北海道道内の水産物のうち、ホタテなどに続き、生産量が3番目に多いコンブ。
食材やだしなどとして食卓に欠かせない存在で、国内で生産されるコンブのおよそ9割は北海道産です。しかしそんな北海道産コンブがいま、危機に直面しています。
えりも近笛地区の漁師は「採るコンブがなくなってるからね。これでご飯食べてるんだもん、俺たちは。1本でも取ってお金にして食べていかなきゃいけないから・・・」と深刻な表情で話します。
えりも漁業協同組合の南條覚副組合長も「ことしはみんなもう諦めてる。何日間か採れたらやめようって言ってるけどその何日間すら取れない」と事態の深刻さを語ります。
かつて道内全体で年間2万トンから3万トンが採れていたコンブですが、水揚げが減り続けています。
そして今年、道内の生産量の4割を占める釧路・根室では釧路町や浜中町などの漁協が成長前の柔らかいコンブを採るサオマエコンブ漁を初めてとりやめました。
ミツイシコンブで知られる日高でも複数の漁場で、6月から始めた漁をわずか数回で取りやめる事態が相次ぎました。いずれも資源量の減少が理由です。浦河町・井寒台地区の漁師は「採取可能な大人のコンブが生えているところが少ない。限られた場所で取るしかない。例年なら秋の10月くらいまでは採れるんですよ」と異変を感じています。道内全体の今年の生産量は統計開始以来初めて1万トンを割る見通しです。
生産量の減少は、コンブ製品を扱う業者にも影響を与えています。流通量が減り、市場のコンブ取引価格は前の年と比べて2~3割値上がりしています。加工や販売を手がける新ひだか町の「みついし昆布」は秋以降、乾燥コンブなどの値上げを考えています。みついし昆布の磯貝正之社長は「不漁の影響はかなり大きい。原材料がなくてコストも上がる。商品に転嫁しないと商売が厳しい。とはいえ、あまり上げて商品離れされても」と困惑気味に話します。
専門家がコンブの水揚げ量減少の主な原因として挙げるのが、海水温の上昇です。コンブは冷たい海水を好み、環境の変化に敏感とされます。成長に適した海水温は、10度から11度が理想とされていますが、近年は20度前後で推移し、去年の夏はさらに25度前後まで達しました。
道総研中央水産試験場の清水洋平部長は「高水温にコンブが耐えられず一部が枯れた。枯れなくても高温で弱ってシケや強い流れの影響で流された。千島列島の方から来る親潮の冷たい水の勢いが近年弱まっている。それも要因で高水温が続いているのではないか」と分析します。
こうした状況を受け、道は先月、コンブの生産安定に向けた検討会議を発足させました。日高や利尻など各産地の現状を把握した上で、天然コンブの資源量の確保や養殖の可能性を探る方針です。
地域では、独自の取り組みも続けています。釧路東部漁協では来年以降の資源量を確保するため、漁の時間を制限し、採るコンブの量を自主的に減らしました。
道東や日高の漁協では、秋以降、コンブの生育を妨げる海藻の駆除などに力を入れる方針です。
コンブ漁は重労働のため、かつて1万4千人いた漁師はおよそ3分の1にまで減りました。漁業関係者からは「資源が回復しないと担い手不足に拍車がかかる」との声も絶えません。
海外でも日本食人気が高まる中、減り続けるコンブの資源を守り、どう回復を図るのか。抜本的な対策が求められています。