鉄道は安全運行を支える人々の存在があってこそ。単純に安い・高いだけではなく、日々の重積を果たしてくださることに感謝しながら、これからも利用していきたいところです。