桐山照史が主演するミュージカル「グラウンドホッグ・デー」が11月11日から上演される。1993年にアメリカで公開された映画『Groundhog Day』(邦題:恋はデジャ・ブ)をミュージカル化した本作は、毎年2月2日に行われる平凡なお祭りの日「グラウンドホッグ・デー」を永遠に繰り返すことになった天気予報士のフィルが、日々を繰り返す中で内面に変化が生まれ、新たな一歩を踏み出すまでを描く。フィルとともにテレビ番組の実況中継を行うために祭りにやってきたアソシエイト・プロデューサーのリタを演じる咲妃みゆに本作への意気込みなどを聞いた。
-最初に脚本を読んだときの感想を教えてください。
爽やかな温かさを持つ作品だと感じました。同じ一日を何度も繰り返すという物語なので、難しい面もたくさんあると思いますが、いち役者としては挑戦できるのが今から楽しみです。
-挑戦できるというのは、やはり何度も同じ日を繰り返すというところですか。
そうですね。フィルさんは、同じ日を繰り返すわけですが、それ以外の登場人物にとっては最初で最後の一日。お芝居の中で、「その日のフィルさん」といかに新鮮に出会えるかが、大きなチャレンジになるかと思います。
-普段から、舞台作品では、お稽古期間があり、同じ作品を毎日上演することで、同じお芝居を毎日、繰り返されているわけですが、咲妃さんなりの新鮮さを保つ秘訣(ひけつ)はありますか。
とにかく自分の欲を出さないことだと思います。ご一緒する方、目の前に立たれていらっしゃる共演者の方に集中することを常々意識しています。そうすると決まったせりふを発したとしても、放たれるもの、伝わってくるものは毎回同じにはならないんですよ。それは、このお仕事をさせていただく上で面白いなと思うことの一つです。今回は、劇中で同じ日を繰り返すという特殊な構造になっているので、初めての経験になりますが、試行錯誤しながら、楽しめたらと思っています。
-咲妃さんが演じるリタという女性は、どのような人物だと考えていますか。
飾り気がなくて、何事に対してもひたむきな女性です。好感を持っていただきやすい登場人物なのかなと思いますが、彼女は彼女なりに抱えている葛藤があって、さまざまな思いを持ちながら懸命に生きています。フィルさんにとっては何度目かの一日でも彼女にとっては初めての1日。フィルさんの選択する行動によって、彼女がどう変化していくのかをお楽しみいただけたらと思います。
-お相手であるフィルは桐山さんが演じます。桐山さんの印象は?
先ほど(取材日)初めてお会いしましたが、なんて気さくで温かい空気をまとった方なんだろうと驚きました。初対面の私にもすごく和やかにお話をしてくださいましたし、桐山さんご自身がこの作品に対していかにワクワクした気持ちを抱いていらっしゃるのかをうかがい知れて、すてきな座長さんだなと感じました。フィルさんとリタはお芝居でも密に関わってくる間柄ですが、しっかりと意見交換をしつつ挑んでいけるような気がしてます。
-今作では、初共演の方も多いそうですが、咲妃さんが普段、初共演の方とどのようにして距離を縮めていますか。
舞台のお仕事に関わらずですが、初めてお目にかかる方とお話しさせていただく時、私が初めてということは、お相手の方も初めてで、状況は一緒なのだから、私だけがドキドキしているのではないと考えるようにしています。なので、お相手の方にも緊張感を極力抱かせないような努力はしているかもしれません。取り繕っても仕方ないですし、「私はこういう人間です」と早い段階で分かっていただくためにも、本当の自分の声のトーンで言葉を届けようと心掛けています。
-本作の公演に向けて楽しみにしていることは?
途中休憩なしの舞台への出演が続いていたので、2幕構成の舞台に出演させていただくのがすごく久しぶりなんです。休憩を挟んだ舞台の感覚を忘れていそうなので、楽しみ…というかドキドキしています。
-休憩があると違うものですか。
心構えは変わりませんが、休憩は無意味に存在しているわけではないと思います。休憩時間はお客さまにとってもわれわれ届ける側にとっても大事なポイントであると思うので、そこでいかに集中力を高めて2幕に突入できるかは毎公演の挑戦です。
-劇中でフィルは同じ日を何度も繰り返しますが、もし、咲妃さんが同じ日を繰り返すことになるとしたら、どんなことがしたいですか。
例えば今日だったら、天気予報を見ずに家を出てしまい、日傘では対応できないほどの大雨に振られましたので、まず天気予報をチェックします(笑)。そして、大きめの傘を持ってお家を出ようと思います。そんな風に、反省を生かしてより良い日にしようと努める気がします。それから、おいしいものをたくさん食べます! カロリーを気にせずにすみますから。
-これまでの人生で、もう一度やり直したいと思う出来事はありましたか。
幼い頃、山奥に暮らしていた時期があったのですが、外で遊ぶのが大好きで妹と一緒に野山を駆け回っていたんですよ。ある日、道なき道をずんずんと進んで探検していたら、後を付いてきた妹が転んで、おでこに大きなたんこぶを作ってしまいました。まるで漫画に出てくるようなたんこぶで。驚きましたし、姉として妹にそこまでのたんこぶをこしらえさせてしまったという後悔がずっとあって。妹は覚えていないと思いますが、もし、できるならその日をやり直して、もっと安全な道を進むか、妹の手を引いてその道を歩きたいと思います。
-改めて、公演への意気込みを聞かせてください。
この作品に巡り合い、こうして新たな挑戦ができることに感謝しています。お客さまに楽しんでいただける作品をお届けできるよう稽古に励みますので、劇場にエネルギーチャージしに来ていただけたらうれしいです!
(取材・文・写真/嶋田真己)
ミュージカル「グラウンドホッグ・デー」は、11月11日~22日に都内・東京国際フォーラム ホールC、11月27日~12月1日に大阪・新歌舞伎座、12月5日~8日に愛知・御園座で上演。