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ウエンツ瑛士「お芝居の力をまざまざと見せつけられている」 現代社会に問いかける物語「オーランド」で届ける演劇の魅力【インタビュー】

エンタメOVO 2024年6月28日 12時0分

 ウエンツ瑛士が出演するPARCO PRODUCE 2024「オーランド」が6月29日から上演される。本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮として有名な女流作家、ヴァージニア・ウルフの代表作『オーランド』を舞台化した作品で、青年貴族から女性へ変貌し、16世紀から20世紀を超えて生き続けたオーランドが1人の人間として自立していく様子を描く。ウエンツに本作への意気込みや稽古の様子などを聞いた。

-現在(取材当時)、お稽古も終盤を迎えています。今回は、複数の役を演じられるということですが、お稽古の感触はいかがですか。

 複数の役を演じるということよりは、この舞台にどのように存在すればいいのかという難しさと常に戦っています。

-そこが今、お稽古の中で一番意識されているところですか。

 そうですね。複数の役を演じていますが、一つ一つのシーンがすごく短いこともあるので、その瞬間にそれがどんな人物かをお客さまに伝えなくてはいけないですから。とはいえ、伝えるためだけにそこにいるわけではなく、ただそこに存在していなければならない。その両方を達成の仕方を考えているところです。

-この作品の脚本を最初に読んだときの率直な感想は?

 難しいなと思いました。リアルな会話劇とは遠い世界だったので、これをどう(演出の)栗山(民也)さんが表現なさるんだろうっていうところにすごく興味もありました。

-宮沢りえさん、河内大和さん、谷田歩さん、山崎一さんと実力派のキャストがそろっています。そうしたキャストの皆さんとのお稽古ではどんなことを感じていますか。

 稽古なので当然、いろいろなことをこなして覚えて、新しいものをどんどん生み出していくという作業を行っていますが、皆さん、すごく演劇が好きで、大変な作品ではあるけれども楽しんで前に進んでいることを感じます。すごく前向きな方ばかりです。なので、稽古場に行くのがすごく楽しいです。

-紅一点の宮沢さんの印象はいかがですか。

 今、言われて、そういえば紅一点だなと思ったくらい、役者仲間としてそこに存在してくださっています。その立ち姿は、いつもエネルギーがあふれていて、稽古場の空気を作ってくれているのを感じます。役というのは、演じる人の人格が反映されるものだと思います。りえさんを筆頭に、毎日充実して人生と向き合っている人たちからにじみ出るお芝居の力をまざまざと見せつけられている稽古場です。

-そうしたお芝居の力というのは、もちろんウエンツさんにも共通する力だと思いますが、お芝居のためにウエンツさんが心がけていることはありますか。

 僕は楽しんでチャレンジすることだなと思います。今回、栗山さんとご一緒するのも初めてで、自分がこの舞台でどういうことができるんだろうとか、自分ができる表現は何だろうと探っているところがあります。だからこそ、積極的にチャレンジをしていきたい。栗山さんに見ていただける機会が初めてで、しかも稽古中のこの1カ月しかない。なので、とにかく何でもやりたいですし、例えば「こっちだ」と言われたら、その方向の最上級にまずはいきたいんですよ。それができるのは、栗山さんへのリスペクトと愛情、りえさんをはじめとした皆さんへの信頼感があるからこそだと思います。

栗山さんの演出で特に印象に残っていることを教えてください。

 たくさんあります。台本には驚かれるくらいの文字が書いてあるくらいですから。ただ、やはり1番に感じているのは、今回の稽古場で僕がなんで演劇を好きになったのかを思い出させてくれたなということです。やっぱり演劇が好きだなと思いました。

-具体的には、どんなところが好きなのですか。

 演劇は、人の可能性を見に行くものだと思います。物語を見に行くというよりは、日常でわれわれが感じていることが舞台上でも同じようにつづられる、その瞬間を見に行く。それは決して劇的な物語である必要はないんです。僕はそうした演劇が好きで、そうした瞬間をお届けできたらと思っています。

-本作は「真実の私」を探す物語です。ウエンツさんにとってパブリックイメージではない「本当の自分」というのは、どのような人間だと考えていますか。

 これは僕の悪いところなのですが…あまり自分のパブリックイメージが理解できていないんですよ(笑)。周りの人が僕をどう思っているのかあまり分からないし、分かろうと思ってもいないので、自分をあまり客観視ができていないんです。ただ、きっとパブリックイメージが正しいんじゃないかなと思います。もちろん、僕もさまざまな場面でそこに合った立ち振る舞いをしているので、全てが心から思っている言葉というわけではないですが、その言葉の奥にある感情は伝わるものだと思いますし、きっと皆さんが僕から受けている印象は正しいんじゃないでしょうか。

-そうすると、自分の中で「僕はこういう人間なんだ」というのがあるわけではないんですね。

 ないですね。全く考えたことないかも。(パブリックイメージを持たれることで)嫌なことを言われたこともないので。僕は、自分が話したことに対しては、全て責任を取るつもりでいるんですよ。例えば「あれは良くなかった」と感じる方がいても、「それも自分だ」と受け止めているつもりです。

-みんながこれを求めているから、こうしようということもない?

 視聴者の方がということであれば、ないですね。もちろん、番組作りの歯車の一つとして求められていることがあるのであれば、それはいくらでもしますよ。とはいえ、例えば、表面的に悪口を言ってみせても、本当はこの人はいい人なんだなと感じることってあるじゃないですか。それはやはり、作られたものではなく、本質を皆さんが感じるからだと思います。なので、きっと皆さんが僕を見て感じるイメージは正しいんだと思います。

-本作は「青年貴族のオーランドがある夜から眠り続け、7日目に目を覚ますと、艶やかな女性に変身していた」というストーリーですが、もし、ウエンツさんが目が覚めたら女性になっていたとしたら?

 体だけが女性になっているのだとしたら、まずは女性になる練習をしますね。38年染み付いてきた、今の僕としての振る舞いをいかに変えるか。

-女性になったことを受け入れて生きていく?

 受け入れるも何もすでに体が変わっていたら、もうやるしかない(笑)。周りの人に「体が変わっちゃったんです」って話して、練習すると思います。僕の性格的に、「今まで通りいきます」はできない気がする。まずは、女性として生きていく腹づもりを決めるかな。そうしたら「グラビアからやりましょう」とか言われるのかな? 女性のタレントさんを売り出す方針として、最初はグラビアからみたいな流れがあるじゃないですか。あれは別に女性であることを売り物にするというわけではなく、まず認知を広めるためにつかみやすい仕事をするという意味なんだと思います。だから、まずはそこからになるのかな。自分の売りはなんだろうと考えるところからスタートです(笑)。この作品をやっているとそうやって冷静に考えてしまいますね(笑)。

-最後に改めて公演への意気込みと、読者に一言メッセージをお願いします。

 シンプルなセットの中で繰り広げられるこの作品は、役者の美しさと、表現のお手伝いをしてくださるスタッフさんの力が舞台上に結集しているので、豊潤な2時間半を過ごしていただけるのではないかと思います。今回、U‐18、U‐35という若い方に向けたチケットも発売されています。こうしたチャンスはなかなかないと思うので、ぜひこのすばらしい舞台を見にきていただきたいと思います。

(取材・文:嶋田真己/写真:小宮山あきの)

 PARCO PRODUCE 2024「オーランド」は、6月29日~30日に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場大ホール、7月5日~28日に都内・PARCO劇場ほか、愛知、兵庫、福岡で上演。


PARCO PRODUCE 2024「オーランド」

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