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【週末映画コラム】いじめや差別、それに対する無償の愛の普遍性を描いた『ホワイトバード はじまりのワンダー』/人間の体内の細胞たちを擬人化した『はたらく細胞』

エンタメOVO 2024年12月13日 8時0分

『ホワイトバード はじまりのワンダー』(12月6日公開)

 現代、自らのいじめによって転校し、居場所を失ったジュリアン(ブライス・ガイザー)のもとを、パリから祖母のサラ(ヘレン・ミレン)が訪れる。孫の行く末を心配するサラは、彼に自身の少女時代について語り始める。

 1942年、ナチス占領下のフランス。ユダヤ人であるサラ(アリソン・グレイザー)は、学校にやって来たナチスに連行されそうになったところを同じクラスのいじめられっ子の少年ジュリアン(オーランド・シュワート)に助けられ、彼の家の納屋にかくまわれる。

 いじめられていたジュリアンに全く関心を払わなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命懸けで守ってくれた。サラとジュリアンが絆を深めていく中、終戦が近いというニュースが流れるが…。

 『ワンダー 君は太陽』(17)の原作者R・J・パラシオが同作のアナザーストーリーとして執筆した小説『ホワイトバード』を、『オットーという男』(22)などのマーク・フォースター監督が映画化した。

 『ワンダー 君は太陽』は、遺伝子の疾患で、人とは異なる顔で生まれたオギー(ジェイコブ・トレンブレイ)が、初めて通い始めた学校でいじめや裏切りにあい、くじけそうになりながらも、家族に支えられて困難に立ち向かっていく姿を描いていた。
本作はその後日談的な作品で、オギーをいじめて転校したジュリアンもまた心に大きな傷を負っている様子が描かれる。

 パラシオは、前作のジュリアンに対する世間の反感のすごさに驚き、「いじめた側の救済まで描かなければ、『ワンダー』の真の世界観は完結しない」としてこの原作を書いたというが、そこに祖母の昔語りとしてナチスによるユダヤ人の受難を持ってきたところがユニークだ。
一見、遠い時代の話で今とは無関係にも思えるが、いじめや差別、それに対する無償の愛といったものは昔も今も変わらない、普遍的な問題だと感じることができるからだ。

 そして、ジュリアンが祖母の過去と自分の名前の由来を知って変わっていく希望を描いたことに加えて、ガイザーが前作に続けてジュリアン演じた点でも、『ワンダー 君は太陽』との連続性を見ることができる。二つの作品はちゃんとつながっていたのだ。

 そのほか、チャップリンの『モダン・タイスムス』の引用、42年当時のサラとジュリアンの空想場面での光と影の使い方など、映像的にも心に残るものがあった。

『はたらく細胞』(12月13日公開)


 高校生の漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と2人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しく働いているが、不規則、不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。

 人間の体内の細胞たちを擬人化した設定が話題を集め、テレビアニメ化もされた同名漫画を実写映画化。永野芽郁が赤血球役、佐藤健が白血球役を演じた。監督は「翔んで埼玉」シリーズの武内英樹で、今回もぶっ飛んでいる。

 ただのコメディーではなく、父と娘の絆や細胞同士のドラマもあり、派手なアクションに加えて、病気やけがや体内の仕組みについても楽しく学べる。

 永野、佐藤のほか、山本耕史、仲里依紗、松本若菜、染谷将太らが、“真面目に”細胞を演じているのが見どころ。だからこそコメディーとして成立している。

 彼らの活動を見ていると切なくなり、自分の体の中でもこうしたことが起こっているのかと想像すると、もっと体を大事にしよう、細胞たちに感謝しようと思えてくるから不思議だ。
(田中雄二)

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