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「キラリとロズの関係がどう変化していくのかが見どころです」鈴木福『野生の島のロズ』【インタビュー】

エンタメOVO 2025年2月6日 8時0分

 アメリカの作家ピーター・ブラウンによる児童文学「野生のロボット」シリーズを原作に、野生の島で起動した最新型ロボットが愛情の芽生えをきっかけに運命の冒険へと導かれていく姿を描いた、ドリームワークス・アニメーションによる長編アニメ映画『野生の島のロズ』が、2月7日(金)から全国公開される。本作の日本語吹き替え版でロズに育てられる「ガンのキラリ」の声を演じた鈴木福に話を聞いた。

-本編を見た感想は?

 すごくいいお話だと思いました。最初に思い描いていたポスターから出てくるイメージとはちょっと違いましたが、「すごくすてきな作品を見させてもらったな」というのが最初の印象です。

-どんなところがイメージと違ったのですか。

 ただハートフルなだけではなくて、ちょっとハラハラするような場面があったり、ロボット対動物たちみたいな構図が生まれたり、キラリの成長もすごくすてきな描かれ方をしていると思いました。

-今回のアフレコで大変だったことはありましたか。

 キラリはロボットのロズに育てられたということで、ちょっと難しい言葉というか、普通はしゃべらないような言葉をしゃべったりします。あとは「ガチャ」みたいなちょっとした動作音も言葉で言っているので、それを表現するのが難しかったです。

-吹き替えは普段の演技とは違いますか。

 やっぱり顔が出ないので、その分声色で表情豊かに、少しオーバーな感じで演じなければというのはありました。でも変にやり過ぎず、しっかりと張りのある声を出していればそこは大丈夫なのかなと。最初は幼い声なのでそこも探りながらやりました。

-キラリと自分に共通点はありましたか。

 キラリは、とても前向きでポジティブなキャラなので、そこが割と自分と似ているかなと思います。それから、嫌なことがあって葛藤はしながらも、その次に向かう時には、えいって進んじゃったら進めるみたいなところは結構近いかなと思います。

-キラリから学んだことはありましたか。

 彼の強みは、ポジティブで強い精神力を持っているところだと思います。さらに、人と違うことを受け入れる心の広さや、ひたむきに頑張れる力も持っている。もし彼が人間だったら、本当に尊敬できるし、何てパワーのある人なんだろうと思います。僕らは普段、鳥たちが泳いでいるところや飛ぶところを何げなく見ていますが、そこに行くまでの過程があって、泳げない鳥や飛べない鳥もいるんだろうなと思います。僕らは目にしたものでしか判断していないし、その奥にある鳥たちの姿に思いをはせる機会もなかったので、すごく面白いと思いました。

-今回、吹き替えをする際に気を付けたことや心掛けたことはありましたか。

年齢感というか、フレッシュさみたいなところは、多分自然と出てくるものがあったと思いますが、それにプラスして、キラリが持っているかわいらしさが出てほしいと思いながらやっていました。ちょっとした言葉のニュアンスや声の表情が見る人に伝わってくれればいいなと思います。

-映像などで印象に残っていることは?

 本当にきれいな映像で、すごくすてきなんですけど、温もりを感じるというか、温かみのある絵だなという印象です。温もりを感じるのは、やっぱり人の手が入っているからだと思いました。ロズもロボットなのに、かわいらしくてゴテゴテしていない感じです。でもちょっとした瞬間に、どう動くか分からない予測不能なところが怖く見えることもありました。ロズが特別な個体であることが分かるシーンがあって、それを見た時に、かわいらしくてすごくいいロボットに見えるけど、同時に脅威の部分も持ち合わせているというロボットの本質が表現されているところもあります。

-自分の声についてどう思いますか。

普段はこんなしゃべり方ですが、テンションが上がればもっと声が高くなります。キラリの声は、子どもの頃はかわいらしい感じで、ちょっとずつ大人になっていって、渡りを経て成長していくという変化を出すことが大切でした。心の中での表現ではありますが、何か感じてもらえたらうれしいです。

-声優の仕事は普段の演技にも生かせますか。

 以前、舞台とアニメーションの声当てを同じ時期にしていたことがあって、その時に声を出すことと、声を形に残す声みたいなことをすごく学びました。そのすぐ後に「仮面ライダー」をやらせてもらったのですが、その二つの経験がなかったら、仮面ライダーをやった時に、役の形がずれてしまったのではないかと思います。声優をやる時は、はきはきとしゃべったり、通る声、芯のある声を心掛けます。それができるようになった時に、普通のお芝居でも生かせるというのはすごく大事なことだと思いました。

-キラリのほかに注目しているキャラクターはいますか。

ピンクシッポの子どもたちがすごくかわいいのと、クビナガもすごくすてきなキャラクターでかわいくてかっこいい。チャッカリも好きです。キラリでなければチャッカリの声をやってみたかったです。

-この映画の見どころは。

キラリで言えば、渡りに向けてトレーニングをするところはすごいです。トレーニングの一つ一つが連なって、一つのシーンになるところはすごくいいと思いました。クライマックスのシーンはハラハラドキドキしながら、胸がぎゅぎゅんとなるというか、苦しくなりながらも感動します。そこまでの作品の雰囲気とはガラッと変わります。
あとは、キラリとロズの関係がどう変化していくのかというところです。大人のガンとして成長していかなければならない葛藤や、本当の母親ではないロズとの関係性がどう広がっていくのかを見てほしいです。自分がキラリをやっているので親子としての絆や、彼の成長みたいなところがすごく刺さりました。中盤でロズから親離れをしますが、そこでは終わらないところがこの作品のすてきなところだと思います。多分そこで終わることもできるし、ハートフルな作品として終えることもできる。でもそこからもう一展開あるところがすごくいいと思います。

-最後に、読者や観客に向けて一言お願いします。

この映画は、見る年代によって受け取るメッセージや印象も変わってくるとは思いますが、親子や友達、大切な人と一緒に見るのもいいし、自分はほかの人とは違うと感じている人が1人で見ても勇気をもらえると思います。ちょっとでも気になったら、ぜひ映画館で見てほしいです。心温まる作品ですし、年代やタイミングによって受け取るものがたくさんあると思います。誰に感情移入するかによっても変わってくると思います。その瞬間を楽しんでもらって、この作品のエネルギーを感じて、何かを受け取って持って帰っていただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)


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