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岡本圭人がギリシャ悲劇の最高峰に挑む思い「自分がクレオンとして前回とは違う旅路へ導くことができたら」【インタビュー】

エンタメOVO 2025年1月23日 8時0分

 2018年のアメリカ演劇学校への留学後、近年は舞台でめざましい活躍を見せており、2024年に第五十九回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した岡本圭人。その岡本が、2025年2月21日から上演する舞台「オイディプス王」に出演する。古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人ソポクレスが紀元前427年ごろに執筆した本作は、ギリシャ悲劇の最高峰と呼ばれ、人生の不条理を魅力的にドラマティックに描いた大作で、2023年に引き続き演出・石丸さち子、主演・三浦涼介での再演となる。今回、オイディプス王の妻の弟クレオンを演じる岡本に、本作に挑む思いや本作の魅力、演じる役への思いなどを聞いた。

-オフィシャルのコメントで「演劇の起源であるギリシャ悲劇に出演することは、かねてから目標の一つでした」と語られていましたが、本作への出演が決まったときはどう思いましたか。

 アメリカの演劇学校で学んでいるときに、演劇の起源はせりふが残っているものだとギリシャ悲劇だと教わっていましたし、古典は昔から好きだったので、ギリシャ悲劇には絶対に挑戦したいと思っていました。そうしたら、まさか「オイディプス王」に出演することになって、思いもしなかったことなので驚きました。ギリシャ悲劇の中でも最高峰といわれている作品に挑戦できるのはすごく光栄ですし、楽しみです。

-クレオン役と聞いてどんな気持ちでしたか。

 まだ主人公のオイディプス役は自分には早いんだなと思いました(笑)。オイディプスという役自体にすごく憧れはあるんですけど、初めてのギリシャ悲劇への出演ですし、学校でオイディプスのせりふやモノローグなども習っていたことから、どれだけ大変な役かというのは分かっているので、自分がクレオンとして三浦さんが演じるオイディプスを少しでも支えて、前回とは違った旅路へ導くことができたらなと今は思っています。

-クレオンという人物をどう捉えていますか。

 葛藤がすごく多い人物だと思いました。神からの信託をそのまま伝えるのではなくて、伝えることで自分のものや、オイディプスから言われているときに感じていること、王とは立場が違うので、そこに対して言いたいけど言えないなど、せりふの裏に隠れているその葛藤や思い、翻訳の河合祥一郎さんの言葉の裏に書かれているようなものが、他の役柄よりもすごく多いと思っています。

-そんなクレオンをどのように稽古で作り上げようと考えていますか。

 せりふの裏を考えすぎてしまうと、演出を受けられなくなってしまうかもしれないと考えています。最初からクレオンは王になりたいと思っていたらそういう演技しかできないし、親友として本当に王を支えようとしていると言われたら、そうとも読めるという。僕は古典の方が現代劇よりもシンプルだと思っていて、演出家の解釈ですごく変わるんです。だからこそ、いろんな可能性が秘められていると思います。前回、新木(宏典)さんがクレオンを演じましたが、演出の石丸さんが今回のクレオンをどういう人物だと考えているのか、お聞きするのがすごく楽しみです。

-オイディプスを演じる三浦さんをどういう役者だと感じていますか。

 華があり、声もすごくいいですし、あと、ものすごい強さの中にはかなさも秘めていて、吸い込まれるような魅力があります。見れば見るほど三浦さんの魅力に吸い込まれるような、そういう力を持っている役者さんです。リーディングシアター「GOTT 神」で共演したときは、隣に座っていらっしゃって、会話するところもなかったので、顔を見てないんです(笑)。だから、今回の「オイディプス王」でやっと対峙(たいじ)して、目を見てせりふを言えるのが楽しみです。

-石丸さんが作る「オイディプス王」の魅力は?

 クラシックに演出されているなと感じました。最近、海外ではギリシャ悲劇やシェークスピアのような古典を現代的な設定にしていることが多いんです。「オイディプス王」だと、最近だったらロバート・アイク演出で、マーク・ストロングが出演している作品も面白いですが、ギリシャの神々の言葉などをなくして、スーツを着ているんです。そうした現代的な設定にしている作品がある中で、原点に戻りながら、その当時の人たちが着ている衣装や、その当時の人々が考えていること、思いの強さといったものを現代的にアレンジしないでしっかりと届けていると感じました。

-「ギリシャ悲劇に出演するのが目標の一つ」とコメントしていた岡本さんにとって、まさにうってつけの作品ですね。

 そうですね。古代ギリシャを感じさせる衣装やセットもすごくかっこいいですし、何よりもギリシャ悲劇をこのパルテノン多摩という劇場で上演できるというのはなかなかないことですから。自分のプロフィールに載せるのが楽しみです。「『オイディプス王』(パルテノン多摩 大ホール)」って(笑)。それに、この劇場の力もすごいんです。「GOTT 神」の稽古で来たときに、本当に感動してしまったほどです。

-演出の石丸さんの印象は?

 本当に親身になってくださる方でもあるし、目指している演出のレベルがすごく高く、役者の能力を引き出す力がものすごくある方です。「GOTT 神」の稽古が終わった後、もっと稽古がしたいとお願いしたら、毎回3時間くらい1対1の稽古をしてくださったんです。それで、石丸さんの中で僕がこういう俳優なんだと分かって、自分の中でも石丸さんがこういう演出家の方なんだとなんとなく分かったので、「GOTT 神」でご一緒できてよかったです。

-2024年の芸能活動の振り返りと、2025年の目標を教えてください。

 2024年は舞台を6本も出演させていただき、7月から9月はワークショップに通ったり、富山県利賀村に劇団SCOTを見に行ったりもしました。出演させていただいた舞台はジャンルが全て違っていたので、それもすごく勉強になりました。でも、もっといろんなことに挑戦できるなとも思いました。

 11月の「若村麻由美の劇世界『あこがれいづる』源氏物語より」は、ほとんど一人芝居だったんですけど、それもすごく楽しくて、新しい世界が見えた感じがしました。自分は人の良さを出すのが好きなんです。演劇をやっていても、自分がこう演じたいからというより、相手の良さを引き出そうとして、向こうもそれを返してくれたら、それが相乗効果でより良くなる。そういうことをずっと考えていて、だから人とお芝居をするのがすごく楽しいんです。一人芝居では、せりふを忘れる夢をよく見るぐらい緊張しましたけど(笑)、無事に乗り切れたこともあって、一人芝居や1人で何かをするというのを2025年にやっていきたいなと考えています。

-最後に公演を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。

 ものすごく個人的なことですが、舞台で涙を流すことが多くて…今まで悲劇しかやったことないなと思い返しているんです(笑)。その中で、1番の悲劇といわれているギリシャ悲劇に挑戦できることは、楽しみなことでもあります。紀元前に生まれた物語をギリシャではなくて日本で上演すること自体も古典好きからしたら1番の挑戦でもあるので、それもすごく楽しみです。でも、ギリシャだけじゃなくて、世界中で2500年以上にわたって語り継がれている作品でもあるので、自分自身でその語り継がれている意味を探していかなきゃいけないと思っています。そして、この作品が日本のお客様に届いて、さらに語り継がれたらいいなとも思います。一生懸命に稽古を頑張りますので、ぜひ劇場にお越しください。

(取材・文・写真/櫻井宏充)

 舞台「オイディプス王」は、2025年2月21日~24日に都内・パルテノン多摩 大ホール、3月1日に大阪・SkyシアターMBSで上演。


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